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003

 ログイン(異世界へ転移)し、昨日の仕込みを回収する。

 まず、持ち込んだ時計にズレがなく、異世界と地球が同じ時間だけ推移しているとの確証を得た。

 そして、召喚獣はどうやらMPさえ確保できていれば、術士である俺がログアウト中も異世界に召喚されたままのようだと分かった。

 おかげで、袋いっぱいの魔石を手にすることができ、334ポイントも入手できた。

 俺はもう課金できないようだが(上限まで課金した)、十万円で1000ポイント入手できていたのだから、今回は日給およそ3万円というわけで、これは運営、ぼったくりである。

 しかし初期投資は必要だったので、まあ無駄金払ったわけではあるまい、ちくせう。


 今日はどうしようか、田村さんとの約束まで、しばらく時間がある。

 まずはピヨ彦を探索に回しつつ、ダイヤウルフズを拡充だ、3*3の合計9匹へと増やし、魔石回収要因としてゴブリンも追加で2体召喚しておく。

 犬四郎、ゴブ次郎以下順ぐりに名付けた。そろそろ面倒臭くなるやつだからね。

 これで、狩りをさせれば、上手くすれば一日でおよそ3千ポイント(30万円相当)ほども稼げるのではないだろうか、ウハウハである。

 狩猟隊を見送る。


 さて、こうなってくると、もはやこの森での狩りは安定、喫緊の課題は本体であるところの俺の弱さだろうか、今のところ安全な場所に身を置くことで対処している。

 しかしできれば明確な弱点は埋め、性能を丸くしておきたい。


 近接系スキル、取っちゃおうか。

 ビルドに悩まされる。

 考えた末、中途半端な近接戦闘能力はいらないとして、逃げ性能か、あるいは防御性能を高めるのが良いのではないかとなった。


 今でもグリフォン(タカジョー)に跨れば結構な逃げ性能を誇ると思うのだが、タカジョーでは音速の壁を突破できないようだし、なんというか性能が輸送ヘリめいているのだ、となると、僚機たる召喚獣を随伴させるのもありかもしれない。

 その場合、一体あと何レベルスキルレベルを上げれば良いのだろうか、よさそうな召喚獣が見つかるといいのだが。


 まあ、召喚に特化させるほうがいいだろう、そうと決まれば召喚魔法スキル上げだ、スキルスロットを拡張した後、召喚魔法スキルレベル6の大台に乗った。

 新しい召喚獣を確認し、これはというものを見つける。

 リビングソードの、ケンザキ君とヤイバ君の二振りだ。


 彼らは、持ち主へと飛翔する弾体を自動迎撃してくれるし、また自身が追尾ミサイルのようになって攻撃をすることもできる、装備なのかモンスターなのか、まあ召喚獣の一種であるならモンスターの範疇だろう存在だ。

