アイリスとの再会
ダンに怒られてから数日後、アイリスが病院に移送される前に会えることになった。
病院に入れば二度と誰とも会うことはないらしい。
わたしが最後の面会者になるとトーマス様に言われた。
◇ ◇ ◇
アイリスのいる留置所へ行った。
檻の中にいるアイリスはわたしを見て笑い出した。
「あらぁ、シャノンじゃあない？
よくここに顔出せたわね。わたしとラウル様の愛を邪魔しにきたの？」
アイリスは囚人服を着ていた。
髪は梳かされておらずボサボサでいつ入浴したのかもわからない状態で、強烈な臭いがした。
いつも綺麗な髪で可愛い服を着ていた可愛い笑顔のアイリスがどこにもいなかった。
目は虚で、少し涎を垂らしていた。
そしてアイリスは独り言をずっと言い続けた。
「ねえ、お腹が空いたの。今日のお料理はなあに？わたしステーキを食べたいわ。持ってきてちょうだい！」
「あらあ、シャノン。ラウル様を盗られて泣いているかと思ったら平然としているのね。ふふふふふ。でも愛されているのはわたしなのよ」
「ねえ、シャノン。わたしが貴方を守ってあげるわ。だってシャノンはすぐ泣くんだもの」
「シャノン、なんで貴方がここにいるの！こないでー！！」
「シャノン、またお父様に怒られたの？泣かないで。今日はわたしがお泊まりしてあげるから一緒に寝ましょう？大好きよシャノン」
アイリスは突然怒ったり、高いところにある窓を見つめながら優しく話し出したりした。
優しく話している時のアイリスは、わたしが落ち込んだ時にそばに居てくれた優しい大好きだったアイリスだった。
「アイリス……」
「あんたなんか大っ嫌い！いつもわたしが欲しいものを持ってる！ラウル様の愛だっていつもそばにいてくれる優しい幼馴染。邸の使用人はみんなシャノンに優しくて大事にされてる！服だってとっても豪華で良いものばかり。シャノンの綺麗な顔だって大嫌い！わたしの方が何倍も可愛いのに！みんなシャノンが好きなの！ずるいずるいずるい」
アイリスは泣き出した。
「シャノン、大好き。わたしのシャノン、泣かないでね。わたし貴方をずっと守り続けるから」
と言ってわたしの方に向かって檻から手を差し出そうとした。
わたしは急いでアイリスの手を握ろうとしたら
「駄目です」
と看守に止められた。
「お願い、そばに行かせて！」
なんとか看守を振り払おうとしたけど看守の力には勝てなかった。
「アイリス、わたしも貴方が大好きだったの」
わたしが叫ぶと、アイリスは一瞬だけまともな顔に戻った。
「シャノン……ごめんなさい」
と言うと、また虚な目に戻った。
「ねえ！お風呂に入りたいわ。着替えはどこ？ほんと貴方たちなんの役にも立たないのね。わたしは公爵夫人になる女なのよ」
アハハハ！
と大きな声で言い出した。
「シャノン様これ以上はお時間がありません」
わたしは看守に連れ出された。
