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001

 状況、異世界へ転移した、以上、説明終了。


 どことも知れない森の中、第一歩を踏み出す。

 まずは安全の確保が最優先だ。

 手頃な高さの木を見つけ、太い枝にロープを投げくぐらせ、結ぶと、それをとっかかりに登攀する。

 結構な筋力が要求されるが、筋トレといえば健康目的の自重トレーニング止まりな俺でも、ステータスを操作して事前に筋力値を多少上げておいたのでギリギリ登れる。

 登り切って、ロープを巻き上げれば、ひとまず安全だろう。


 安全を確保したら、スキル振りだ。

 スキルとは超常の力をもたらすものなのであり、そこらへんのサラリーマンを一瞬にして一流の剣士や魔術士にしてくれる、大変素晴らしいものだ。

 スマホを取り出し、アイコンをタップすると、ショップ画面に遷移、機能を呼び出す。

 この、ショップという仕組みを通して、スキルや武器などを購入できるわけだ。

 これからの異世界生活を捗らせるため、慎重にビルドする。

 異世界へ転移される前にもショップを確認しており、すでに目ぼしいスキルには当たりをつけてある。

 上限まで課金して得た、残高10万ポイントの表示を意識しつつ、お買い物だ。


 スキル振りの際にまず意識すべきなのは、スキルスロットの空きには限りがあるということだ。

 初期で3スロットあり、課金すれば追加スロットを解放できるのだが、そのお値段は購入するたびバカみたいに高くなっていく。

 なので、より少ないスキル数で最大限に強くなるよう、取得するスキルは尊重に選ばなければならない。


 趣味と実益を兼ねて、俺こと日和見日向が選んだスキルはといえば、召喚魔法だ。

 自己強化にスキルスロットを使うのではなく、強い召喚獣に頼ろうとの考え。

 俺なりに、少ないスロット数でやりくりしようとしたわけなのだった。


「召喚魔法スキル1を取得する、っと」


 スキル取得とともに、召喚魔法に紐付いた知識が流れ込んできて、詳細を理解した。

 そうして気付いたのだが、このスキル、召喚魔法には無限の可能性がある。

 少ないスキルスロットで多くのリターンが見込める仕様があるのだ。

 それは、契約できる召喚獣の数に限りがない、というもの。

 様々な召喚獣と契約できれば、それだけ召喚獣たちの多様なスキルを扱えるということになるので、スキルスロット上限などあってないようなものだ。

 これは思わぬ収穫だった、幸先がいい。


 ショップのラインナップを見るに、召喚魔法1で契約できるようになったモンスターはといえば、ゴブリン、馬、虫といったやつらで、まあ、そうか、というもの。

 後々召使いにすることも考え、ここはゴブリンを1匹契約してみることにする。


 念じて、ゴブリンを召喚する。

 いくらかのMPと引き換えに、現れたのは、子供くらいの背丈の、痩せほつれた、緑色の肌の、見窄らしい布切れを纏い、棍棒を装備した、定番モンスター。

 彼はいきなり木の上に呼び出されたので、不確かな足場に平衡感覚を乱され、足を滑らせ、あえなく落下。

 木の下のほうで、たんこぶができていないかしきりに確認しているさまが、どことなく可笑しい。

 怪我はないかと尋ねてみれば、問題なしと言わんばかりに棍棒を振り回してみせた。


「ふむ、MP消費は召喚時に10と、あとこれは維持コストかな、繋がりとマナの流れを感じるけど、自然回復MP量の方が圧倒的に多い、なるほどな」


 初めての召喚に成功、召喚の仕様を確かめていく。

 召喚獣と距離が離れるとどうなるのか、判断能力はどの程度あるのか、そして死んだらどうなるのか、気になるテスト項目を試すのにも都合が良いので、ゴブリンには周囲を偵察に行かせることにした。


「ゴブ太、今日から君はゴブ太だ。よろしい、では、偵察へ行くのだ」


 ゴブリンもといゴブ太は、棍棒を振り上げて了解を返すと、背を向け、走り去っていった。


 偵察の成果はどう得れるというのか、ゴブ太とは簡単な意思の疎通が図れるようであるものの、それは思念が伝わっているからという感じで、このままではあまり高度な内容をやり取りできない。

