番外編 アイリスはやっぱりアイリス
わたしは今……住んでいるの…
真っ白い部屋にベッドがあるだけの寂しい部屋。
食事は1日3回。
朝はパンとミルク
昼はパンとスクランブルエッグと少しのサラダ
夜はパンとスープとちょっとだけ硬いお肉と少しのサラダ
今までだったら牢屋の前に誰か立っていたのに今は誰もいない。話し相手もいないの。
食事はいつもドアの真ん中にある小さな小窓を開け閉めして渡されている。
誰とも話さない。
指示の書いた紙を食事のトレーに置かれているだけ。わたしはその指示を読んで仕方なく薬を飲むだけ。
飲まないと食事も水もくれないの。
寂しい、淋しい、ラウル様に会いたい、彼に抱きしめられたい、抱かれたい、愛されたいの……
どうして会いに来てくれないの?
わたしは彼を愛しているの。
初めて会ったのはシャノンに紹介された時。ドキドキしたの。でもその時はこれが恋だと気づかなかったわ。
だってわたしは可愛いからいつも男の子がいっぱいチヤホヤしてくれてよくわからなかったの。
学園では何度か恋人もできたわ。
でも、目を追ってしまうのはラウル様だけだった。
彼の姿を探すため、女の子達がよく見学する騎士団の鍛錬場へ行ったわ‥シャノンの付き添いで。
シャノンは黙って見ているだけで話しかけないの。
なのにラウル様はシャノンを見つけると、急いでわたし達の元へ駆け寄ってきた。
「シャノン、見に来てくれたんだね」
ラウル様は横にいるわたしのことは目に入らない。
イライラする。
みんなシャノンではなくわたしを見て話しかけてくれるのにラウル様はわたしを見ない。
あの目にわたしを映したい。
あの笑顔で話しかけて欲しい。
あの微笑みで抱きしめられたい。
あの素敵な身体で抱かれたい。
わたしの欲望は膨らむ。
元彼のウィリアムは身体の相性がとっても良くて満足するまで抱いてくれるの。
偶に水に何か薬を入れているのに気がついていた。
でもエッチが上手だから気にしてなかったの。でもたまたま薬の袋を落としていてわたしが拾ったの。
「アイリス、それは魔法の薬なんだ。それを飲むと目の前にいる人を抱かずにいられなくなる。身体中を愛したくなるんだ」
と、ウィリアムは笑って言った。
だからわたしはいつもウィリアムを身体中で感じるのね。
納得したわ。
いつも彼の身体をわたしが貪りたくなるの。足りなくて欲しくて何も考えられなくなるの。
ラウル様にシャノンの話をする事で近づく事が出来た。
お礼と言ってプレゼントをくれたりお茶をしに連れて行ってくれたりする。
わたしは、騎士団に差し入れを持って行き彼に近づいた。
彼が夜勤の当直と聞いて、差し入れを持って行った。
驚かれたけどシャノンの友人であるわたしを無碍に出来ず、差し入れを食べてくれた。
そして彼はわたしを目に映した瞬間、私の身体を抱き始めた。
普通の薬の2倍入れたら即効性が強くてわたしを見ると抱かずにいられない身体にした。
彼はシャノン以外ともエッチをしていたのは調べて知っていたので、わたしの身体を虜にするのは簡単だった。
でも、彼はわたしを見ない時はわたしを欲しない。
だから彼はシャノンの代わりに他の女を抱くの。
わたしだけを抱いて欲しい。
差し入れを持ってわたしは彼に会いに行く。
わたしは彼の身体に溺れる。
ウィリアムと違う、逞しい身体、綺麗な顔立ち、優しい声、激しいセックス、もう溺れずにはいられなかった。
わたしは溺れていく。
薬が欲しくて、騎士団のみんなにも魔法の薬を教えてあげた。
ウィリアムはお礼に薬をくれる。わたしの好きなドレスも好きな時に購入させてくれる。もっと売ってもっとわたしはドレスを買って彼の前で美しくなるの。
シャノンなんかに負けないの。
そう、わたしはラウル様に愛されているの。
今日も薬を飲んでラウル様に抱かれるの。
ラウル様に薬を飲ませてわたしを貪らせるの。
真っ白い部屋にベッドがあるだけの寂しい部屋で、わたしはラウル様に抱かれ愛を囁かれる夢を見る。
◇ ◇ ◇
今日の観察は
「涎がひどい。
一人でブツブツと話している。
今どこにいるかわかっていない。
排泄は自分でできない。
食事は手で掴んで貪るように食べている。
突然叫び出す。
以上。監視から1年と3か月12日目」
重複していた所書き直しました。
ダンとわたしとお父様の所です。
すみませんでした。