シャノン、お父様と話す③
「お父様、あと一つお聞きしたいことがあります。
どうしてお父様は先生のお邸にいらっしゃったんですか?わたしが連れ去られたと気づいて下さったと聞きました」
お父様は言いにくそうにしていた。
ロニーは、お父様を呆れた顔をして見ていた。
(ロニーは何か知っているのかしら?)
コンコン
「入っていいかな?」
先生が訪ねてきた。
「シャノン嬢、体調は変わりないかな?
うん、熱もないし足首の軽い捻挫だけだな」
先生がお父様の顔を見た。
「スティーブ、シャノン嬢と話は出来たのか?」
お父様は先生を見てなんとも言えない顔をしている。
「先生、お父様はどうしてわたしが連れ去られた事がわかったのでしょうか?」
先生は何故か笑い出した。
そして教えてくれた。
◇ ◇ ◇
シャノンがウィリアムに連れ去られたことに気づいたのは偶然というか必然だった。
「スティーブは、シャノン嬢に謝罪してから、何故か我が家に用事がいろいろあってね、顔を出すんだよ」
と言ってもシャノンは直接会うことはなかった。
「スティーブは邸に来ると妻に捕まり毎回説教を受け、僕に捕まると父親とはこうあるべきだと教えてあげていたんだよ。
そして帰る時に、こっそりとシャノン嬢の仕事をする姿を窓越しに見て帰っていたんだよ。
ほんとスティーブはどんな用事があるのか知らないけど邸に来るんだよ。
未だに誰かさんに話しかける勇気もなくてね。
本人曰く見守っているらしいんだけどね。
シャノンが連れ去られた時も、シャノンが隣の診療所へ歩いて行く姿を邸から見守っていたら、突然男がシャノンの口を押さえて引き摺るところを見てしまったらしいんだ。
スティーブは、慌てて僕に
『シャノンが連れ去られた!』
と叫びながら外へ走り去ったんだ。
僕は何があったのかわからなくて驚いたんだけど、慌ててスティーブのあとを追ったんだ。
途中で会った警備隊や使用人にも声をかけて捜索することになったんだよ」
「あの時のスティーブの姿、今だったら笑ってもいいよね?」
先生は思い出し笑いをした。
と、思ったらいつも優しい先生が怖い顔になった。
「実は、ロニーの事件後うちの使用人がウィリアムと繋がっていることが騎士団の調べで分かったんだ。
シャノン嬢がいないことを知っていてマイラがやって来たのも、うちの使用人がウィリアムに知らせていたらしい。
すまなかった。
2名の名前はわかっていたが、ウィリアムがなかなか捕まらないので使用人2人も泳がせていたんだ。
ただ、ウィリアムも巧妙だった。
荷物を積んだ馬車の荷台の底にぶら下がって侵入してきたんだ。
だから荷物チェックした騎士にも気付かれなかった。
ウィリアムは予め打ち合わせていたあまり使われていない物置小屋に隠れていた。
使用人二人は、他の人に怪しまれるといけないので、小屋には物の出し入れの用事を作ってウィリアムに会っていたそうだ。
だからバレることなくウィリアムはうちの邸の物置小屋で過ごしていたんだ。
邸内にまさかウィリアムが侵入していたなんて思っていなくて、こちらの完全なミスだ。
シャノン嬢、危険な目に遭わせて申し訳なかった。
護衛で邸にいたダンはシャノン嬢がいなくなったと聞いてすぐにウィリアムと繋がっている二人を呼び出したんだよ。
ウィリアムが関係していると思ったからね。
二人はビクビクしながら、ウィリアムを匿っていること、ウィリアムが逃げるための準備を隠れてしていることを自白したんだ。
それで無闇矢鱈に探して回っているスティーブに声をかけてウィリアムを匿っている小屋の場所に向かったんだ。