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愛してました、たぶん  作者: たろ
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ベルアート公爵(本人視点)④


団長に止められたが、彼女の居る診療所へこっそりと向かった。


朝から見えない木陰で張り込んでいた。 


入院患者の世話が多いと聞いていたのだがやはりなかなか外には出てこない。


昼頃にやっと表に出て来た。

こっそりとついて行くと数分歩いたところの赤い屋根の小さな家に入って行った。


「ただいま」

と、家の中の誰かに声をかけている。


誰か居るのか?

誰と住んでいるんだ?

こっそり窓から覗くと婚姻の時にシャノンに付いてきた見覚えのある侍女がいた。


二人で住んでいるのか?


どう見ても男の気配はない。


二人で楽しそうに笑い合いながら昼食を食べている。

彼女のあんな溢れる笑顔を見たことはない。いつも不安そうにそっと微笑む姿しか知らない。 

  


◇ ◇ ◇


俺はそのまま診療所に顔を出した。

そこにはシャノンの主治医の先生、ロバート・ヘンドリー伯爵がいた。


俺の顔を見るとすぐに顔を歪めた。


「見つけたか。遅かったな、ベルアート公爵」


「シャノンがお世話になりました。連れて帰ってもよろしいですか?」


「彼女は離縁状を置いて出てきたはずたが?アイリスと言ったかな?彼女と再婚されると聞いたが?」


「それはアイリスの勝手な作り話だ。わたしはシャノンを愛している、離縁などありえない」


「シャノン嬢は離縁したつもりで新しい生活に踏み出した。もう戻ることはないと思うが」


わたしは何としてでも彼女を連れて帰りたかった。


「貴方を誘拐犯として告訴してもいいんですよ?シャノンを返してください」


「わたしは犯罪者かね?いいだろう。シャノン嬢のためなら闘うよ」


「シャノンは貴方にとってただの患者でしょう?どうしてそこまで彼女を庇うんですか?」


「シャノン嬢は妻の従姉妹の娘で妻の親友の娘でもあるんだよ。私たちは生まれた時からシャノンを知っている。

体が弱くて喘息で入退院を繰り返すたびにわたしたち家族は、一人きりのシャノン嬢に寄り添ってきた。大切な家族なんだよ」


(何を言ってるんだ。この人は!)


「わたしにとってもシャノンは大事な妻で家族なんです」


「だったら何故他の女性と浮気をしたんだ?」


「あれは浮気なんかじゃなかった」


「本気だったのか?なお悪いな」


「違う、ただの性欲の捌け口だ」


ロバート伯爵は頭を抱えた。


「君は公爵家当主、第二騎士団の副隊長だろう?恥ずかしくないのか?」


「シャノンのことが大切過ぎて激しく抱くことができなかったんだ!だから他の女で性欲を満たしていた」


「完全に歪んだ愛情だな」


「シャノンを愛しているんだ。別れるなんて出来ない」


「シャノン嬢はアイリスさんから君との身体の関係の話を聞いてしまってるんだよ。お人形さんは面白くなくて抱けないのだったか?アイリスさんを愛しているんだろ?


夜会でシャノン嬢は聞いていたよ、二人の抱き合いながらキスする姿も見てしまった。もうすぐ別れるから待っててほしいと言った言葉も」


俺はそれを言われて固まってしまった。

今更言い訳なんて出来ない。


「違うんです。アイリスからシャノンに全てを話すと言われて仕方なく愛してると言っただけだ。

キスもうるさい口を塞ぐために仕方なくしただけだ。アイリスを抱いたのだってただの性欲の捌け口で愛なんてどこにもなかった。

愛がなければ浮気ではない!シャノンのために全てしたんだ!」


「ふざけるな!シャノンのため?己のためだろう!自分の欲のためにしたことをシャノン嬢のせいにするな!お前は騎士だろう!」


……そうだ、自分の性欲を満たすために適当な女を抱いた。シャノンに激しいセックスを求めて嫌われるのが怖くて他の女を抱いたんだ。


俺は愕然とした。

自分は正しい事をしていると思い込みたかったんだ。

シャノンに後ろ暗いところがあるから彼女の顔をまともに見られなくて邸に帰るのも遠のいていたんだ。

自分の歪んだ気持ちをその辺の女で紛らわせていたんだ。


「お願いです。別れるとしても一度シャノンと話をさせて欲しい。お願いします」


俺は必死で頭を下げた。

公爵としてのプライドなんて要らない。

ただもう一度シャノンの黒いあの綺麗な瞳に自分を映して欲しかった。


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