21支援職はランク昇格試験を受ける4
俺はなんかやらかしたような気がしたが、気持ちを切り替えて、ラッキーラビットをアピールすることにした。
人間、美味しいものを食べると幸せになる。
アリスなんて、どんなに怒っても今日の夕食の献立の話をするとたちまち涎を垂らして全部忘れてくれる。
美味しいご飯は万人を幸せにする魔法なのだ。
「あった、あったぞ。レオの言う通り、ラッキーラビットだぞ!」
アリスは俺が仕留めたラビットを持ち上げて、試験官の方に見せる。
「レオ君てね。剣術試験の時もね、信じられなく非常識な人だとは思ったけどね……」
シャーロットさんが何故かため息を吐きながら、俺のこと非常識だと言う。
駄目か? 駄目なのか?
何が悪いのかはわからんけど、剣術と同じなら、低評価ということか?
俺はガックリとするが、ここはせめて、ラビットの肉で少しでも気を引こうとした。
「ラビットの肉はギルドに差し上げます。皆さんで召し上がってください!」
「えっ!? いいの? レオ君? ラッキーラビットだよ?」
「構いません。また仕留めればいいだけですから、簡単ですし」
「ま、また仕留めるんだね……簡単なんだね、はあ」
何故か、シャーロットさんが呆れたような声で言う。
「ねえ。レオ、私にも捕ってよ、レオに私の手料理を作ってあげるぞ!」
「本当? なら、試験の後で捕ってくるよ」
アリスは極上の笑顔で俺の顔を見た。
アリスのご機嫌大事。その積み重ねが、お給金アップに繋がる。
そんな感じで、俺が3km先のラッキーラビットを狙って魔法を放ったことは証明されたものの、試験官のカスさんはブツブツと何かを呟くばかりで何も言わない。
シャーロットさんまでハイライトの消えた目で俺を見ている。
終わった。
どうも、俺は試験に落ちたようだ。
何かを間違えたらしい。
シャーロットさんの呆れた表情や、不機嫌な試験官のカスさんの呟きから、俺はCランク冒険者への扉を閉ざされたと感じた。
その後、筆記試験があったが、俺はどうせ落ちるんだしと気もそぞろで、筆記試験を受けて、この日を終えた。
その後ラッキーラビットを1匹捕らえて、アリスにプレゼントしたのは言うまでも無い。
ギルド長side
「あの少年は一体、何者なんだ?」
俺は規格外のFランク冒険者、レオ君の試験を終わり、驚きを隠せないものの、未だやることがあった。
少年が錬成したという例の剣の鑑定結果を知る必要があった。
もちろん、クズ・マヌーケの剣の鑑定もだ。このギルドの最高位の鑑定家に鑑定を依頼した。
「ミスリルの剣を何も無いところから作るとかあり得ん」
あの剣には何かある。
それにあの少年はちょっと剣を強化するとか言っていた。
一体、何をしたんだ?
その時!
「ギ、ギルド長! こ、この二振りの剣を一体何処で手に入れたんですか?」
声がした方に目を向けると、剣の鑑定を依頼したジョブ『万能鑑定家』の鑑定のスキル持ちの職員が慌てたような顔で詰め寄って来た。
「やっぱり、唯の剣ではなかったか?」
「唯の剣どころか、幻の古代の日の国の刀の技法で作られたミスリルの剣に、伝説のアダマンタイトとオリハルコンで作られた聖剣並みの国宝級の剣です! こんなの売ることも出来ない。国王にでも献上するか、博物館に寄贈するしかないです!!」
「な、なんだとぉ!!」
俺はあまりのことに目眩がした。
確かに……あの少年は試験官クズの剣をアダマンタイトとオリハルコンの剣に錬成するとか言っていた。
普通に考えると、明らかに頭おかしい少年だ。
だが、彼の言っていたことは本当だった。
そして、俺はもっと信じられない事実を思い出した。
少年が凄まじい能力はアダマンタイトの聖剣の方じゃない。
彼は何も無いところからミスリルの剣を作った。そう、あまりの非常識ぶりに気が動転していたが……何もないところから物質を錬成するのは等価法則に反する。
現代の錬金術の概念を根底から覆した事実。
聖剣は確かに凄まじいが、この国最高の錬金術士や付与魔法士達が集まれば10年も試行錯誤すれば作成可能だ。
そう、あの頭のおかしいとしか思えない少年は信じられないことに何も無いところからミスリルの剣を作ったのだ。歴史に残る技を朝飯前の感覚でやったのだ。
あれ? 聖剣の方もこの国の最高峰の魔法使いが10年も試行錯誤すれば……あの少年は数十秒で思いつき半分で作ったような……。
あの少年が頭おかしいのは間違いない。
俺は思い至ると、思わずフラフラして自分の椅子にへたり込んでしまった。
自分でも無理も無いと思う。
だが。鑑定家は更に続けてこう言った。
「材質や製法も脅威なんですが、聖剣の方はダマスカス鋼のコーティングの魔法陣から強化の付与魔法に、身体能力向上の付与魔法に、極めつけは、雷の強力な付与魔法がかけられていました」
「そ、それはまさか……?」
「そのまさかです。あの剣は……伝説の雷神剣です」
俺は最後まで鑑定家の言うことを聞き取ることが出来なかった。
あまりのことに腰が抜けて椅子からずり落ちてしまった。
もう、ヤダあの子。怖すぎるでち。
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