第15話 「いつ見ても美しいですね・・・」
その花々は、一本の道を隔てて互いの美しさを競うように咲いていた。
右に咲く純白の蘭は、清純で気品あふれる花弁を惜しみなく見せてくれている。
一輪一輪が清く輝き、夕陽に染められるのを反発するかのように、その純白を強調していた。
左に咲く承和色の菊は、高潔で上品な佇まいで、その花弁を見せつけるように咲いている。
夕陽に照らされ、より濃く輝く承和色が、その気高さを更に際立たせていた。
「いつ見ても美しいですね・・・」
桜が足を止め、ぽつりと呟く。目を細め、左右に咲き乱れる蘭と菊をどこか羨ましそうな顔で見つめている。
この世界では自然的に花が咲く事はない。唯一の方法は、華乙女達が使う千紫万紅によってのみ、咲かせる事が出来る。
しかし、どれほど強大な力を持っていても、咲かせられるのは自身の花だけで、他者の花を咲かせる事は出来ない。
4人の中でヒガンバナのみ、千紫万紅を使えるが、桜、ひまわり、ビオラの3人は千紫万紅が使えない為、自身の花を咲かす事が出来ない状況である。
桜の表情は、自身も花を咲かせたいという気持ちの表れだった。
「でも、これだけ見事に咲いてるって事は、蘭さんと菊さん・・・相当暴れたんだね。ちょっと昆虫騎士団のヒト可哀想って思っちゃうな」
「むしろ、あんな変態集団には丁度いいんじゃない?どうせ私達を襲った時みたいに、体液啜らせろ〜、とか言ってあの2人に突っかかって行ったんでしょ。自業自得よ」
「確かに蘭さんと菊さんは、ビオラちゃんみたいにちょっと怒りっぽいところあるからなー」
「ちょっと、ひまわり!私とあの2人を一緒にしないで!流石にあそこまで酷くはないわよ!」
桜が感傷的になっているとは露知らず、ひまわりとビオラの2人が話し始める。
そのやり取りを見て元気をもらったのか、桜はふふっと笑うと正面を見据え、再び歩き始めた。
「さあ、これで不安も無くなりましたし、日が暮れる前にベゴニア様の元へ帰りましょう!」
「「おおー!」」
ひまわりとビオラが手を挙げて元気よく返事をする。
桜が先ほど落ち込んでいることに気づいていたヒガンバナは、明るくなった表情を見て安堵し、自身も同じように笑った。
蘭と菊を隔てるように続く道を歩き進める。その花々は、まるで4人が道を間違えないよう案内するかの如く、旧上野駅の結界前まで続いていた。




