ダンが来た!
せっかくのお出掛けだったのに二人に迷惑をかけてしまったわ。
家に帰ってから一人反省会をした。
楽しみで出掛けたはずのわたしが落ち込んでいるので、仕事から帰ってきたロニーが心配して部屋にきた。
「シャノン様、どうされたのですか?」
「ロニー、軽食屋さんの帰りにアイリスを見かけてしまったの…」
「ええ?お嬢様大丈夫でした?」
びっくりしたロニーは久しぶりにわたしのことを
『お嬢様』
と呼んだ。
「あの夜会の時やアイリスとのお茶会の時のことを思い出してしまったの。わたしアイリスが恐いの。
アイリスのこと嫌いというよりも人として信じられないしもう話したくもないわ。
でもそれ以上にあのお茶会の時のアイリスの顔や話し方を思い出すと鳥肌が立つの」
あのお茶会からは出来るだけアイリスのことは思い出さないようにしていた。
とてもショックだったのはもちろんだけどわたしが知っているちょっと我儘だけどいつも明るいアイリスではなかった。
目がギラギラしていて異常だった。
わたしも興奮していたけど、アイリスの話し方は異常だと思った。
今日の軽食屋さんでのアイリスのヒステリックな言動はやはりいつものアイリスらしくないと思った。
そのことをロニーに伝えると
「確かにお茶会ではいつものアイリス様ではありませんでしたよね。我儘だし意地悪なところはあったけどあそこまで酷いことを言う人ではありませんでした」
「やっぱりそう思う?」
「はい、アイリス様は我儘ですが」
「我儘でも意地悪でもあそこまではなかったです。我儘ですがね」
(ロニー……しつこいわ…)
◇ ◇ ◇
次の日の夕方、ダンが初めて我が家に遊びにきた。
トントントン
「誰かしら?」
ロニーが内側から尋ねた。
「はい?どちら様でしょうか?」
「ダンです。ロニー久しぶりだね。
開けてくれるかな?」
ロニーは懐かしそうに声をかけた。
「お久しぶりですね。ダン様。少し大人になられましたね」
「もう俺も19歳だよ。一応大人だしね。ロニーに言わせるとまだ子どもかな?」
ロニーとわたしはクスクス笑い合った。
「今日はちょっと二人に話があったんだ。昨日アイリスに会ったことを父上に話したんだ」
「トーマス様に?」
「ああ、今まで誰もシャノンに伝えるのを渋っていたらしいんだけど、知っていた方がいいと俺は思ったんだ。
分からないところで二人を守ってきたけど、やはりどこでまたアイリスに会うか分からないし知ることで自衛をするに限るしな」
ダンは難しい顔をしていた。
「何かアイリスに関わることなの?」
「…うん、実はアイリスは違法薬物を扱っていたんだ」
「え?」
わたしは思ってもいなかった言葉にびっくりした。
「そ、それは……アイリスが……何故?何故なの?アイリスはどうしてそんなことをしたの?」
「シャノン様、落ち着いてください」
それからアイリスの今までの行動を聞いた。
どうしてアイリスとラウルが浮気をしたのか少し事情が分かった。
もちろんそれでも許せないし許すつもりもない。
時間が経ったからか、ラウルのことを想って泣くこともほとんどなくなった。
(ラウルのこと愛していたのに、愛していたはずなのに……)
「それで、アイリスは今ウィリアムを捕まえるために泳がされている。もちろんシャノンに危害が及ぶかもしれないので二人にも陰で護衛を付けている」
「あ、だから怪我人のリハビリの方が多いの?」
「う、うん?気がついていたのか?」
「騎士の人って腕や足の筋肉のつき方とか目線とか一般の人とは違うわ」
「へぇ、そんなところまで見てたんだ」
「ラウルと3年以上の付き合いだったのよ。騎士の人ってやっぱり目つきが違うと思うわ。
ダンも普段は優しそう……うん?優しくはないか…でも仕事になると目線が……あ、イタタ…」
最後まで話させて貰えず頬を思いっきり両手で引っ張られた。
「もう!ダン!痛いわ!」
「お前、相変わらず失礼な奴だな。俺は女性にはとても優しいんだよ!」
「じゃあどうしてわたしには意地悪なの?」
「ダン様は不器用なのですよ」
横から気の毒そうにダンを見ながらロニーが呟いた。
「意地悪なのって不器用なの?」
(よくわからないわ)
ダンはなんとも言えない顔をしていた。
もう一つ作品を投稿始めました。
【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】
良かったら読んでみてくださいね。