第9話 「嬢ちゃん達には無理だな・・・」
「ド・ヴィゼーニャ」
掛け声と共にビオラがアサルトライフルの引き金を引く。
放たれた銃弾は、確かにクロカタゾウムシの胸に当たっていたが、身体を貫くことはなく、別の方向へ弾かれていた。
「なんっ・・・で?」
「おいおい、いきなり撃つなんて頭のネジがぶっ飛んでるな!オレじゃなきゃやられてたぞ」
困惑した顔のビオラとは対照的に余裕ある表情を見せるクロカタゾウムシ。
胸の辺りを拳でコンコンと叩くと種明かしをするかの様に口を開いた。
「鍛え抜かれた全身の前には銃弾など無意味!・・・・・・と言いたい所だが、これはオレの身体の性質のおかげだな。オレの皮膚は、昆虫騎士団随一の硬さを誇っている。この皮膚・・・いや、もはや装甲だな!この装甲は、そんなチンケな銃弾なんか通さねえよ・・・!」
「なら、違う場所を狙うだけよ!ドゥヴァ、イェデン!」
パンッ!パンッ!
2発の銃弾がクロカタゾウムシの両目に当たる。
しかし、これもただ当たっただけで効果はなく、いとも簡単に弾かれてしまった。
「銃の腕はすげぇな嬢ちゃん!ここまで正確に両目を撃たれたのは初めてだ!ただ、オレの伝え方が悪かったみたいだな。皮膚だけじゃなく、オレの全身あらゆる所が同じ硬さを持っている!だから、どこ狙っても変わらねえよ」
「くっ!それなら次は・・・!」
「冷静になりなさい、ビオラさん!」
なおも銃口を向け次の狙撃に構えるビオラを、桜が刀を銃口の前に出して制止する。
「今のまま撃ち続けてもあまり効果は期待できません。焦る気持ちも分かりますが、今は耐えてください。少し、あの方とお話したいので私と変わっていただけませんか?」
「さ、桜お姉ちゃん・・・」
優しく微笑みかける桜の顔を見て、少し冷静になったビオラが小さく頷く。
「良い子です。さて・・・・・・」
小さく息を吐き、刀を鞘に戻すとクロカタゾウムシの方を向き話し始める。
「クロカタさん。貴方の目的は分かりました。私達は貴方の狙っているベゴニア様より命を受け、貴方とその部下達を追い払うために此処へ来ました!私も無駄な争いは好みません。貴方達が大人しく帰るのであれば、見逃しましょう。それが出来ないなら、お互い闘うしかありませんね!」
クロカタゾウムシを真っ直ぐに見つめ、堂々と啖呵を切る桜。その表情を見て何が可笑しいのか、フッと鼻で笑い口を開くクロカタゾウムシ。
「悪いがそれは無理な相談だな!オレだけならまだしも、オレの部下は今ここにはいねぇからな!既に全員皇居に向かわせた所だ。1000はくだらねぇ数を連れて来たから、もう手遅れかもな!」
「そっ、そんなに!」
1000という数に驚き、ひまわりが声を上げる。
桜はクロカタゾウムシの言葉を最後まで聞くと、目を閉じ息を深く吸い込み、長く吐き出す。そして刀の柄を軽く握り、目を開き鋭い目線をクロカタゾウムシに向ける。
「なら悠長にお喋りしている暇はありませんね。貴方を倒し、すぐに部下も止めに行かせていただきます!」
「嬢ちゃん達には無理だな・・・」
クロカタゾウムシがそう呟くと同時に、桜は切りかかっていった。




