アイリス、吠える!!
ラウル様に会えなくなって3ヶ月が過ぎた。
お父様は当てにならないし、ラウル様の屋敷の門番は頭が悪いみたいでわたしの話の意味がわからないみたい。
何度も教えてあげてるのよ!
『わたしは公爵夫人になる女なの!』
なのにわからないって教育がなってないわ。
近頃なんか、門番の人たちわたしを見たら門を閉めて、中に入ってしまうの。
わたし外で呆然よ!
何一人立ちっぱなしって!
ラウル様が馬車で帰るまでいつも待ってるのよ!
なのに帰ってこないって何?
この前は朝早くから立ってたのにどうして外に出てこないの?
騎士団には行かないの?
一日待ってることにしたから、門の前に我が家の侍従にパラソルとテーブルと椅子を用意してもらってすっかりわたしが門番よ!
いつもだれが出入りしてるか業者さんまで顔を覚えてしまったわ。
これで公爵夫人になっても大丈夫だわ!
ふふふふふ
◇ ◇ ◇
最近兄二人が不機嫌なの。
王城に文官として勤めている二人は、邸に帰るとイライラしている。
「お兄様どうなさったの?」
聞いても返事もしてくれないの。
今までだったら
「可愛いアイリス」と言って優しく微笑んでくれたのに、わたしを見てもムスッとしたままなの。
(せっかく笑顔でお迎えしてあげたのに、わたしの可愛い笑顔がもったいなかったわ)
最近お父様が不機嫌なの。
邸にいることが増えて執務室にいるからお父様にお話しに行ったの。
「お父様、今度のお茶会の新しいドレスを頼みたいの?いいでしょう?」
聞いても返事もしてくれないの。
今までだったら
「可愛いアイリス」と言って優しく微笑んでくれたのに、わたしを見てもムスッとしたままなの。
(せっかく笑顔でお強請りしてあげたのに、わたしの可愛い笑顔がもったいなかったわ)
最近お母様が不機嫌なの。
夜会やお茶会に行かないで邸にいることが増えたので寂しいだろうと思って一緒にアクセサリーでも業者を呼んで買いましょうと言ったのに。
「お父母様、今度のお茶会に新しいアクセサリーが欲しいの?一緒に選びましょう?」
聞いても返事もしてくれないの。
今までだったら
「可愛いアイリス」と言って優しく微笑んでくれたのに、わたしを見てもムスッとしたままなの。
(せっかく笑顔で一緒に選ばせてあげようとしたのに、わたしの可愛い笑顔がもったいなかったわ)
ほんとみんな失礼しちゃうわ!
わたしは公爵夫人になる女なのよ!
家族より身分は高いのよ!
貴方達はわたしに跪くのよ!
◇ ◇ ◇
最近は邸に居ても何にも買ってもらえない。
ラウル様の邸に行っても会ってもらえない。
わたしはみんなに愛されている可愛いアイリスなのに、わたしの笑顔でみんなが癒されているはずなのに、意味がわかんないわ。
退屈なので、今日は街でショッピング。
侍女と従者を連れて、馬車で20分ほど走ったら、お気に入りのお店の前に着いた。
侍女が一緒に降りてお店の中に入った。
ここは今一番人気のあるドレスを売っているマダム・ド・アンジェラ。
人気があるだけに順番待ちなの。
でもわたしは元彼のウィリアムの紹介でいつも待たずに買えるのよ。
ウィリアムは、わたしの先輩で学園の時に初めてお付き合いをした恋人だった人。
別れた今も、ふふふ、お付き合いはあってるわ。
彼との身体の相性は最高なの。
そう。彼が媚薬をくれたのよ!
外国でしか手に入らないのだけど、学園の時の先輩(元彼)がわたしに使ってたのだけど、たまたま見つけて、お願い(脅した)したら譲ってくれたの!
この媚薬は愛を成就する魔法の薬なの。
そのことをウィリアムに伝えたの。
『貴方がくれた薬は愛を成就する魔法の薬なのね。とても素敵な薬だわ!』
そしたらウィリアムに、みんなにも教えてあげたらいいんじゃないかと言われたの。
仲良くなった騎士団のお友達にも紹介したのよ。
みんな喜んで買ってくれたわ。
それからは優しいウィリアムはなんでもお願いを聞いてくれるの。
今日もマダム・ド・アンジェラでウィリアムの名前でドレスを買うつもりよ!
「いらっしゃいませ」
「新作を見せてくださる?」
店員はわたしの顔を見ると眉を顰めた。
「申し訳ございません。ご予約のない方はお受けできません」
「何を言ってるの?いつも予約なしでも買えてたわ」
店員じゃ話にならないわ。
「オーナーを呼んでちようだい!」
「オーナーは席を外しております。また、予約をとってからお越しください」
「予約を取ればいいのね。ウィリアム・エーナイズよ!いつなら取れるの?」
さらに店員は顔を顰めた。
「エーナイズ様のお名前でご予約はお受けかねます。申し訳ございいません」
「今まで買えてたじゃない?」
「申し訳ございません。エーナイズ様のお名前で予約も注文も出来なくなっております」
「何故なの?教えなさい‼︎」
「理由はお伝えできません」
「だったら、ベンジャミン伯爵の名で予約をお願いするわ」
「申し訳ございません、ベンジャミン伯爵の名前でもお受けすることはできません」
「何故?わたしは伯爵令嬢よ!もうすぐ公爵夫人になる女よ!!!」
「申し訳ございませんがお引き取りください」
扉を開けて、追い出されるように外に出された。
(もう!公爵夫人になったらこんな店潰してあげるわ!ふん!!)
◇ ◇ ◇
近くに赤い煉瓦の可愛い建物を見つけた。
噂の美味しい軽食屋さんだわ。
「ねえ気分転換にここでお茶でもして帰りましょう」
と言うと、侍女と従者の二人が困った顔をした。
「申し訳ございませんが、旦那様からお金は持って出ないように言われましたのでお茶をするにしても先立つものが、全く、ございません」
「ハアア!!!」
「ふ・ざ・け・な・い・で!!!」
わたしは叫んだ。