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愛してました、たぶん  作者: たろ
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赤い屋根の白い小さなお家②

赤い屋根の白い小さなお家で暮らしだして2ヶ月を過ぎた。


いつものように執務室で仕事をしていると先生から夜、邸に呼びだされた。


「シャノン嬢、今夜話がある。仕事が終わったら一度ロニーと顔を出してくれるかね?」


「はい、わかりました先生」


(先生の様子がいつもと違うわ、何かあったのかしら)


お昼の休憩の時は歩いて5分の小さな赤い屋根のお家に帰ることが多い。


「ただいま」


「シャノン様、おかえりなさいませ。お食事の準備は出来ています」


家事の苦手なわたしはいつもロニーに食事を作ってもらっている。

代わりにお皿洗いはわたしがしている。


始めはお皿もまともに洗えなかったけど(洗剤が残ってたり床を水浸しにしたり)今では鍋もきれいに洗うことができるようになった。


「ロニー、今日は先生に夜呼ばれているの。お食事も向こうでご一緒にと言われているわ、もちろん二人でよ」


「かしこまりました、ではきちんとした服装に着替えてお伺いいたしましょう」


「いつもごめんなさいね迷惑かけるけどよろしくね」


わたしは簡単なワンピースなら一人で着替えることができるようになった。

でもまだ簡単なものでもドレスはひとりでは無理。



◇ ◇ ◇



先生の邸を訪ねるとすぐに先生の執務室に通された。

「シャノン嬢、ソファに座りなさい、ロニーも一緒に」

先生は少し苦い顔をしていた。

「先生……何かありました?」


「ああ……」

しばらく悩んで黙っているみたい。


「君の夫であるラウル・ベルアート公爵だが……」


また、黙ってしまった。どう伝えるべきか悩んでいるようだ。


「先生、あれから2ヶ月をすぎました。実家の侯爵家からもベルアート公爵家からも何も動きがないのでどうなっているのか気にはなっていました。何かありましたか?」


わたしの中では覚悟は決まっていた。

そろそろ離縁状も出されているはずだ。もうアイリスと再婚したのだろうか?


侯爵家からも絶縁状が届いているのかもしれない。何も知らせないで姿を消したのだから怒っていても当たり前のはず、役に立たないゴミ屑は捨てられて当然なんだもん。


ここが居心地がよくて幸せすぎて他のことを考えないようにして逃げてただけなのよね。


「公爵家からシャノンの居場所の確認が来ていた、ずっと誤魔化して隠していたのだが、この前の騎士の怪我の時、君の姿を見られていたようだ、すまない私たちの落ち度だ」

先生は頭を下げてくださった。


「先生はわたしを人目に晒さないように見守りながら、でも仕事もさせてくださいました、感謝しかありません。 

この2ヶ月間わたしは初めて自分で考えて自分で行動して生きているという経験をさせていただきました」


「ベルアート公爵が君と話したいと言ってきている。逃げていても仕方ないと思う、そろそろ話し合ってけじめをつけた方がいいと思う」


「はい、わたしもそう思います」


わたしは少し気持ちが落ち着いてきたのか、今までのわたしだったら絶対話し合いを拒否して逃げ回っていたと思うけど、今なら彼ときちんと向き合える気がした。


「先生、近いうちにどこかで話をできるようにあちらに伝えていただいてもよろしいでしょうか?」


「わかった、話が決まったら教えるよ」


「シャノン嬢、君の父親のことなん・・「先生、わたしにはもう父はいません、母も亡くなりわたしはこれから一人で生きていくのです」


「……そうか」


先生はそれ以上何も仰らなかった。


その日の夜は、先生とノエル様、ロニーと共に食事をした。


先生は何か言いたそうに何度もわたしを見てはため息をついていた。


わたしはそれに気づかないふりをしていた。


それからしばらくは何事もなくわたしとロニーは赤い屋根の白い小さなお家でのんびりと過ごした。





















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