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愛してました、たぶん  作者: たろ
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ロニー!!

追手の人が帰ってきたらしい。


わたしにはまだ説明をしてもらえない。


騎士の人達が集まって話し合いをしている。


その中には団長であるトーマス様もいた。


数時間、イライラしながら待たされて呼ばれた。


「シャノン、こちらで話そうか」


「はい」


トーマス様とダンと部屋に入り椅子に座った。


「ロニーはどうなったのですか?」


「大丈夫だ、順を追って話す」


トーマス様が説明を始めた。


わたしの宝石と母の形見の紋章入りの懐中時計を狙ったのは、ウィリアムの実家の男爵家の侍女をしていたマイラでウィリアムの愛人の一人だった。


マイラはロニーの学生時代の友人だったので疑いもせず家に招き入れたのではないかと言っていた。


ウィリアムは監視が強くてこの国での商売が難しくなってきており資金繰りに苦労していたらしい。


さらに他国に逃げるのにわたしの持っている母の形見がとても有効なんだとか。


わたしは今日初めて知ったのだが、お母様は隣の国の王家のお姫様だったらしい。留学先だったこの国でお父様と出会い恋愛結婚で侯爵家に嫁いできたそうだ。


わたしは全く知らなかった。


結婚の時に持ってきたのが王家の紋章入りの懐中時計だったそうだ。


わたしは寂しい時いつもこの懐中時計のゼンマイを巻いて時計がコチコチと元気に動いている音を聴いてはお母様のことを思い出していた。

あまり覚えていない母の記憶だがいつもこの懐中時計の音を聴かせてもらっていたことは薄っすらと覚えている。


「なぜ母の形見のことを知っているのでしょうか?」

トーマス様が答えてくれた。


「あの懐中時計の王家の紋章は、どんな時でも何があっても隣国へ通してもらえる通行手形なんだ。ウィリアムは国外へ逃亡するつもりなんだろう」


「でもわたしがそんなもの持っているなんてどうして知って……あ、…アイリス!

子どもの頃お母様の形見なのって見せたことがあったわ。

アイリスからそれからは見せてって強請られたの。

欲しがって奪われそうになった時ロイズが駄目だって助けてくれたこともあったわ」



トーマス様が話を続けた。


「アイリスは捕まえている。アイリス自身はその価値を知らない。

ただシャノンの懐中時計の話をウィリアムにした事があったらしい。

隣国の王家の美術品を、美術館で展示開催されている内容の新聞を読んでいたウィリアムの横で、

『その紋章なら見たことがあるわシャノンの懐中時計と一緒よ』

とアイリスが以前話したらしい。

ウィリアムが凄く興味を持っていたみたいだ。


アイリスは自慢気にウィリアムに話したのでよく覚えていたようだ」


「アイリスが、やっぱり……アイリスが捕まったというのは?」


「アイリスは怪我しているロニーを殴っていたんだ。暴行罪で即刻捕まえた」


「え?大丈夫って言ったじゃない!ロニーはロニーはどうなったの?」


「騎士が助け出して、今は伯爵の診療所で治療中だ」


「どうして言ってくれなかったんですか?」


「それは…」

ダンが横から言った。


「ロニーは意識がないんだよ」


「え?うそよ!!!だって、大丈夫って言ったじゃない、自分で歩いていたって言ってたでしょう?」


わたしは大泣きしながら

「いやあー!!!」

と泣き叫んでいた。


「ロニーは、懐中時計を守ろうとして手から離さなかったんだ。それをアイリスが殴る蹴るをしたんだ」


「ロニー、ロニー、時計なんてどうでもよかったのに」


トーマス様がわたしの頭を撫でながら言った。 


「ロニーは大切な形見を何があっても守りたかったんだと思うよ、友人を招き入れて盗られてしまったからね」


トーマス様がアイリスたちのことをさらに話してくれた。


「アイリスとマイラを捕まえている。宝石も時計も取り戻した。ウィリアムたちはまだ捕まったことを知らない。

だから知らずにアイリスたちがいた家に来るはずだ。その時一斉に捕まえる」


「捕まえたってロニーの怪我は治らないわ。あの人たちのことなんかどうでもいいわ!!

宝石なんていらないの!形見なんていらないの!ロニーを元に戻して!」


「ロニーが必死で守った形見をいらないなんて言ったらロニーが救われないぞ!!」


ダンが怒ってわたしの両肩を掴んだ。


ハッとしてわたしは遠くを見ながら

「ロニー、ごめんなさい、ごめんなさいわたし、わたしロニーに酷いこと言ってたんだわ。ロニー…」


先生の方に振り返った。


「先生、ロニーに会いに行かなくっちゃ。ロニーに会いに行くの……お願いします会わせてください」

わたしは必死に頭を下げた。


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