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愛してました、たぶん  作者: たろ
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愛を捨てるまで


夜会の次の日、考えすぎて夜明けまで眠れなくて、気づいたらもう昼過ぎになっていた。


トントントン


静かに入ってきたのは侍女のロニーだった。


「奥様、起きられましたか?体調はいかがですか?」


心配そうにロニーが声をかけてきた。


「ごめんなさい、心配をかけて。まだ頭が痛いし怠いの」


「お医者様をお呼びいたします」


慌ててロニーは部屋を出て行った。


わたしはベッドの中でそのまま横になっていた。


ラウルは、朝から騎士団の仕事で王宮に行っているので昼間は留守にしている。


夜帰ってきたらどんな顔をしたらいいのかしら……


ベッドの中でうじうじと考えていたら、主治医のロバート先生がお見えになった。


「先生、ご無沙汰しております」


「久しぶりだね、シャノン嬢」


先生は、実家のロスワート侯爵家で子どもの頃から主治医として診てもらっていた。


「早速だけど体調はどうかな?」


わたしの顔をジッと見つめながら

「顔色が良くないな、食事は摂っているかね?熱は?」

と言って

額に手をやると

「うーん少し熱いな」


(え?怠いと思ったらほんとに体調悪かったの?)


まさかの熱にびっくりしていたら


先生が

「シャノン嬢、何か悩みがあるのかな?」

と、ロニーには聞こえないように小さな声で問いかけてくれた。 


「え?どうしてわかったのですか?」


先生は優しい声で問いかけてくれる。


「シャノン嬢は、子どもの頃から嫌なことがあったり辛いことがあったりすると我慢しすぎて寝込んだり熱を出していただろう。

するといつも僕が診察に呼ばれていたし、君の唇を見たらわかるよ、我慢している時は下唇を噛む癖があるからね」


先生の言葉に思わず涙が出て止まらなかった。


わたしのそばには今ロニーと先生しかいない。

ロニーは、実家の侯爵家から嫁ぐときに一緒について来てくれた5歳年上の優しい姉のような人。


二人になら昨日のことを全て話せる。


わたしがアイリス以外で心から信頼できる二人なのだ。


話し終わるとわたしはホッとしたのかまた眠たくなってきた。


「シャノン嬢、ゆっくり休みなさい、君は体調不良で貧血気味。

なのでしばらくは安静が必要だと診断しておくからラウル様には会わなくて済むように言っておくよ」


「先生、ありがとうございます」



わたしはそれから2週間の間、ラウルが部屋を訪ねて来ても、寝たふりと体調不良で全く会っていなかった。


ロニーはその間に必要なものを少しずつ纏めてくれていた。


彼から贈られたものは全て置いていくつもり。

嫁いでくる時に持ってきた宝石や服をいくつか鞄に入れていつでも出て行けられるようにした。

残りはロニーがみんなにわからないようにわたしの用事で外出と見せかけてある場所に少しずつ運んでくれていた。


夜会からまさか2週間で邸を出ることになるとは思っていなかったけど、準備だけはしていたので助かった。


持ち出せなかったものはもう取りに来るつもりはない。


全てを捨てるのだ。


離縁状も前もって用意はしていたので手間が省けた。


これでもうラウルに会うこともない。

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