番外編 お父様のはじめての子育て
わたしは子育ての大変さを今日一日で改めて知った。
シャノンが息子を産んだ、名前はアレックス。
シャノンによく似た顔立ちと銀色の髪を受け継いだ可愛らしい赤ちゃんだ。
わたしは、忙しい仕事の合間に時間を作りシャノンの家に顔を出している。
「お父様、今日はロニーの子どもが熱を出しました。なのでアレクの面倒を見てくれる人がいません。お父様、お願い出来ませんか?」
「わ、わたしがアレクの面倒をみる……子守りをすればいいのだろう、わかった任せろ」
わたしは頷いた。
内心、赤子など寝ているおとなしい時しか抱っこしたことがなかったのでドキドキだった。
「お父様、ここにミルクとオムツがあります。泣いたらどちらかです。どちらでもない時は眠たい時か抱っこして欲しい時です、お分かりですか?もし、もし、どうしても無理なら伯爵邸へ連れて行ってください。誰か助けてくれると思います」
「わ、わかった、シャノンは安心して仕事をしてきなさい。わたしが一日子守りをしているから」
わたしは少し顔を引き攣らせながらも安心させるように頷いた。
シャノンが仕事へ行って2時間。
アレクは大人しくスヤスヤ寝ている。
なんて可愛らしい寝顔なのだろう。
この可愛い寝顔を見ているだけで癒される。
わたしは飽きもせずアレクの顔を見ていた。
すると、アレクの目がパチリと開いた。
わたしと目が合ったと思った瞬間、顔を歪ませて泣き出した。
「おんぎゃあ、おんぎゃあ」
小さかった泣き声が少しずつボリュームを上げていく。
わたしはどうしていいのか分からず狼狽えたが、とりあえず抱っこをしてみた。するとお尻の辺りが生温かい。
これは‥‥おしっこだ。
慌てて寝かせてオムツを替える。なのに泣き止まない。
次はどうすればいいのか。
抱っこしてあやしてみる。
泣き止まない。
シャノンは、泣く時はミルクかオムツ、眠い時か抱っこして欲しい時だと言った。
寝ていた、オムツは替えた、抱っこしている、それでも泣き止まないのなら、「ミルクだ!」
わたしは慌てて、ミルクを作った。
確か人肌だと教えてもらった。
水に浸けて冷やした。
たぶんこれなら火傷しないだろう。
泣き叫ぶアレクの口に哺乳瓶の先を無理矢理入れた。
すると小さな口で一生懸命に動かして飲んでいる。
かなりお腹が空いていたようだった。
一瞬で飲み干し、今度は抱っこして背中を摩る。
「ケフッ…」
と、ゲップをさせた。
これで一通りの泣いた時の対処はした。
なのに泣き止まない。
また、お尻が生温かい。
それになんとも言えない匂いがする。臭くはないのだが、酸っぱいようなでもやはり臭いような……
わたしは、アレクをベッドへ寝かせてオムツを外すと………想像以上の量の×ンコが出ていた。
わたしは生まれて初めて、×ンコのオムツ交換をした。綺麗に拭き上げてお尻を乾燥させてまた新しいオムツに交換してやっと寝かせつけに成功した。
やはり寝ている時#だけ__・__#は天使だ。
寝ている間に生まれて初めてオムツを洗った。
そのまま置いていたら臭くて敵わない。
わたしは、浴室で洗剤を探し出し洗った。
何故か浴室中が泡だらけになった。
その泡がなくなるまで水洗いを続けた。
こんな面倒な事を女達はよく頑張ってしているとつくづく思う。
わたしは初めての子守りに疲弊しながらもアレクの寝顔に癒された。
なのに、ホッとしたのも束の間、また、泣き出した。
さっきと同じ事を繰り返した。
今度は全てやり尽くしたのに泣き止まない。
仕方がないのでずっと抱っこをした。
すると泣き止む。泣き止んだのでベッドに寝かせる。また泣き出す。だからまた抱っこをする。
この繰り返しにわたしはさらに泣きそうになった。
こんな事を繰り返していた。
夕方ダンが帰ってきた。
「ただいま、アレク!」
ダンが爽やかに帰ってきてアレクに近寄った時思わず殺意が芽生えた。
わたしがこんなに一日頑張って面倒をみたのにコイツは何も考えずアレクを抱こうとしている。
わたしはアレクを渡さなかった。
「面倒もみないお前にアレクを抱く権利はない」
アレクはわたしの怒りにキョトンとしていた。
「え?」
わたしは、今日は絶対、アレクをダンに触らせないと心に誓った。
わたしがアレクを抱っこし続けているとシャノンが帰ってきた。
「お父様、ありがとうございました。伯爵邸へは行かなかったのですか?お一人でアレクをみたのですか?大丈夫でしたか?」
「全く大した事はなかった。ゴホン……わたしはこれで帰る。アレク、シャノンまた来る」
わたしはダンが「え?俺に挨拶は…」と言っていたのが聞こえたが無視してさっさと帰った。
邸に帰ると、侍従に頼み全身をマッサージしてもらった。
たぶん明日は一日寝込む事になるだろう。
◇ ◇ ◇
「お父様、一日本当に頑張ってアレクをみてくれたのね」
わたしはロニーが来れなくて困ってはいたが、そんな時は伯爵家の侍女達のところへ連れて行けば面倒をみてくれる。それに我が家に通いの家政婦も来るのでお願いすれば大丈夫なのだ。
でもちょっとだけお父様に頼んだらどうするかしら?という好奇心でお願いしてみた。
まさか一日やり切ってしまうとは思わなかった。
家政婦さんは窓からこっそり見守って大丈夫そうだから帰ったそうだ。
お父様、お疲れ様でした。




