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大決戦

 三隻の宇宙戦艦は、無数の蟲に向けて出発した。その後ろを巨大な要撃機が飛んで行く。


 6基12門の主砲を上下に満遍なく配置し、火力を分散させたドレッドノートとは対照的に、艦の下部はラムアタックが可能な重装甲で上部は三基九門の主砲があるトウゴウは、火力の集中に重点を置いて設計されていた。


 それらが、蟲の群れに向けて突っ込んだ。要撃機が電波を放ち、蟲を誘引した。


 灰色の体をした無数の蟲が、要撃機に向けて移動をはじめ、まるで書道家の書いた払いのような一本線が戦艦内のレーダー探知機に現れる。


 カミカゼオーは、全身の隠顕式のビームガトリング砲120門を起動させ、砂嵐よりも密度の濃い弾幕を蟲の一本線に向けて放った。蟲の柱が光となって溶けていくが、それよりも素早く周囲から蟲が補給される。


 自身の砲火が蟲の濁流を止められないという理由で、カミカゼオーは主機の出力を最大にし、亜光速でその場を離脱する。


 戦艦のカメラは、赤方偏移を起こすカミカゼオーと蟲を捉え、そのまま蟲の群れの中心にいる惑星級の大きさの蟲へと加速した。


 戦艦三隻を発見した小惑星級の巨大な蟲が、周囲の戦艦級をトウゴウの直上に集める。そして、中性子の光線をトウゴウに向けて放射した。


 トウゴウはスラスターによって船体を回転させて砲を戦艦級に向け、榴弾を発射した。その反動でトウゴウは艦底が戦艦級に向き、中性子光線を受け止める。


 榴弾は戦艦級の一匹に命中し、その爆発の衝撃によって大きな運動エネルギーを持った蟲と弾丸の破片が弾幕となって周囲の蟲を貫いていった。


 小惑星級がトウゴウに体当たりするべく加速し、戦艦三隻は最大戦速で惑星級に向けて航行していく。


 戦艦トウゴウに随伴していた戦艦ドレッドノート35番艦が、小惑星級に体当たりして進路をずらし、小惑星級数匹を巻き込みながら爆散した。


 そしてもう一隻のドレッドノートが減速しながら90度回頭し、荷電粒子砲をばら撒きながらトウゴウは衝角によって惑星級内部に突入した。

 

 トウゴウから二機の人型艦載機が発進し、蟲の体液管内を駆けだした。二機は、心臓部の放つ重力に引き寄せられ、落ちるようにして心室に招かれた。


 心室の中にいる一匹の怪物。その一体だけで惑星級の体内で白血球の役割をすべて行う怪物。白い肉が集まった人型が、二機の艦載機の前に現れた。


 パンツァークリーガーの武装はほとんど通常の戦車と同じ、ヴェルーヌイヴェーチル、略してヴェヴィの武装も剣とレールガンのみ。


 パンツァークリーガーは、機体背部の主砲用の弾倉を取り外し、二機に気が付いていない白い怪物に投げつける。ヴェヴィはレールガンを弾倉に打ち込んで爆発させ、パンツァークリーガーの前に立って大盾を構えランダムに飛ぶ弾丸を受け止める。


 爆炎が周囲に広がり、赤外線探知が利かなくなった二機は中にいるであろう怪物の攻撃に備える。


 白い怪物は傷一つなく、両腕を針に変化させて二機の元へ走り出した。ヴェヴィは大盾で二本の針の刺突攻撃を受ける。


 両腕を盾に刺してしまった怪物は、それを引き抜く前に盾を横に傾けられて体勢を崩し、ヴェヴィのバックパックから剣を引き抜き、彼女を飛び越えてきたパンツァークリーガーの斬撃によって頭を割られる。ヴェヴィは盾を心室の床に突き立て、手を放した。


 パンツァークリーガーは背部のロケットを起動し、剣を心室の天井部に投げた。


 頭を割られ、内部から組織が溢れる状態でも、怪物は生きていた。


 怪物はロケットの熱に反応して両腕を引き抜き、それを背後にいる存在に突き刺そうとしたところで気が付いた。


 ヴェヴィが天井から剣を引き抜き、真上から迫ってくることに。


 頭の傷から股までを裂かれ、立つことの出来なくなった怪物はその場に倒れた。二機のマシンはすぐに心室への破壊工作をはじめた。


 惑星級の命の灯が弱くなり、それに比例して惑星級の指揮もお粗末になる。それはすぐに二つの巨大意思の指揮によって持ち直された。


 宙域に残った小惑星級二体を狙う要撃機カミカゼオーは、蟲の群れの生体弾幕によって接近を防がれ続け、小惑星級の攻撃もカミカゼオーに当たらないという双方が暖簾に腕押しの状態へと陥る。


 宙域に無数の光が飛び回り、触れたものの生命を宙に還す。それがしばらくの間続いた。


 カミカゼオーの機体には無数の被弾の跡があり、小惑星級の一体に穴が開いた頃、崩壊していく惑星級の内部から戦艦トウゴウが脱出してきた。


 トウゴウの行く手を阻もうとした小惑星級は衝角によって押され、二基六門の主砲の榴弾を受けて爆滅する。


 もう一体の小惑星級もカミカゼオーによって両断されて周囲の蟲ごと爆裂四散した。しかし、蟲の統制は乱れず、戦艦とカミカゼオーに相も変わらず突撃を続ける。

 

 近隣の星系で岩石惑星に擬態していた二体の惑星級が、その姿を現す。


 艦隊は180°回頭し、蟲たちから逃げるようにして機雷原へと加速していく。


 カミカゼオーは蟲と艦隊の間に入り、光の帯のような弾幕で蟲たちを相手取る。カミカゼオーの背部二箇所にあるハッチが開き、その一方には蟲が突っ込んだ。


 その中にいた女性は下半身が与圧服とロケットの防護殻と混ぜられて千切れ、上半身だけで宇宙遊泳をしながら、首に掛けていたペンダントのチャーム部分をちぎり、もう一つのハッチに、投げ込んだ。


 そして、無傷のハッチから脱出用のロケットが飛び出す。その乗員の手にはペンダントのチャームが握られている。


 ロケットがトウゴウに回収され、トウゴウとドレッドノートはほんの一瞬、空間の中に沈む。


 カミカゼオーの炉が暴走し、その場の生物は皆、光に呑まれる。


 ソフトボール大の1兆度の火球と同等以上のエネルギーを持ったその光は、死者と生者を一緒くたにして焼いた。


 光が収まり、二隻の戦艦が通常空間に浮上して来た時、宙域にはカミカゼオーの残骸と、共食いをする二体の半壊した惑星級のみが残っていた。


 戦艦達は機雷原を抜け、工作艦などを艦隊に加えて宇宙を去った。

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