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愛してました、たぶん  作者: たろ
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番外編  シャノンの大学生活

わたしはロイズの一年半遅れで大学に後期から入学した。

大学は飛び級も出来るので、とりあえずロイズと一緒に卒業しようと目標を決めた。


あとで知ったのだけど、わたしが大学に入るのに伴いお父様は、アパートを大学の近くに何棟か建てていた。


わたしは知らずにロイズに案内されて最初に見た部屋を気に入って、ロニーと二人で住む事になった。

アパートの前の小さな花壇には、わたしの好きな薔薇が咲いていた。

アパートの部屋は新築で二人で住むには丁度良い広さでてとても気に入った。


友人が出来て学園生活も楽しいと思えるようになった頃、事件は起きた。


ロニーは昼間はわたしが大学に行くのでその間はアパートの管理人を任されていた。


わたしが大学から帰ってくると、アパートの入り口でロニーが震えていた。


ロニーは中々のつわもののはずなのに震えているなんて何があったのだろうと慌てて駆け寄ると、涙目で

「こ、ここに、ね、猫がニャーと言ってアパートへ入っていきました。ど、どうしましょう」

と、震えだした。

(そう言えばロニーって昔っから猫がとっても苦手なのよね)


「ロニーはここで待っていてね、わたしが捕まえてくるからね」

わたしは急いでアパートの入り口から階段を上がり探し回った。

でもなかなか見つからない。


「ロニー、いないわ。どこかへ行ってしまったのではないかしら?」


「そ、そうですか……わかりました、では部屋へ戻りましょう」


ロニーは辺りをキョロキョロ見回しながら歩いて部屋の玄関前に立つと、カギを開けた。


わたしが先に部屋に入るとロニーも慌てて入り玄関ドアを閉めた。




◇ ◇ ◇


お互い寝ようと自分の部屋へ入って暫くしてから、

「ギィヤアー!」

と、雄叫びが上がった。

「ロニー、どうしたの?」


部屋に泥棒でもいるのか、それとも何かあるのかと思いわたしは手に箒を持ってロニーの部屋へ入った。


ロニーは震えながら部屋の隅でブルブル震えていた。

「ニャー」

と鳴き声が聞こえた。

見るとまだ小さな黒い猫がロニーのベッドの上に寝そべっていた。


ロニーは気づかずにベッドに入り何か動くものがあるなと触ったら生温かく動いたらしい。


恐る恐る見ると黒猫のチビがいたのだ。

普段とのギャップにわたしは萌えた。

(ロニー、可愛い!)

いつも気丈でわたしを守ってくれる強く逞しいロニーが今は小娘のように目を潤ませ震えていた。


わたしは箒を捨て仔猫の首を持って

「ロニー、すぐに向こうへ連れて行くわね」

と言ってロニーの部屋を出た。

仔猫は震えていたし少しぐったりしていた。


わたしは急いでミルクを薄めて人肌に温めてお皿に入れて仔猫に飲ませた。これは侯爵家の侍女が迷い込んだ仔猫にあげていたのを覚えていたので、なんとか飲ませる事に成功した。


仔猫はたぶん親猫から逸れて、お腹を空かせ迷い込んだのだと思う。

わたしは、ロニーの可愛さと子猫の可愛さに癒されたが、ロニーが苦手な子猫を家に置いておくことは難しいのでこの子をどうしようかと悩んだ。


次の日とりあえずロニーには内緒でわたしの部屋に置いておいた。

「シャノン様あの仔猫はどうしました?」


「外へ出したわよ」


「よ、よかった。これで安心して過ごせます」

(ま、まずいわ。早く仔猫をどうにかしなきゃ)


「ロニー、今日はわたしの部屋には入らないでね」


「わかりました、いつものようになっているのですね」

「ええ、そうよ」

わたしは勉強が忙しくなると部屋が雑多になる。しかし、全ての本の位置はわかっているので本の位置を動かされると勉強が捗らなくて困る。なので、ロニーに入らないようにいつも頼んでいる。


(良かった、忙しい時で)


わたしは仔猫にミルクとご飯を置き、トイレ用に新聞を床に敷き詰め、大学へ出かけた。


ロイズや友人達に仔猫の引き取り手を探してもらったが医学生は忙しく中々貰い手がなかった。

夕方、悩みながら歩いて帰っていると、ダンがいつものように現れた。


ダンは先触れもなく突然来て我が家でお茶をして少し話すと帰って行くというのが、最近では当たり前になりつつある。

大学から診療所は馬車で1時間程かかるのだが、ダンの実家の屋敷からなら30分程で来れるので会いに来てくれる。


「ダン、いい所に来たわ、貴方の知り合いで仔猫を貰ってくれる人いないかしら?」


「仔猫?」


「ええ、わたしの家に仔猫が迷い込んでいるんだけど、大学ではみんな勉強が忙しくて仔猫を飼うなんて出来ないと言われたの。うちはロニーが猫がとっても苦手だから飼えないし、このまま捨てることも出来なくて困っているの」


「ふうん、とりあえずどんな仔猫か見てみようか」

「お願い」

ダンとアパートに帰ると、ロニーがリビングでテーブルの上に上がって震えていた。


「シャノン様、た、助けてください」

涙目になって青い顔をしたロニーが指差した方を見てみると、仔猫が後ろ足で耳を掻いていた。

(猫ちゃん可愛い)

わたしは仔猫に癒されてほっこりしてそっと仔猫を抱っこした。


「シャノンさまの嘘つき!捨てたと仰ったではないですか!」


「ロニー、ごめんなさい。こんな小さな子を捨てるなんて可哀想だったの、お腹も空かせていたしぐったりしていたし」


「わ、わたしは可哀想ではないのですか?」

テーブルから降りられないロニーが訴えた。


抱っこした仔猫がわたしの胸にゴロゴロ喉を鳴らしながらスリスリしてくるのが可愛いすぎて、仔猫にキスを落としながら

「ロニー、今飼ってくれる人を探しているの、ダンにも誰かいないか聞いて欲しいとお願いしているわ、だからもう少しま……「俺が飼うよ」


「え?」

わたしは仔猫を抱きしめたまま驚いてダンを見た。

「ダンが飼うの?」


「ああ、今すぐ連れて帰る」

ダンは仔猫を受け取り「またな」と帰って行った。


◇ ◇ ◇


「シャノンにキスされるなんて、お前狡いぞ!それに抱きしめられやがって!」

ダンは仔猫に文句を言いながら屋敷に連れて帰った。

ジェシーに「お兄様、仔猫なんて連れて帰ってどうなさるのですか!」

と怒られたので

「こいつはシャノンに抱きしめられてキスされていたんだ!そのまま置いておく訳にはいかなかったんだ!」

とダンは言って飼う事にした。


気づけば毎日ベッドで仔猫と寝ているダンだった。



読んでいただきありがとうございました

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