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41支援職の姉、王宮を出奔する

ところ変わってレオの母国サンテマリノ王国の王宮。国王ジョージ2世は帝国の使者からの知らせに、戦友であり、自身の奴隷でもある剣聖アイザックの部屋を訪れていた。


「アイザック! アイザックはおらぬか! お主の意見を聞きたい!」


「国王陛下。アイザック様は昨夜、ヴァルファラに召されました」


「何だと? そんな馬鹿な! 昨日の昼、会ったばかりじゃぞ!」


王の来訪に対応したのは、アイザックのおつきの女奴隷フレイヤ、レオの実の姉である。


「アイザック様は昨夜、心不全でお亡くなりになりました」


「バカを言え! 医者でもない貴様にそんなことがわかる訳がなかろう!」


何故か自身を見る目が普段以上に冷たいことに王は違和感を覚えるが、国王の言っていることの方が正論である。心不全で亡くなってもおかしくない年齢ではあるが、医者でもない、この女奴隷フレイヤにそれが解る筈がない。


アイザックが倒れたのなら、至急王宮の医師を呼び出し、最善を尽くし、亡くなったのなら、その時に医師から病名が告げられるだろう。それなのに、唐突のこの女奴隷はアイザックは心不全で亡くなったと告げる、不自然極まる。


「国王陛下、確かに私は医師ではございません。しかし、生前のアイザック様より昨夜亡くなること、死因は心不全であることを伺っておりました」


「バカな。ならば、なら何故アイザックは昨日それをワシに告げなんだのじゃ? わかっておれば、医師を総動員して、死を回避できた筈じゃ! ワシになんの相談もなく、逝く筈がない!」


「では、国王陛下、あなたがアイザック様に危急に会いたい理由を言いましょうか? それなら納得がいくのではないでしょうか?」


王はゴクリと唾をのみ込んだ。この女奴隷が錯乱した訳でも世迷いごとを言っている訳ではないと、察することができたからだ。


自身の奴隷であり、親友であり、かつて勇者として世界の災害級の魔物を討伐して来た時の戦友として、絶大な信頼を寄せていたアイザック。そして、剣聖としての呼び声高い、彼の本当の才能は『不確実な予言者』であることを王は知っていた。


つまり、何らかな理由でアイザックは予言を行い、故あって、密かにヴルファラに逝った。


何故だ?


「国王陛下。陛下がアイザック様に相談したかったのは、魔王復活の件でござましょう? 違いますか?」


「うっ!?」


自身以外、誰も知らない筈の機密情報。だが、それをこの女奴隷は知っている。


あり得ない。唯一あり得るとしたら……それはアイザックの予言のスキルで未来を見て、それをこの女奴隷に託した……それ以外に考える事ができない。


「貴様、あの歴代最強の符術士、レオの姉か? 名をなんと言う?」


「フレイヤと申します」


王は一瞬悲しそうな顔をするが、続けて聞いた。


「アイザックは何を見たのだ? それはワシには言えぬことだったのか?」


「はい。王に申し上げる訳にはいかないことでした」


「それはなぜじゃ? ワシはアイザックの親友。奴には全てを与えた。何不自由ない生活を与えた。奴隷階級のままとは言え、そこらの貴族より遥かに良い暮らしをしておった筈じゃ」


王は、アイザックが何故自分を頼ってくれなかったのか? どうして何も相談してくれなかったのかが、悲しかった。


「陛下。何不自由のない生活? 本当にそう思っておられたのですか?」


「何が不満なのだ? わしは自由以外全て与えた。食事も衣服も、金も、一体どこに不自由など!」


「陛下、アイザック様は本体、身請け料を支払い、平民となる権利を有しておられました……しかし、あなたはアイザック様を奴隷から解放しなかった。何不自由のない生活? 一番肝心な自由がないではないですか?」


「そ、それはやむをえなかったのじゃ! アイザックが本当の剣聖の才能を持たず、ハズレスキルの不確実な予言者の才能であったことを国民に知られる訳にはいかない。それに何より、平民になれば、今の貴族のような生活はできぬであろうが!」


王は肩で息を切っていた。アイザックへの待遇は考える限りのものを与えた。親友として、最大限のものを与えた。なのに? 一体何が不満だと言うのだ?


「陛下……人にとって、もっとも欲しいものは自由なのです。どんなに豪奢な食事も衣服も、娯楽も……アイザック様には味気ないものでした。あなたはアイザック様に一番大切なことを与えなかった。あなたにとって、アイザック様は親友と思えたのもしれません。しかし、アイザック様はそんなことは微塵にも思えませんでした、何故なら……アイザック様はあなたの奴隷なのです。対等であるはずがございません。親友と思っていたのは陛下だけです。アイザック様にとって、陛下は主人……それ以上でもそれ以下でもございません」


王は膝をおり、親友と信じていた男の本音を知る。


「ワシは……ワシはアイザックを友と思っていた。それが全てまやかしだったのか?」


「奴隷と主人に友などという関係は存在しません。あなたはアイザック様のことを何もわかっていなかったのです。しかし、アイザック様もあなたに気を許していたところもあったようです。だから、アイザック様はこれから起きる未来を陛下に伝えるように私に命じました」


「一体何が起こるのじゃ? 魔王復活と関係があるのか? 故にアイザックは自身の命を自ら放棄したのか?」


女奴隷、フレイヤは王に話した。


「もちろん、魔王復活は関係がございます。しかし、それだけではございません。私達奴隷にとって、魔王復活より大事なこと……それはハズレスキルだからと言って、奴隷とされること。私達奴隷の無念……陛下は覚えておいでですか? かつて、王城に賊が忍び込んだ責任をたった一人の女奴隷の責任として、処刑したことを……彼女は私の友人でした。あれ以来、全ての奴隷は主人に信頼を寄せることができなくなりました。実際、貴族達は奴隷を剣の試し斬りに使ったり、魔法の威力を確かめる為に、無造作に何人もの奴隷が命を落としています」


「あれは……仕方がなかったのじゃ! 誰も責任を取らないことなど許さる筈がない!」


女奴隷、フレイヤはフルフルと震え、声を絞りだした。大声で言った。


「なら、何故本当に責任がある貴族を罰しなかったのですか? 何の力も持たない、奴隷一人が罪を背負って……処刑された……あの子はリリーは私の親友だったのに!」


「す、すまぬ。ワシも胸が傷んだのじゃ。だが、あの時はああするしか……」


「納得できる奴隷がいるとでも思われるのですか? そして、アイザック様の予言によれば、この国も世界も大きく変わります。奴隷は開放され、この国は滅びます。そして、魔王は奴隷である私の弟、レオが倒します。私達奴隷の悲願! それは自由! それがもうじき実現するのです。この国の滅亡と引き換えに!」


放心する王を前に女奴隷フレイヤは、こう言い残してその場を去った。


「私はこの王宮から逃亡します。追っても無駄です。何故なら、私はじき魔族によって殺されます。私の死は無駄になりません。弟、レオに復讐の心を刻むことができるからです。この国の貴族も、王族も終わりです。しかし、弟は大切な人達を失うことで、魔族への復讐心から、魔王討伐に成功します。ではさようなら。せいぜい、あなたが弟に処刑されないように祈っております」


そう言い残すとレオの姉は王宮を出奔した。

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