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愛してました、たぶん  作者: たろ
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新しい生活

ダンとは仲直りした。


お父様との除籍の件は、ロニーがいつの間にかお父様と話して止められていた。


ロニーは、わたしがお父様を見つめる目がまだ愛されたいと思っている時の子どもの頃の目に戻っていたと言われた。


諦めきっていた15歳からのわたしの目と、今お父様を信用できないと言いつつ見てしまうわたしの目が変わってきたんだとロニーは言う。


わたし自身にはわからない変化。


いつもそばに居てくれるロニーだから気づいてくれたのかもしれない。


でもわたしはまだお父様には会っていない。


ただ、除籍を待って貰っているだけ。


今はとりあえず午前中は先生の執務のお手伝い、午後からは試験勉強と時間に追われているので、考えないことにしている。


ロイズがたまに帰って来ると、試験の過去問題を見せてくれて教えて貰っている。

これは長年の先輩たちからの問題を取っていて引き継がれたものなのでとても助かっている。


ついでに過去問題を一つずつを手書きで整理して次に見る人のためにわかりやすくまとめた。

おかげで問題の傾向がわかるし覚えるし、わたしには合っているやり方みたい。



◇ ◇ ◇



今日はいよいよ合格発表の日。


学校の掲示板に合否が貼り出されている。


ノエル様が馬車で一緒に行ってくださる。


わたしの夢なので落ちたらまた半年後受けるつもりなんだけど、大丈夫かな…こんなに自信がないのに飛び級するなんて言った自信はどこからきたのかしら?


馬車の中でもノエル様が何か言っても耳に入ってこなくて生返事だし、ドキドキしすぎてお腹が痛いし、本当にどうしたらいいのかわからない。


馬車を降りてノエル様と大学内の掲示板へ行くとロイズが待っていてくれた。


「ロイズ、お願い!わたしの代わりに見てきて!はいこれがわたしの番号だから……」


わたしの必死のお願いに

「仕方ないな。どうせ受かってるから見に行ってあげるよ」


ロイズはわたしとノエル様を置いてスタスタと見に行ってすぐに帰ってきた。


「おめでとう、シャノン」


「ありがとう、ロイズ」


「おめでとう、シャノン!」


「ありがとうございます。ノエル様」


わたしはホッとして受付で手続きを終わらせて、ノエル様とロイズに紹介された貸アパートに向かった。


まだ新しい建ったばかりのアパートだった。

部屋は二部屋でキッチンと食事スペース、バストイレ付き。

二人で十分暮らせる広さで大学からも歩いて数分。

これなら安心して通えそう。


わたしは新しい暮らしにワクワクしていた。


実はロイズに紹介された貸アパートは、お父様がわたしが通うのにロニーと二人で暮らすことを聞いて、大学周辺に4棟のアパートを建てていたらしい。


何処が気に入るかわからないので、4棟建てればどれか気に入るところに住んでくれるだろうと思ったらしい。


不動産関係の仕事もしている父なので無駄にはならないと思うが、考えがよくわからない人だ。


それも女性限定のアパートなので、一階には警備の人が24時間居て安心のセキュリティらしい。


半年弱で建てた財力と行動力には呆れてしまう。


お父様には、合格したことは手紙で伝えた。

まだ除籍を待って頂きありがとうございます。

と添えて送った。


お父様から届いた手紙には

『合格おめでとう。

君の夢を全力で応援させてもらう。

いつか君と向き合える日が来るまで除籍はしない。

君が自由に生きることがわたしの贖罪だ』

と書かれていた。


わたしはお父様の字をそっと指で触った。

冷たくて怖い人。字も真面目できちんとしていた。

なのにとても温かくて胸がギュッと苦しくなる。

わたしが最近たまになるこの症状をわたしは気付きたくなくてずっと無視していた。


最後に会った日のお父様との別れの時の顔を思い出すといつもズキズキとしてしまう。

助け出されて抱っこされた時のお父様の温もりを思い出すと胸がギュッとなる。


わかっている。

わたしは素直じゃない。

もうお父様のこと許しているの。


でも素直になれない。

わたしはまだお父様に会うことはなかった。

そして大学生活をを二年と半年で首席で卒業した。







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