新しい生活②
大学をロイズと共に卒業した。
卒業式の日、ロイズはわたしをじろっと見ながら溜め息を吐いた。
「ほんとにシャノン、有言実行だな。僕と一緒に卒業したな」
「あら?2年半かかったわ」
「それは2年で卒業資格をとって、教授ともっと深く勉強したいと言って自分が半年伸ばしただけだろう!」
「だってロニーがあと半年は結婚が大丈夫って言ったから、無理矢理卒業を伸ばして貰ったの」
「君たち、もういいだろう」
友人達がわたし達を見て笑った。
彼らは共に過ごした仲間だ。
これからは互いに医師となり協力して成長していく仲間になる大切な友人達。
「また、会おう」
「互いの成長を楽しみに、また、会おうな」
「シャノン、張り切り過ぎて寝込むなよ!」
「ええ、みんな一緒に卒業出来て嬉しいわ。次会う時は互いにもっと成長した姿を見せ合いましょうね」
わたし達は、少しの寂しさとこれから歩く未来の道への希望に向けてそれぞれ歩き出した。
「またな!」
「またね!」
「「じゃあ!」」
◇ ◇ ◇
ロニーはもうすぐ花嫁になる。
わたしはロニーのためにベールをこっそり作った。
ロニーのドレスはプリンセスラインのウエディングドレス。それに合わせてベールを作ることにしたのだ。
もちろん被ってしまわないようにロニーにはリーサが用意すると言ってくれているの。
シルクの糸を使って花模様のレース編みをたくさん作った。
それをソフトチュールの布に縫い付けていく。
一針一針、ロニーに感謝をしながらロニーの幸せを願いながら縫っていった。
完成したベールをつけてくれた花嫁姿にわたしはとても感無量になった。
(幸せになってね。わたしの大事なロニー)
◇ ◇ ◇
ロイズは、実家の診療所での研修ではなく国立病院の研修医として日々を過ごし始めた。
彼ももうすぐ婚約者のエリアナ様と結婚する。しばらくは実家ではなく国立病院の近くに住むらしい。
わたしは診療所の近くに家を借りた。
ロニーに独り立ち出来るように料理も掃除も洗濯も教わって少しずつ出来るようになった。
わたしはやっと一人で生きていく力を保つことができた。
なのに…
「シャノン、お前またパンとスープだけしか食ってないぞ!肉や魚も食え!」
「この家、きったねえなぁ」
「シャノン、そろそろ親父さんに会いに行こう」
「シャノン、休みだからってダラダラすんな!俺と鍛錬でもするか?」
毎回うるさいのがやって来る。
「ダン、うるさいわ」
わたしは、うるさいダンが来ることがいつの間にか当たり前になっていた。
ダンは、大学の間も心配していつも顔を出してくれていた。
ロニーは、鬱陶しそうに適当に追い払っていたけど……。
一人暮らしになってダンはよく公爵家お抱えの料理人が作った美味しいお菓子を差し入れてくれる。
わたしは完全に餌付けされてしまった。
「一緒に食べよう?」
「いただくわ」
「シャノン、除籍を待って貰って3年経った。そろそろ会いに行かないのか?
親父さんはずっと待ってるぞ」
「ダン、わたしはまだお父様には会わないわよ」
「なんでそんなに意地っ張りなんだ?」
「わたし、お父様に会うのは研修医としてではなくてお医者さんになってから会いたいの」
「ふうん、じゃあ医者になった時、ついでに俺の嫁さんにもなって親父さんに一緒に挨拶に行こうぜ!」
「え?何を言ってるの?」
「うん?俺は子どもの頃からずっとお前だけだ。お前が結婚した時は諦めて一生独身でいるつもりだった。でもお前はラウルと離縁しただろう?俺は諦めるのやめたんだ」
わたしを見つめてダンは言った。
「俺の夢はお前だけの騎士になることだったんだ。浮気は絶対にしない。お前以外愛せないし愛さない。結婚して欲しい」