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愛してました、たぶん  作者: たろ
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ロイズの独り言

子どもの頃、父親が診察のたびに連れられて色白の顔色の悪い女の子の邸によく遊びに行った。


母親にも連れられて遊びに行った。


邸の隣にある診療所に入院している時にも侍女達に連れられて遊びに行った。


僕が顔を出すのが楽しみらしく、いつもはにかんだ笑顔が可愛かった。


体が弱くぐったりしている時は、手を握ってあげた。


体調の良い時は一緒に本を読んだりカードゲームをして遊んだ。


ほんとは男の子達と走り回って遊ぶほうが好きだったけど、彼女の嬉しそうな顔を見ると、じっと部屋で過ごすことも楽しく感じた。


それがシャノンだった。


シャノンは母親を早くに亡くしていた。

僕の母とは従姉妹で友人だった。

両親は心配して体の弱い病気がちのシャノンに会いに行っていたのだ。


邸にいる時、どんなにきつそうにしていても入院していてもシャノンを見舞う父親を見たことがなかった。


シャノンはいつも使用人の大人の中で一人で過ごしていた。


シャノンが8歳になった時、侯爵家に地方の男爵家の長女ロニー13歳がやってきた。学園に通いながら見習い侍女として働くためだ。


シャノンは、しっかりしていて優しい姉のようなロニーにすぐに懐いた。


人見知りで、僕とは中々仲良くなれなかったのに、何故かロニーにはすぐに懐いたのだ。


そこはかなり腑に落ちない。


9歳を過ぎた頃少しずつ喘息の発作も減り始めたので、シャノンも学園に通うための準備としてシェリル夫人が教育係になった。


シェリル夫人と母親のノエルと亡くなったシャノンの母親のジョアン様は、学園の頃からの友人だったそうだ。


結婚してからもよく付き合いをしていた

らしい。


シェリル夫人は、シャノンを自宅に招き自分の子ども達と共に勉強をさせていた。


ちなみに、シェリル夫人の子ども達は、一番上が僕たちの5歳上のラウルと同い年のジャック。二番目が僕たちと同い年のダン。三番目が2歳下の女の子のジェシー。


三人とも金髪で、みんな綺麗な顔立ち。


シャノンはやはり女の子のジェシーと仲良くなった。


僕はいつも二人で遊んでいたのにいきなり三人も友達が増えてちょっとやきもちを妬いて、気づけばあまりシャノンと話さなくなっていた。


遊ぶ時は、女の子同士男の子同士になることが増えた。


シャノンとアイリスは、侯爵家の近くに住んでいて同じ歳なので仲良くなったらしいが、僕はアイリスのあの作った笑顔が気持ち悪くて嫌いだったので近寄らないようにしていた。


シャノンと再び仲良くなったのは4年後の王立学園中等部13歳の時だった。


シャノンは、長かった髪がさらに伸びて腰まであり、銀色の髪がとても綺麗だった。

白い肌に黒い瞳が印象的で、みんなが思わず振り返る美しさだった。


シャノンは赤髪の僕をすぐ見つけて声をかけてくれた。


「久しぶり、ロイズ!」


シャノンの嬉しそうな微笑みに僕は4年間もやきもちを妬いて時間を無駄にしたことにかなり後悔してしまった。



僕は中等部で父に勧められて婚約者ができた。


ほんとはシャノンと婚約したかったが、僕の婚約者になるエリアナは伯爵令嬢で、父親が医療開発に携わる人だったので僕の父との仕事の提携などから話があがったので、断ることが出来なかった。


いや、断る事もできた。

僕がシャノンの横にいる自信がなかっただけだ。

頭が良くて美人で人見知りで体が弱いくせに、芯はしっかり持っていて人を惹きつける彼女に幼い自分は気遅れしてしまったのだ。

そして僕の初恋は終わった。



高等部に入りシャノンはラウル・ベルアートと婚約した。


夜会や晩餐会でシャノンをエスコートするラウル・ベルアートを見るたび僕の胸はズキンと痛んだ。


それを隠して、僕はエリアナをエスコートする。


シャノンは今僕の実家で働いている。


会いたい、でも、会えばせっかく奥の奥に仕舞った初恋が出てきそうで怖い。


僕はひたすら大学で勉強をして、忙しさを言い訳に実家から遠ざかっている。



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