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愛してました、たぶん  作者: たろ
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離縁と除籍

ラウルと離縁した。


ラウルから手紙で会いたいと知らせがきた。

先生にも前々からきちんと話し合ってから離縁するか決めるようにと言われていたので最後のけじめとして会うことにした。


会う前に先生からラウルが公爵当主をお義父様に返してもう一度やり直し、領地に戻ると聞いた。


公爵家はラウルの醜聞や不貞の粛清で恨みを買ったため、仕事が上手く回らなくなっていると聞いた。


わたしも少しは手伝いをしていただけに心配にはなった。

でも、もうラウルには気持ちがなくなってしまった。


アイリスの事だけではなく振り返ってみるとラウルはわたしのことを愛していたとは思えなかった。


いつも優しく微笑んでくれたけど、彼の心の中が見えることはなかった。

そう、ただただ優しかっただけ。


わたしを愛でて見ているだけ。


わたしも愛してはいたが、彼の表面だけを見て愛していただけ。たぶん愛していると思っていただけだった。


ラウルはもう一度やり直したいと言ったがわたしには到底受け入れられなかった。


邸を出たばかりの頃みたいに怒りや悲しみ、気持ちの悪さは残っていないが、彼にもう一度触れられるのは絶対に嫌だし無理だった。



◇ ◇ ◇


それから数日後、お父様に離縁したことを伝えにロニーと一緒に久しぶりに侯爵家に向かった。


家令のクリスが玄関で迎えてくれた。


邸の中に入るとみんなが並んで出迎えてくれた。


みんなの顔を見回しながら懐かしさが込み上げてきた。


わたしはみんなと一緒に食事をしたりお茶をしたり縫い物をして過ごした。


どれも一人ではつまらなくて、いつもみんなが一緒だった。わたしの大好きな人たちに久しぶりに会えて思わず涙が出た。


もう戻ることはないと思って出た結婚式の日。

わたしは父とこの家を捨てたのだった。


でもみんなはそんなわたしを温かく出迎えてくれた。


「みんな………お久しぶりです」


ロニーは、そっとハンカチを渡してくれた。

大粒の涙ですぐにハンカチはグショグショになった。


お父様の執務室へ向かった。


コンコン


「どうぞお入り」


この邸で優しい父の声など聞いた事がなかった。


優しい声に思わず固まってしまった。


お父様は、苦笑いしながらわたしに話しかけた。


「シャノン、すまない。君が来る前に仕事を終わらせようと思っていたんだが、あと少しで終わる。客室で待っていてくれるかい?」


「お父様、でしたらここで待たせていただいてもよろしいですか?」


「うん?ゆっくりお茶でもしていたらいいじゃないか?」


「ここで待たせてください」


「わかった。少し待っていてくれ」


わたしは初めてお父様の仕事をする姿を見た。


わたしの知っているお父様はいつもイライラしていて不機嫌で怖かった。


話しかけても無愛想で、小さかったわたしにはとても怖い人だった。


でも今仕事をしているお父様は、不機嫌で無愛想だと思った同じ顔なのに、真剣で真面目に必死で仕事をしている姿に見える。


同じ顔なのに見方で、不機嫌で怖く感じたり、真面目で頑張っている姿にも感じたりと、わたしの気持ち次第で変わることに気がついた。


わたしはお父様に愛されたかった。でもぶつかって拒絶されるのが怖かった。


だから、いつもビクビクしていた。良い娘でいれば愛されるかもしれないと思って待っていたけど一度も自分から求めに行ったことはなかった。


まあ、会えば文句か嫌味しか言われなかったから求めることすら考えられなかったんだけどね。


お父様の仕事が終わってわたしの顔を見て

「シャノン、待たせてすまなかった」

と言いながら、わたしの前の椅子に腰掛けた。

二人っきりになったことってあったかしら?


いつも誰かそばにいた。

二人で向き合ったのは今日が初めてかもしれない。


「お父様、ラウルと離縁しました」


「聞いている。わたしの勝手な思いで結婚させたこと詫びさせて欲しい。シャノンが不幸になるとは思わなかった。いや、気づかないようにしてた。認めれば二人を結婚させられなくなるからな」


「お父様は、そんなにラウルと結婚させたかったのですか?」


「ジョアンが亡くなる前、よくシャノンとラウルは遊んでたんだよ。シャノンはラウルが好きでラウルを見ると離れなかったんだ。別れの時は大泣きして離れたがらなかったんだ」


わたしは覚えていない。



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