 貴重なスキルスロットを割いてゴブリン語の知識を得てもよいのだが、それならばもっと良い手がある。


「次のスキルは、これだな、感覚共有。対象ゴブ太、視界同調っと」


 視界がダブって見える。目を閉じると、瞼の裏に、ゴブ太の視界を映し出した。

 森の中を駆けているようだ、多少、視界が揺れている。

 しばらく、森の中を行く光景が続く。

 あっ、転んだ、何かに足を取られたのかな、ドジだなあ。

 いくらか行くと、モンスターと遭遇、ゴブリンが三匹のパーティだ。

 聴覚も同調、おそらくゴブリン語で、なにやらやりとりののち、相手ゴブリンたちの、ついてきなの手振り。

 どうやら、仲間に加えてもらえたらしい。


 ゴブ太とゴブリン一行が、ときおり腹の音を鳴らしながら進んでいく。

 道中、食べられる木の実なのかな、を見つけたようなので、味覚同調してみたところ、悪くない甘酸っぱさ。

 木の実に端数が出たので、最後は殴り合いの喧嘩になってたんだけど、ゴブ太もそれに参加してた。

 知識によれば召喚獣はMPの供給だけで生きていられるはずなのに、食い意地張るんだなあと。


 弓を持ったゴブリンが、彼らのリーダーなのかな、あるときみなに制止をかけて、弓をつがえた。

 少し忍び歩きして、その視線の先には、大きな角をした鹿の姿が見える。

 狩りの獲物というわけだ。

 しかし、その体格差たるや、矢の一本程度で仕留められるのかと思わされる。

 大丈夫かなと見守る中、戦端が開かれると、案の定、突き刺さった矢をもろともせずに鹿が突っ込んできて、ゴブリンたちは蹴散らされちゃった。

 ゴブ太もご臨終、鹿の角と蹄の餌食となり、そこで感覚同調が切れた。


 なるほど、なるほど。

 スマホを操作すると、召喚獣一覧という欄には、ゴブ太の名前と、クールタイムのカウント表示があった。

 うん、以前気になったとき、知識として知ってはいたんだ。

 一度死んだ召喚獣は、破損した霊体を修復するため、しばらく召喚できなくなる。

 あと15分程度で修復完了するらしい。


 どうしよう、代わりのゴブリンを召喚しようか、いっそゴブリン軍団でも作るか。

 いや、それよりは、召喚魔法2を試してみよう。

 さっそくショップから、ポイントを対価にスキルを購入する。

 これにより、ショップから契約できる召喚獣のリストが更新された。

 そのなかに、よさそうなモンスターがいる。

 ダイヤウルフだ。

 この森という環境で、さきのゴブリンたちや大角鹿程度なら余裕を持って屠ってくれることだろうし、なにより鼻が効くので索敵範囲が広く、またいざという時の逃げ足も早い。

 消耗MPの様子を見つつ、余裕がありそうなので、3匹ほど契約し、召喚。

 それぞれ、ポチ、タロ、シロと名付けた。


「人かモンスターか、何か見つけたら感覚同調で知らせること。それじゃ、いってこーい」

「「「ワン!」」」


 散開、颯爽と駆けていく。

 地上の偵察はこれで十分だろう。

 とすれば、次は上空からだ、今度はサイトバードという鳥モンスターを召喚する。

 ダイヤウルフズからは思念が飛んでくるのを待ち、その間サイトバードの視界を借りつつ進路を指示してあたりを探る。

 川沿いに様子を見ていけば、大型モンスターとして例えば恐竜などが生息しているかどうかがわかるだろうし、森が切れたら人の住む村や町を見つけられるかもしれない。

 本体、召喚士である俺は樹上にて、座り直すと、サイトバード改めピヨ彦へと意識を向けるのだった。

 こうして、俺の異世界サバイバルが幕を開けたのだった。

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