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46勇者パーティの末路(ケース2 魔導士ルビー)

「お、お父さん、わ、私騙されてたの、本当なの!」


「わかってるよ。ルビーは騙されただけなんだ。早く勇者パーティのことは忘れるんだ」


「そうよ。ルビーは騙されただけよ。気を強く持って生きるのよ」


「……お父さん、お母さん」


いつも優しいお父さんとお母さん、だけど何かが引っかかる。


何かが以前と違うような気がした。


普段は優しいお父さんとお母さん……でも二人共厳しい人だった。


駄目なことは駄目と厳しく躾ける二人だった。


だから優しいだけの今の二人がどこか怖い……。


突然、家の外で大声が聞こえる。


「母さん、どうせまたヘイトスピーチだ……防音の魔法をかけておくれ」


昨日から家の前で私を罵る人、いや勇者パーティを断罪する者が後をたたない。


ガチャン


今度は窓に向かって石か何かが放り込まれた。


昨日からずっとこんな感じだ。


『私だって、勇者アーサーに魅了された上、殺されそうになったのに……なのに何で?』


もちろん、豪奢な祝賀会に参加したのも、街の有力者から金や宝石を巻きあげたのは魅了の魔法とは関係ない。でも、そんなのみんな勇者アーサーの魅了のせいにした筈だ。


だが、私がしたことを……誰かが売ったんだろう。簡単に人を信じて、簡単に人を陥れて、それでいて自分達は善人の側にいるつもりなんだろう。


新聞に書かれてしまった。ゴシップ系の低俗な新聞ごときに。


全く度し難い連中だ。


ガチャン


また家に石を投げ込まれる。


今をときめく英雄レオを陥れた女。そして勇者パーティの悪行、その中の悪女として、その住む場所も名前も全部世間様に知られてしまった。


エミリアは五体満足に蘇生できなかったらしい。私も右目と右手が欠損している。


勇者アーサーが五体満足で蘇生されたことが恨めしい。全部、あいつのせいなのに!


幸い、私は魅了の被害者だったし、悪事の全ては勇者アーサーの魅了の魔法のせいということで、処罰はなかった。……それだけが唯一の救い。


「もう、嫌! こんなところ耐えられない!」


突然叫ぶ母親。


「母さん、心配するな、来週には新しい家へ引っ越す、だから」


「お父さん、引っ越しするの?」


私は思わず喜色を見せて聞いた。こんなところに居たら精神がおかしくなる。


私は新天地に行けるかと思うと希望が持てた。


流石に引っ越した先でひっそり暮らせばこんなことにならない。


そもそも人の心など熱しやすく冷めやすい。ほんの数ヶ月も経てば皆忘れる。


だから引っ越しすれば全てが解決する。


「ルビー、私は辞令を受け取って辺境の地に転勤することになった。だから母さんと辺境に赴任する」


「へ、辺境なのね? わ、私、辺境でも大丈夫だから」


「……ルビー……辺境へは母さんだけしか連れて行けない」


「な、何で? 何で私は駄目なの?」


お父さんから告げられた言葉に思わず声を荒げる。


「私達も悩んだ末のことなんだ」


「ふざけんなぁ! ふざけんな、ふざけんなぁ!」


何で、何で私だけ!


「お前はこの家で暮らすんだ。月々の生活費は仕送りする、だから」


「ふざけんななぁ!!! 何で私だけぇ……「五月蝿い!」」


ビクっと思わず震える。お母さんがこんな荒げた声を出したことなんてない。


「全部お前のせいなんだから! お父さんが左遷になるのも、将来を閉ざされたのもみんなお前のせいだから! お父さんの勤め先は教会なのよ! お前のおかげでお父さんは!」


「……止めなさい。母さん」


そんな、違う、私のせいじゃない。……私達が勇者パーティで聖女アイリスを見殺しにしたから?


嘘でしょ? そんなの悪いのは私じゃない、勇者アーサーだ!


「お前さえいなかったらぁ!」


「母さん、止めなさい!」


「止めないわよ。コイツのせいで、コイツのせいでぇ!」


お父さんが止めてくれたが、お母さんは私に……暴力を振るおうと?


……嘘……よね?


いつも優しいお母さんが私を殴ろうとした?


「ルビー、お母さんは精神的に参ってるんだ。だから辺境に連れて行く。しばらくお前と一緒に暮らせる状態じゃないんだ」


「……そ、そんな」


そしてお母さんとお父さんは引っ越して行った。


私は誰もいない家で一人ひっそりと息を潜めている。


誰かに見つからないように……。


ほとぼりが覚めるまで……。


外? そんなの行ける訳ないじゃない?


私は気がつくと一人で笑い続けていた……誰もいない家の中で。

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