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愛してました、たぶん  作者: たろ
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赤い屋根の白い小さなお家

先生の邸に来て1ヶ月が経った。


ロニーは公爵家の侍女を辞めてわたしのところに来てくれた。

今はわたしが借りている小さな家に二人で住んでいる。


この家は先生の家から歩いて5分の好立地。

ロニー姉妹の家でもある。

そこにロニー姉妹から借りて住んでいる。


二部屋とキッチンとダイニング、お風呂とトイレが付いている。

外壁は白で赤い屋根、玄関の両脇には小さな花壇があり、お休みの時に二人で花を植えたり、トマトの苗を植えたりして楽しんでいる。


今まで住んでいた邸に比べたら、わたしの部屋と寝室を合わせたくらいの小さなお家。

誰にも気を遣うことなく好きな時に好きなことが出来るなんてほんと幸せ。


慣れない家事にいつもロニーに迷惑ばかりかけているけど、二人で笑い合えるってほんと最高!


◇ ◇ ◇


「おはようございます」


ロバートおじ様の邸の横に大きな診療所がある。そこには5人の通いのお医者様、30人の看護師さんが働いている。入院も完備されていて、わたしはおじ様のサポート兼見習い看護師として働いている。


午前中は先生の書類の整理や事務をして、昼からは患者さんのところに行って体を拭いたり歩行訓練のお手伝いをしたりしている。


「シャノンちゃん、こっちをお願い!」


わたしに仕事を教えてくれている2つ年上のキャロルさんが、大怪我をして痛さで暴れている20代の男の人を抑える手助けにわたしを大声で呼んだ。


「はい、足を押さえます」


「お願い!」


騎士団の方で、街中で暴れていた破落戸の数人を取り押さえる時に、剣で背中を切られたらしい。

かなりの血が流れている。


騎士団専属の診療所に連れて行くには間に合わなかったため、近くにあったここの診療所に運ばれたのだ。


先生は、すぐに麻酔を打ち消毒をして傷の手当てを始めた。わたしはまだ患者さんの手当など見たことが無かったので、酷い出血と傷口に目を向けられなくて騎士の方を見ながら

「痛いけど我慢してくださいね、すぐに治療終わりますから」

と、優しく声をかけてあげることしかできなかった。


騎士の方はしばらく診療所に入院になるらしい。

わたしは入院患者さんに食事会を運んだり体を拭いてあげたり、リハビリがてら歩く患者さんに寄り添うのが今の仕事なので、たぶん騎士様にもお会いすることがあると思う。


もし、ラウル様の知り合いの方だったらどうしようと少し不安になりつつ過ごした。



◇ ◇ ◇


ロニーは、ヘンドリー家で通いの家政婦をしている。実はロニーとヘンドリー家の侍女であるリーサは姉妹である。


二人は地方の男爵家の出で、それぞれが奉公として13歳の時に出された。


ロニーは、わたしが8歳の時に邸にやってきた。

そして、実家の侯爵家の紹介で、2年後リーサも13歳の時にヘンドリー家へ侍女として奉公に入ったのだった。


二人とも学校に通いながら侍女見習いに入った。そして学園を卒業して侍女として働き出したのだ。


そして二人で買ったのが赤い屋根の白い小さなお家だった。

もともとヘンドリー家所有のお家を売ってもらったらしい。


ロニーは家賃など要らないと言ってくれたけど、わたしは自分の足で立って生きて行きたいので、払わせてもらっている。


自分の足で立って生きるには、ほぼ家事が出来なくて、料理は特に食べれたものではないけど。


最近は、パンを切ることもできるようになった。始めは何故か指も切れてたんだけどね。



ロニーは一人っ子でいつも家にぽつんと居るわたしの遊び相手をしてくれた。

時には厳しく、でも大雨で眠れない時や喘息で苦しんでいる時は、次の日学校があるのに寝ずにそばにいてくれた。

わたしの大切な姉のような母のような存在である。


リーサは、ロイズが我が家に来る時に付き添いとしてよく来たので、4人で話すことが多かった。


わたしの3つ年上のやはり優しい姉のような存在である。


そう、わたしにとってヘンドリー家のみんなは、家族みたいだった。


侯爵家でも嫁いだ公爵家でも、こんな居心地の良い場所はなかった。ずっとぬるま湯の中で浸かっていたい、優しい空間。


どんなに手を伸ばしても得られなかったものがここにある。


優しいおじ様の先生、母のように厳しくも愛情豊かなノエル様、いつも包んで守ってくれる初恋の人ロイズ、わたしのことを妹のように見守ってくれているロニーとリーサ。


診療所のみんなはわたしを侯爵令嬢や公爵夫人としてではなくて、診療所で働くシャノンとして接してくれる。


わたしの大切な場所。






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