ロニー!
血痕を見て震えた。
もしかしてロニーの血?
この家の荒らされ方は何?
「シャノンしっかりしろ!」
すぐにダンは指笛を鳴らした。
ピ~ッ!
暫くすると人が何人も集まってきた。
「ロニーが攫われたかもしれない!
ここに配置された者で気づいた者はいないか?」
「ここの家にいたロニーさんなら来た客と出掛けました」
「その時おかしな様子はなかったのか?」
「普通に出掛けていたと思います。変わった様子はありませんでした」
「だったらこの部屋の荒らされ方とここにある血痕はなんだ?」
集まった屈強な男の人たちが眉尻を寄せて怪訝な顔をしていた。
「2時間前に女性がこちらの家に訪ねてきましたが、中にいたロニーさんは普通に家に招き入れていました」
「外からは激しい音はしていませんでしたし、二人は仲良く腕を組んで出ていきました」
「ロニーが腕を組んで歩く?そんなはしたないことはしないわ。彼女は令嬢よ」
わたしは信じられない顔で話を聞いていた。
「ですが……」
「誰かロニーの後を追っていった奴はいないのか」
「はい!一人後を追っているはずです」
「玄関を出て左の道へ行きました。途中で馬車に乗るところまでは自分も確認しました」
「ロニーが警戒せずに家に人を入れるなんて……一体誰だったのかしら?そういえば用事があると言ってたのはお客様が来ることだったのかしら…
わたしったら、お買い物に行くのに浮かれて気づかなかったわ」
「何を探していたんだ?」
と、ダンが部屋を見渡していた。
「シャノン、何かなくなったものはないのか?」
「わからないわ、だってここは住み始めてからまだ4ヶ月よ。わたしも邸から持ってきたものなんてたいしてないわ…あ…お母様の形見や宝石……」
わたしは急いで自分の部屋のベッドの下に隠してあった宝石と母の形見である紋章の施された懐中時計を探した。
「ダンないわ、宝石も母の形見の紋章の入った懐中時計もないわ」
「犯人の目的はそれだったのか…バレないようにわざと荒らしたな」
「ロニーはなぜ犯人について行ったんだ?連れて行かれたのか?腕を組んで歩くのもおかしいよな」
「今はまだ追っ手の帰りを待つしかない」
「ロニーがひどい怪我で死んでしまったらどうしよう…ねえ、ダン、私の大切な人なの」
「あー、わかっている。血痕も少しだし歩けた位だから多分死にはしない」
「……信じるしかないわよね、ダンの言うことを…」
◇ ◇ ◇
「シャノンちゃん、大丈夫?」
先生の邸に待機することになった。
「わたしは大丈夫です。それよりもリーサを呼んでください」
急いで他の侍女がリーサを呼びに行ってくれた。
「奥様、御用でしょうか?」
リーサを見つけ急いで彼女のもとへと行った。
「リーサ、リーサ!ロニーが居なくなっちゃったの、怪我をしているみたいなの…ご、ごめんなさい、ごめんなさい…わたしが、わたしがロニーと一緒にいる所為で大変なことになって…」
わたしは泣きそうになりながらも涙を堪えた。
わたしと一緒に暮らした所為でロニーは怪我をしたんだと思う。
こんな時に泣くなんて、狡いわ、絶対駄目。
「シャノン様、お怪我がなくて良かったです。
ロニーお姉様は強い人です。必ずケロッとして帰ってきます。待ちましょう」
ほんとはリーサの方が辛いのにわたしの手を握って微笑んでくれた。
わたしはリーサの我慢して強がっている気持ちを受け入れた。
「ええ、そうよね。ロニーだったら何でもない顔をして戻ってくるわよね」
しばらくして伯爵の邸に追っ手の人が帰って来た。




