ストーカーの女の子がめちゃくちゃタイプだったので容認してしまった
こんな女の子は世の中には存在しません……(泣)
俺は山本遥輝平凡な高校三年生だ。
そんなオレは最近悩まされていることがある。それが【ストーカー】だ。
確信があるわけではないが9.9割はストーカー被害に遭っていると言っても過言ではない。
毎朝学校に行くため玄関を出ると視線を感じるし、それが校門を通るまでついてくる。それになによりも、俺の下足箱の中に「あなたのことが好きでストーカーしてます」と書いた手紙まで入っていたぐらいだ。これで確信しないのは冗談の可能性を考慮しているから。
普通に怖い。なんの特徴もない、漫画とかで端っこに描かれるような俺がストーカー被害なんてバカみたいな話あるわけない……って思ってたけど――物好きな人も世の中にはいるんだと分からせられた。
一日の活動を終えた俺が校門を出ると当たり前のように視線が張り付く。
それから家に帰るまで俺は後ろを振り向かなかった。
でもさすがにもう怖い思いはしたくないと思い、俺はその人と会う必要があると判断した。おそらく同じ学校の人だろうから殺されること……ないよな……。
次の日俺は下足箱に来るだろうストーカーに対して「ストーカーを辞めてください。無理なら話し合いのために家に来てください」と書いた手紙を読んでもらうめに下足箱に置いた。
――家についた俺はストーカーが手ぶらで来てくれることを願い、ピンポンと鳴るのを待った。
ピーンポーン
「なった!」
ビクッとしたがこれは俺自身がやったことだと言い聞かせ覚悟を決めた。
「これで俺が刺されでもしたら笑えないぞ……」
ビビりながらもドアアイを覗くと、そこにはうちの学校の女神、嵐山葉月がいた。
てっきりストーカーが訪問してきたと思っていた俺は違う意味で驚き、すぐにドアを開けた。
「なんで嵐山さんがここに?」
嵐山さんはおとなしい性格だが、仲のいい友達の前では元気に話している人だ。男子で元気のいい嵐山さんと話せる人はいない。だからみんなその一人目となりたいがために話しかけに行っているが、言わずもがなそんな願いは叶わない。
もちろん俺も狙っている。なぜって?そりゃドタイプだからぁ!
俺自身、静かなのもあるが趣味とかを共有できそうだし、スタイルも完璧だし、可愛いしで文句なしなのだ。
でもそんな彼女がなぜここに……?
俺の質問にも無言の嵐山さんに俺はどうすればいいかわからなかった。しかし――
「わ、私がそ、そのストーカー……です」
俺はこの発言によって、今この身をどうすればいいか分からなかった。
「嵐山さん……それ本気で言ってるの?」
「は、はい!私、遥輝くんのことが好きで好きでたまらないんです!」
大きな声で言われることで俺は驚きを隠せない。
「お、俺が好きって、いきなりだけどなんで?」
「私、私目的で近づいてくる人が好きじゃないんです、私は静かが好きだから。でも遥輝くんは私に仲良くなる目的で近づいてこないし、何より私と同じ静かな人で、もしかしたら趣味とか共有できそうだなって思って……」
俺も全く同じこと考えてたわ。こんなことあるんだな。
なんて思いながらも俺は冷静だった。
「でも、そんな理由でストーカーする?」
「そうなりますよね……でも私、なんでか遥輝くんのことになるとどうしようもなくなっちゃって……つい」
特殊性癖というやつだろうか、分からないが。
「ホントにごめんなさい、ストーカーになってしまって」
「いや、嵐山さんって知ってから俺は全然気にしてないよ」
好きな人がストーカーになる。そんなこと俺には別に嫌ではなかった。
「え?それじゃトイレとかお風呂場とかにつけてるカメラのことも気にしてませんか?」
「はぁ!?そんなとこにつけてんの?!いつの間に!?」
さすがにこれは嫌だったが。
「遥輝くんが寝てるときにこっそり侵入させてもらってですね……」
確認しに行くとまじでついてた。普通ならそんなことされたら背筋が凍って警察への一本道だぞ……。
「他にカメラは?」
「いえ、ありません」
「そう」
「警察とか連れていきますか?」
「んーいや、しないかな」
嵐山さんの顔は驚いていて、俺に、なんで通報しないのという顔を向けていた。
「通報しないから一つお願いしていいかな?」
「は、はい!遥輝くんのお願いなら!!」
いや、ここで変なお願いとかしたらどうするよ。
「俺一人暮らしじゃん?嵐山さんも一人暮らしって聞いた事あるし。だから一緒に住まない?」
「え?一緒にす、住む?」
「いやー普通なら通報するけど、嵐山さんなのこと俺も好きだからさ」
「私のことが好きぃぃ!!?」
ここに来て最大音量だった。紛れもない近所迷惑というやつだ。
「ほ、ほ、ホントに住んでいいんですか?!」
鼻の穴からドライヤーなみの風を吹かせながら興奮状態を隠せない嵐山さん。
「まぁ住まないと警察行きだけどね?」
つまり、選択肢はないということ。
「住みます!!」
「よし!それなら警察行かなくて済むね」
「へええー」
今にも溶けそうな顔をしている。これが毎日拝めるのは最高以外のなにものでもないな。
それから一緒に住むことになった俺たちはお互い幸せを堪能することになった。
とさ。