 彼らの加入により、これまではゴブリンアーチャーの一射すら脅威であったから、タカジョーをかなり上空まで上げていたのが、恐るるに足らずとなった。

 凄腕の剣士が二人、パーティに加わってくれたようなものだ。

 なんとも、頼もしい。


 しかし、消耗するMPの関係上、二振りを揃えて召喚しておくのは無理があった。

 こうなるとMP自動回復スキルのレベルを上げたくなるが、新しいスキルスロットを解放するにはポイントが、魔石が足りない。

 同時召喚はここぞという一撃を浴びせられるくらいだろう。


 図らずも望外の近接戦闘能力を得るのだったが、ポイントをほぼほぼ使い果たしてしまい、あとは魔石の収量頼りとなってしまった。

 思うに、召喚魔法は、軍団を形成できるので、魔石集めの効率は良いはず。

 ましてや、索敵能力に長けたダイヤウルフ編隊だ、すぐに潤沢な魔石が手に入ることだろう。

 果報は寝て待て、あとは釣果を楽しみに待つのみだ。


 ああ、そういえば、スキル取得にひと段落つける際、マジックバッグを購入しておいた。

 これはいわゆるアイテムボックスというやつで、バッグの見かけによらず大容量の収納を可能にするというものだ。

 容量は小さな車庫一つ分くらいで、内容物の重さを無視する機能もついている。

 結構な消費ポイントだったが、新スキルを取得するのと天秤にかけて、これを選んだ。

 根無草の冒険生活を送るにしたって尚更、これは無いと不便だからね。

 残念ながら、地球に持って帰った途端、何の変哲もないかばんにかわっちゃったけどね(異世界に戻ると、機能が復活したし、内容物も無事だった)。


 そうそう、異世界でどんな力を身につけても、現実にはその魔法のような力を持ち込むことはできないんだよね。

 可能性があるのはアップした基礎ステータスだけかな、現にちょっと筋力が上がったと感じてるし。

 まあこれも、頭打ちがあるのかもしれないけどね、それにしたってすごいことか。

 俺は異世界で活動したいから、ステータスに極振りしなかったけどね。


 いくらか検証したいことを片付けると、手持ち無沙汰になったので、地球から本を持ってきて読むことにした。

 異世界は、この村の立地もあるんだろうけど、空気が澄んでて美味しいから、なんていうか、キャンプに来てる気分だ。

 魔石が稼がれるのを待ちながら、サンドイッチをほうばったり、コーヒーを飲んだり、本を読んだりして。


 この村には他に誰もいないから、少し不気味で、寂しい感じもするんだけどね。

 切り株に腰掛けてのんびりしているのが、なんだかとっても心地いい。


 そろそろ、田村さんとの約束の時間かなというころ、


「おーい、すみませーん」


 森の方から、声をかけてくる、男性が3人。

 こっちへ向かって、駆けてくる。

 防御をケンザキに任せっきりにして、すっかり読書に集中していたものだから、びっくりした。


 彼らは、その装備格好から、剣士が二人と、おそらく魔術士がひとりといった構成だろうと見受けられる。

 ああ、あの森の中をサバイバルして、乗り越えてきたのかと。

 見たところ、敵意などは感じない。


「ええと、日本人かな? 見たところ、年は近いみたいだね?」


 3人組の一人、剣士然とした男のうち、茶髪の男が話しかけてきた。

 彼は若林というらしい。

 3人とも、運送業をやっており、同僚なのだとか。

 自己紹介を済ませると、お互いの近況を話し合うことと相成り、異世界談義に花が咲いた。


「消えた村人は気掛かりだけどよ、でも俺たちはそうじゃないだろ、モンスターを狩って、レベルを上げてさ、そうやって強くなっていくのが楽しくてたまらねぇよ」


 角刈りの、遠藤という男(もう片割れの剣士だ)は、そう嘯いた。


「あーまあ、確かにそれも楽しいな。魔石を稼げると、もっと稼ぎたくなってたまらなくなる」

「だよな、なあ、俺たちと組まないか、きっと楽しいぞ」

「たまにならな。俺はこーしてゆっくりのほほんと過ごすのも好きなのよ」


 異世界ネタという共通の話題があったからか、彼らがそうさせたのか、俺たちは秒で打ち解けた。


「今日がその、たまに、でいいんじゃないか」


 魔術師然とした男、松原も誘ってくる。


「うん、せっかくだしさ、今日これから会う、田村さんだっけ、彼女も加えてさ、5人でレベリングパーティしようよ」


 随分と押してくるが、俺もまんざらではないので、少し嬉しく思う。

 これも冒険だろう、悪くない。


 そのあと、田村さんが合流して、みんなで森へ入った。

 遠藤と若林の、気配察知スキルを刹那連打するというテクを駆使したという身のこなしで、その超人的な空間把握能力でもって、ゴブリンアーチャーの放った矢を叩き切ったり、乱戦に対応する様は、これが近接職の戦いかという感じで参考になったし、大角鹿の突進を受け止めた筋力と耐久力にも驚かされた。

 いざというとき、田村さんのヒールやバリアーを頼れたし、疲労回復効果もあるから大助かりだった。

 松原の炎魔術も見事で、ちょっと火力オーバー気味だったけど、豪快だった。

 俺も駆け抜けざまケンザキで滅多斬りにしてやり、立派に前衛を務めれてしまった。

 戦闘は危なげなくこなされていった。


 狩りの最後に、大猪を狩ってこれを腑抜きしてマジックバッグに収めておいたのを村に戻ってからバーベキューにして、酒を飲み、笑い合った。

 大自然の中で味わったそれは、大変美味だった。

 途中、ダイヤウルフズ&ゴブリンズも帰ってきてご相伴に預かっており、タカジョーが2体目の大猪をほとんどやっつけたりしてた。


 宴は終わり、それぞれが自室へと戻っていく。

 こういう休日も、まあ、たまには、悪くない。

 ああ、もっと人が増えないかな、この村にみんな集まって、なにか各々のやりたいことがやれるといい、異世界を楽しめるといいなと思う。

 そんなふうに、この週末は過ぎていった。

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