玉響 手毬唄を歌う少女
玉響
それは‥今にして思えば 僅かなひと時 僅かばかりの時間
その時に小雨が引き留め
古い寺の境内で着物姿の幼い少女が手毬をつきながら、手毬唄らしきものを
呟くように謡っていた。
「哀れ哀れな比翼連理の者達 幼馴染の恋人達には 加虐な城主が横恋慕
恋人の若者が出来の良い若者の異母兄 彼、異母兄の瞋恚の炎にも二人は焼かれてしまう
腹黒き城主は男の異母兄の手助けに
彼等、恋人たちの楽しき恋草の日々は ある日に断ち切られて
城主に男は首を晒されて、女は哀れにも城主のもの‥
ああ、哀れなり‥そうして 憎しみの炎を心宿らせて女は‥報復する
異母兄は諫言でこれまた、首を落とされ 次には敵と内通して
城主の城は敵方に焼かれ‥女も城主も‥もろとも灰燼に 残ったのは
恋人の形見の手毬と奇妙な人形が一つ それが私」
僕はただ、幼い少女の手毬歌を聴きながら
静かに見つめ‥すると 振り返った少女の目は一つのみ
「あれ‥兄さん 驚かせたみたい きゃはは」少女の姿は消えて
まだ逢魔が時には早すぎる時間 海月の骨のような奇妙な出来事
残った綺麗な手毬が一つ
銀色の刺繍で出来た毬はまるで探驪獲珠のような不思議で清らかな輝きを放っている。
今度は小雨が大振りとなって遣らずの雨のように僕をまだ引き留めていたのだった。