ダンとわたし④
ダンとのお付き合いは今までとあまり変わらなかった。
わたしの家にダンが遊びに来て、公爵家のお菓子を届けてくれる。
最近はジェシーも一緒に来て、三人でお茶をして過ごす事も増えた。
「ジェシー、なんで今日も来てるんだ!」
「お兄様がわたしを連れて来てくださらないから勝手に来ることにしたのですわ」
二人の言い合いが羨ましくてわたしはついにこにこしてしまう。
「美味しいお菓子を頂けてジェシーとも話せてわたしは幸せだわ」
「シャノン様はお仕事はどうですか?」
「まだまだ研修中で出来ない事だらけで落ち込む時もあるわ。でも頑張っていつか人のためになれる医師を目指すわ」
「お姉様、応援してます!次は苺のパイを作ってもらいましょうね」
「ありがとう!とっても嬉しいわ!わたし、頑張れそうだわ」
ジェシーとのたわいもない会話がとても楽しい。
横でいつもダンはムスッとしているのが何故か最近は可愛く感じている。
「俺だって応援してるんだ。だから我慢してるんだ!」
「何を我慢しているの?」
わたしが不思議そうに聞いたらダンは少し顔を赤くして小さな声で呟いた。
「……ほんとは早く結婚したいんだ」
わたしは驚いたけどとても嬉しかった。
「ダン、ありがとう。こんなわたしと結婚を考えてくれるなんて。でも気を遣わないでちょうだい。わたしは傷物なの」
ダンはムッとして怒った。
「いい加減にしろ!離縁したからってなんだ!俺はシャノンがいいんだ。ほんとは今すぐにでも結婚したいのを我慢してるんだ。シャノンが立派な医者になりたいって言ったから!」
「お兄様!かっこいい!」
「うるさい!ジェシーは黙ってろ!」
ダンの怒気にジェシーはシュンとなって謝った。
「ごめんなさい」
「ダン、ごめんなさい。貴方の気持ちも考えないでいつも自分を否定してしまって。どうしても結婚になると怖いの。ラウルの時の事を思い出してしまうの。ごめんなさい」
ダンは、ハッとして素面に戻った。
「シャノンごめん。俺は絶対に浮気はしない。シャノンだけを愛している」
「お兄様は、シャノン姉様だけよ。初恋を拗らせ過ぎて全く恋愛をしなかった人だから、そこだけは保証するわ」
ジェシーが言うと、ダンが苦笑いをした。
「まあ、確かに恋愛しなさ過ぎてどうしたら良いかわからなくてシャノンを楽しませてもあげられないよな」
「そんなことはないわ。わたしは家に来てくれて楽しく話すだけで幸せなの」
「さあ、わたしは帰ります。ゆっくりお二人で話してくださいね」
ジェシーは帰って行った。
わたしとダンはしばらくお互い黙ったままお茶を飲んでいた。
「シャノン、君が待てと言うならいくらでも待つよ。でも、お願いだからわたしなんかって言うのだけはやめて欲しい。
俺はずっとシャノンだけを見てきてシャノン以外とは結婚したくなかったから諦めていたんだ。それなのにシャノンを恋人に出来た。俺にとっては最高の幸せなんだ。俺は何があっても浮気はしない。君だけをずっと愛し続けるからいつか結婚して欲しい」
わたしは誰からも言われたことがない言葉を言われて泣いてしまった。
「浮気しない?わたしを愛してくれる?本当に?」
ダンを見つめ泣きながら聞いた。
「ああ、絶対にしない」
わたしとダンは初めてキスをした。
ダンの優しいキスがわたしの凍っていた心を溶かしてくれた。
「ダン、貴方と一緒にいたい。愛してるわ」




