わたしの愛する人(アイリス視点)③
四阿に残されたわたしはのんびりとお茶をしていた。
手入れされた薔薇園。色とりどりの花たち。
少し歩けば敷地内には木々がありどこまでも綺麗な庭園。
邸は3階建。30人以上いる使用人にそれぞれ部屋を与えても十分すぎる大きな邸。
この邸と大好きなラウルさま、全てをわたしのものにできるなんて夢のようだわ。
わたしは一人うっとりと過ごしていた。
そろそろお暇しようかと思ったら、大きな鞄を持って出て行くシャノンが見えた。
ふふふ。
とうとう出ていったわ。
使用人たちが慌ただしくなってきた。
わたしも立ち上がって帰ることにした。
「ラウル様がもうすぐお帰りになる」
という話し声が聞こえてきた。
わたしはバタバタしている使用人たちのおかげで誰にも咎められず邸へ入っていった。
シャノンの部屋に向かうラウル様を見つけて後を追いかけた。
「シャノン……」
ラウル様の声が聞こえた。
そして執事のセバスからそっと紙を渡されていた。
しばらく呆然と立ち尽くしていたラウル様を後ろから抱きしめた。
「ラウル様、邪魔者は消えましたね。これでずっと一緒にいられますね」
ラウル様は振り返らなかった。
「何故君がここに居るんだ」
ラウル様の声はとても低く冷たく感じた。
どうして?いつも優しいラウル様と違うわ。
「だってシャノンに全て話したら、わたしにラウル様をくれるって言うからラウル様を待ってたの」
わたしはラウル様を抱きしめたまま、
「シャノンに昨日の夜も今朝までラウル様に愛されたって言ったら、わたしのお古だけどどうぞあげるわなんて言うのよ。頭きてシャノンのこと引っ叩いてあげたの」
わたしはいつも愛されている満面の笑みで微笑んだ。
「セバス、こいつを叩き出せ!」
わたしはびっくりしてさらにしがみついた。
「何を言ってるの?いつも何度も何度もわたしを抱いてくれたじゃない。わたしの全てを知ってるのは貴方よ、貴方がどうしたら気持ち良くなるのか興奮するのか全て知ってるのもわたしなの!」
「はあ?
何を言ってるんだ、お前はシャノンを抱けない時の性の捌け口だ!その辺にいる女と一緒だ!ただ穴があるから挿れているだけだ、娼館に行かない時の代わりでしかない」
「『愛してる』って言ったじゃない!」
「言ったんじゃない!お前がシャノンに全て話すと言ったから仕方なく言ったんだ、そのせいでシャノンは出て行ったんだ!」
「シャノンと別れるって言ったじゃない!」
「それもうるさいお前の口を塞ぐためについた嘘だ!」
「ひどい!ひどいわ!愛してるのよ!」
わたしは気が狂ったように泣き叫んだ。
「セバス、邪魔だ!排除しろ!」
わたしを部屋から追い出して、ラウルは急いで外へ出て行った。
わたしは邸から追い出されて迎えの馬車が来るまで呆然と立っていた。