アイリスお父様の悩み事
娘のアイリスの可愛い花のような笑顔は、我が家の癒しだった。
妻と結婚して二人の息子とアイリスが生まれた。
伯爵家を継ぐ長男には厳しく育てた。
また、次男も当主になる長男を補佐するべく、教育をしてきたつもりだ。
二人は王城に上がり官僚として働いている優秀な自慢の息子達だ。
一番下のアイリスは妻に似ている。
栗毛色にグリーンの瞳、小柄で目がクリッとしてい可愛らしい顔立ちだ。
アイリスは勉強は苦手だがいつもニコニコしていて、誰とでも仲良くなれる愛嬌と可愛らしさで誰からも愛されていた。
多少の我儘もアイリスの可愛さについ許していた。
◇ ◇ ◇
ある日、娘が突然びっくりする話をしてきた。
「お父様、お母様、わたしラウル様と結婚することになりました」
ラウル様?
ラウル・ベルアート公爵のことか?
彼はスティーブ・ロスワート侯爵の娘シャノンと結婚していたはずだが。
それにアイリスの幼馴染だろう・・・
「アイリス?貴方突然何を言い出すの?」
妻はびっくりして唖然としていた。
「アイリス、結婚とは独身の者とするんだよ。既婚者の彼とは結婚などできる訳がないだろ」
アイリスは頬をプクッと膨らませた。
「お父様そんなことわたしだって知っているわ。シャノンがわたしにラウル様をくださるって言ったのよ!」
は?
くれる?
物じゃないんだぞ!
わたしは頭を抱えた。
「アイリス、あげるとか貰うとかそう言うことではないと思うの。きちんと説明をしてちょうだい」
妻の言葉にアイリスはイライラしたのか怒り出した。
「お母様、きちんとって何?シャノンがラウル様をくれる、それだけですわ!
だって愛しているのはわたし。
ラウル様が一晩中抱いていたいのもわたしなの。
昨日も朝まで一晩中抱いてくださったの。寵愛はわたし一人なのよ」
娘は今更なにを聞いているんだと言わんばかりに妻に話す。
わたしと妻は、アイリスの言葉に絶句した。
そのまま妻は気分が悪いと言って退席してしまった。
「お母様ったらわたしの大事な結婚の話なのに、なぜ喜んでくれないのかしら?」
アイリスは不思議そうに首を傾げた。
わたしは、とにかくアイリスに何故そうなったのか話を聞いた。
アイリス曰く。
『ラウル様はアイリスを愛していてもうすぐシャノンとは別れるから待っていてくれと言った。その話を今日シャノンにしたらくれると言ったのでラウル様を貰うことにした』
わたしは娘にとにかく確認をするまで何もするなと言って部屋を出た。
自室に戻ると妻はソファに蹲り泣いていた。
「アイリスのことはこれから確認をするしばらく待っていてくれ」
「わたしはあの子の育て方を間違ったのかしら……天真爛漫で可愛いアイリス・・・が何故……」
わたしは公爵家へ手紙を出した。
執事にも、確認を取るため公爵家のことを調べるように伝えた。