新たなアバター
狐からのお誘いを受けた後、について触れよう、結論から言うとその日はいったん解散したのである。 理由は準備をしたいから明日、ある場所に来て欲しいといったものだった。
そういうと狐は古びた鍵を有紗に手渡した。
「これは?」
『それを使えば、シークレットルームに入れる。 入り方は、適当に扉の鍵穴にこの鍵を指してドアノブを回すだけだ』
「ふぅ~ん」
『ただ注意してほしいのは、その光景を人に見られないようにしてほしいって所だな』
「? なんで?」
『一応これ違法行為だからな、これがバレると後がめんどい』
そう言われ、その日は解散した。
翌日になり、再びアリアドネネットワーク内に入った有紗は周囲に誰もいないことを確認し、ぽっけから古びた鍵を取り出した。
(こんなんで本当にはいれるのかなぁ?)
そう疑問に思いながら扉に鍵を指してドアノブを開くと豪華なホテルのエントランスホールに出てきた。 そこではすでに狐が円型ソファに腰かけ有紗が来るのを待っていた。
『おっ、来たか』
「あの・・・・・その仮面外さないんですか?」
『ん? あぁこれな。 まぁお互い顔知らない方がいいだろ?』
「でも私素顔・・・・・」
『まぁ俺は素顔見せたくないからこのままいくぞ~』
少し納得できないが、有紗は仕方なしと気持ちを切り替えて狐の反対側に座った。
『よし、ならまずはこれを見てくれ』
そう狐が言うと立ち上がって空中に光で作ったキーボードを出し、何かを打ちこんでいる。 すると中央のテーブルの上に人型のアバターが出現した。
「これは?」
『こいつはお前さんようにチューニングしたゴーストユニットだ』
「ゴーストユニット?」
ゴーストユニットは、アバターユニットとは違い、首の後ろの接続端子や掌にあるハッキングコードを使うことで相手のデータに侵入することができるように作られたユニットでこれを使い件のクラッカーを追う。
またアバターユニットとは違い、プログラムをダウンロードすることができ、現実世界で出来ない動きや戦闘モーションを行うことができる。
しかし難点としては、ハッキング中は無防備になるらしい。
『一応これには現実世界への負荷を抑えるためにリミッターと感覚遮断が内蔵されてるから安心しろ』
「じゃあリミッターをはずしたら?」
『身体機能は一時的に跳ね上がるが、現実の肉体に与える負荷もただでは済まない』
少し怖い説明を聞きながらも有紗は今のアバターからゴーストユニットに意識をダウンロードした。 ダウンロードは一瞬で終わったが、アバターユニットとは操作方法が違うからか体が動かしずらいようだ。
『体は?』
「はい、多分問題ないと思います」
狐はそう聞くと奥の方から衣服を持ってきた。
『こいつを着とけ、着てる間は後ろ向いといてやるよ』
そういうと狐は後ろを向いて少し遠くの方に行った。 有紗はその間に体を慣らしながら着替えていく。 衣服行ってもシャツにズボン、ウイザードフードジャケット、ブーツといった狐と同じものを着こんでいく。
「なんだか意外です」
『ん?』
「ここまで優しくされるなんて」
『別に、普通だろ?』
「家族ならそうですけど、友達はその・・・」
『言いたくないなら、言わんでいい。 着替え終わったのか?』
「はい、一応」
そう有紗が告げると、狐はこちらを向いた。
『うん、だいじょうぶだな。 なら次はこっちに来てくれ』
そういうと、狐は手招きして奥の部屋に有紗を通した。 扉を開けるとたくさんの武器が所狭しと飾られている場所に出てきた。
「ここは?」
『これからここでお前さんにぴったりの武器を見繕うから』