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愛してました、たぶん  作者: たろ
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残念なダン

やばい、ヤバい……


俺の初恋、終わった。


いや最初から終わってたけど、今日完全に終わった。


ど、どうしよう。


シャノンに怒って気がつけば家に帰っていた。


「お兄様、何、玄関の前で蹲っていらっしゃるの。邪魔だわ」


妹のジェシーがジロっと俺を上から見下していた。


「うるせえなぁ……ハァァ…もう俺は終わったんだよ」


「…フッ、どうせまたシャノン姉様にフラれたのでしょう?」


「振られてない!嫌われただけだ!」


「それもっと酷いじゃない!」

妹は、笑いながら言った。


「つい、あいつが意地張るから、腹が立ったんだ」

ジェシーが俺の前に立ちはだかって腰に手を当てて怒り出した。


「お兄様!貴方は騎士団団長の息子であり第2部隊副隊長でもあるのよ。剣の才に恵まれてみんなから注目を浴びている騎士なのよ!しっかりしなさい!」


妹に励まされるなんてさらにへこむ。


俺は、初めて会った時シャノンに一目惚れした。


母上が教育係となって屋敷に連れてくる前に、何度かシャノンの邸にお見舞いに行ったことがある。

そこに寝ている女の子は色白で線が細くて、消えてしまいそうだった。


消えてしまわないかと覗き込んだ時、あの黒い瞳に吸い込まれた。


黒い瞳に映った俺の顔はたぶん真っ赤だったと思う。

急いで窓を見て誤魔化したけど絶対気づかれてた。


母上が、俺の頭の上でクスクス笑っている声が聞こえた。


シャノンは、被っていた布団から顔を覗かせて聞いた。

「貴方はだあれ?」


「お、俺はダン!」


「ダン様?お見舞いに来てくれてありがとう。とっても嬉しいわ」

シャノンのふわっと笑った顔にドキドキした。


「ダン様じゃなくダン!」


「いいの?ダンと呼んでも?」


「ああ、俺もシャノンって呼ぶから」


「よろしくね、ダン」


シャノンは喘息が酷くて横になっていることが多いらしい。


俺は普段なら絶対に読まない絵本をシャノンと一緒に読んだ。


何度かお見舞いに行っていたら、母上がシャノンを家に連れてくるようになった。


俺たち兄妹三人とシャノン、偶に幼馴染のロイズも交ざって遊んだり勉強したりするようになった。


シャノンはジェシーとすぐ仲良くなった。


ジェシーとシャノンが遊んでいてもイラッとするのに、ロイズがシャノンと仲良くしているとさらにイラっとして、シャノンを無理矢理鬼ごっこに入れたり外に連れ出した。

その度にシャノンは喘息の発作を起こして俺は母上に拳骨をされていた。


俺の家には薔薇園があってシャノンが喜ぶと思ったけど、そこまで歩くだけでシャノンは疲れて動けない。健康な体の俺にはシャノンは不思議な生きものだった。

歩くだけで寝込むシャノンを俺は守ると誓った。

だから、騎士を目指したんだ。

きつい鍛錬も、いつか騎士団に入るためだと頑張った。

体を鍛えてシャノンを守る騎士になると勝手に決めていた。


中等部に入り、父上がシャノンに婚約を打診してくれた。


俺のシャノンへの気持ちに気付いた母上が父上に頼んだのだ。

だが、結果は惨敗。

シャノンはラウルが好きだから高等部に入ったら婚約することになっていると聞いた。

ラウルといったら、その頃は早くに騎士団に入隊して学生と騎士をやっている頑張り屋だと父上が言っていた奴だった。

騎士団を覗きに行くと男の俺が見てもかっこよかった。

女の子にもモテるし、剣もかなり上手で強い。


俺は負けたと思って落ち込んで帰った。


ロイズも婚約の打診をして断られた。

あいつは、すぐにほかの令嬢と婚約した。

あんなにシャノンが好きだったのに忘れられるものなのか?


俺には無理だった。


高等部に入りシャノンがラウルと婚約したことを聞いた。


わかっていたことだったが、ショックだった。


俺は何かに夢中になりたくてすぐに騎士団に入隊した。


運悪くラウルと同じ部隊になった。


ラウルは、寄ってくる女の子とそれなりに遊んでいた。


まあ、5歳も年上だし、そんなもんかと思うところもあるがシャノンが知ったらショックだと思い、一度ラウルに言ったことがあった。

「ラウルさん、婚約者がいるんでしょう?女遊びなんかしていいんですか?」


「ダン、婚約者はまだ15歳だ。抱くわけにはいかないだろう?それともシャノンを抱いたほうがいいのか?」

ラウルは俺がシャノンの幼馴染だと知っていて態とに言った。


俺にとって衝撃的な一言だった。


こいつは糞だ。でもシャノンにそんなことするくらいなら他の女としてくれた方がマシだと思った。


俺も糞だよな。15歳の俺にはなんの力もない。


それから俺はラウルの女遊びを黙認した。


まさか、アイリスとまで関係してシャノンを傷つけるなんてその時は思わなかった。








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