博多商人死す~後編~
第六話
――話は國宗が護衛とともに屋敷を出た時に戻る。
國宗「では行ってくる。留守を頼むぞ。」
商人「はい。いってきんしゃい。吉報ば期待しとー。」
國宗「うむ。」
國宗「お前たち、最近九州の方で不穏な動きがあるという情報もある。くれぐれも油断しないでくだされ!」
護衛A「大丈夫ですとも!我ら一同心を合わせて必ずや國宗様をお守りします。」
國宗「頼もしいな。ではこれより蜷尻をてご・・・征伐すべく屋敷に向かう。よろしくお願いいたす。」
護衛B「はい!ではまいりましょう(なんか今変なこと言いかけたような気がするが気のせいだよな?)」
こうして、國宗一行は蜷尻をお・・・手籠めにすべく蜷尻家へ向かうのだった。
國宗一行を乗せた馬は順調に目的地へ向かっていく。
護衛B「それにしても今日もいい天気ですね。」
國宗「うむ!秋晴れの良い日和だ。」
護衛A「私もいつかこの空のように広い心を持ってもっと寛容になりたいものです。」
國宗「ふふ。きっとなれるであろう。その暁には是非我が家に来てくれると嬉しいぞ。」
護衛A「勿論ですよ!俺を嫁さんにしてくださいね♥」
國宗「ああ、いいとも!」
護衛A「やったぜ。」
護衛B「???」
とそんなことを話してるうちに蜷尻の屋敷に着いたようだ。
國宗「着いたようじゃな。では行くとするか。」
護衛A・B「「はい!」」
護衛A「ところで蜷尻殿とはどのような方なのでしょうかね?(國宗様に色目を使う雌豚は許さねえ)」
國宗「そうだのう・・・。まあ噂通りであればかなり好戦的な野蛮人だと聞いているぞ。」
護衛B「そうですか・・・。しかしそのような野獣を果たして我々だけで討伐出来ますでしょうか?」
國宗「確かに我ら3人だけでは難しいかもしれんな。だが、直ぐに45人の屈強な猛者も応援に駆けつけてくる。此度は蜷尻の捕縛が完了するまでわしは諦めぬ。絶対にだ!!」
護衛B「そこまで決意が固いのならば、もはや何も言うことはありません。参りましょう。」
國宗達は門番の下へやってきた。
國宗「お主ら!!蜷尻はおるかぁ!!出会えぃ!!!」
護衛A・B「「出てこなければ殺す!!」」
すると屋敷の中から1人の女性が出てきた。
女性「なんねしゃあしかねぇ。一体何事なんね!?」
國宗「おお!これはこれは!貴女は蜷尻殿の者でしょうか?私は國宗と言い申す。今日はこの屋敷の主である蜷尻殿に会いに来たのだ。出てきてはくれぬかな?」
女性「ふん!強右衛門ん知り合いかい?今あいつは留守にしとーけん、用があるなら家にあがって待っていな!」
國宗「おお、かたじけない。では参ろうぞ。」
護衛A「はい。失礼しますよっと。(オイオイ、家の防犯ガバガバじゃねーか!勝ったな(確信))」
護衛B「失礼しまーす。(やけにあっさり入らせたな???)」
護衛たちは屋敷の中に入っていく。
屋敷は簡素な城門と城壁に屋敷、そして何故か家の内側に堀(敵の侵入を防ぐ穴、塹壕の一種。)が掘られていた。
本来堀と言うのは侵入を防ぐために外側に掘るのだが、彼らは内側に庭に堀があることに違和感を覚えつつも、
國宗「それにしても、蜷尻殿は立派なお屋敷をお持ちだ。」
護衛A「ホントにおっきいですねぇ~。」
護衛B「本当だなぁ~。」
と感心していた。しかしその時、家の城門が急に締まり、
護衛A「あっ!!!」
國宗「しまった!?罠だったのか!?」
護衛B「おいお前たち!どうしたんだ!なぜ門を閉めた!」
護衛たちが慌てていると、國宗達の目の前に続々と蜷尻・尾脇の武士が集結していた。
更に彼らが驚いたのは屋敷と内堀からワラワラと兵が出てきたことである。
実はこの堀には隠し扉があり、屋敷と地下で繋がっていたのである。
國宗「なっ!?蜷尻殿は何処だ!?」
蜷尻強右衛門の姿を探すも見つからない。
すると國宗達が驚きの声をあげる。
尾脇「残念やったね。國宗殿にそん方等。こん屋敷は敵から防衛するんじゃなく、わじゃと中に招き入れて抹殺する、族滅専用ん館なんばい。」
國宗達「「「なん・・・だと・・・?」」」
驚愕する國宗達の前に次々と現れる蜷尻・尾脇の武士達。
尾脇「國宗しゃん。しゃっちが来てくれてありがとうごじゃいます。ばってんうち、貴方んごたー力ずくで解決するような人がばり好かんばい!」
國宗「くっ!我々はただ話し合いに来ただけなのだ!どうか矛を収めて欲しい!」
尾脇「嘘をついても駄目ばい。あんた等、商人と結託しておいと蜷尻どん族滅するのだろう?絶対に許せんとよ!」
國宗「そんなことはせぬ!」
尾脇「もう証拠はつかんどーばい。おい、そろそろ始めようか。」
すると屋敷から1人の女性が歩いてきた。
女性「はい。兄上様。うち達は準備万端ばい。いつでんいくるばい。」
護衛A「ああああ!?あの女は確か・・・!?」
護衛B「お・・・思い出した!!門を開けた女だ!!!」
そう彼女は雀右衛門の妹であり、彼らに族滅専用館への片道切符を渡したのだった。
國宗「・・・ふっふっふ、もはやこれまで・・・と言いたいところだが、我々にも奥の手があるのだ!くらええええぇい!」
國宗が叫ぶと自分の右眼の眼球から小瓶を取り出したのだった。
この中にはさる国で作られた強力な媚薬が入っており、三日三晩は盛り狂うほどの劇薬であった。
國宗「貴公らは盛って踊り狂ってもらうぞ!」
しかし、その瞬間!國宗に一筋の閃光が放たれた!
蜷尻「チィィィィィィィィエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェストォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」
ズブ!!!!ブシャァア!!! ブワッッッッッ!!ドサッ
國宗は屋敷屋上から飛び降りチェストした蜷尻に、たった一瞬で肉塊へと変わった。
死体は頭から睾丸まで真っ二つに両断され、開いた個所から血と内臓が飛び出ていた。
護衛A「うわあああああああ、國宗様あああああ(泣)」
護衛B「ヒエッ!?!?ウーン(気絶)」
尾脇「なっなななんね!?何が起きたとね!?」
國宗を殺した蜷尻は皆の前に立つ。そして一言こう呟いた。
蜷尻「尾脇どん、破廉恥小僧がないか喋っとったぺでチェストしたが、大丈夫か?」
尾脇「おお、蜷尻様!なんちゅうか・・・まあチェストしたんやけん気にしぇんでよし!」
國宗の一瞬の死によって動揺していた尾脇だったが、蜷尻の登場により何とか持ち直せたようだ。
蜷尻「そいでこれからどうすっ?」
尾脇「とりあえず、残りのけつらを始末して後詰め狩りに行きもんそ。」
こうして黒羽黒組の國宗とその一派は全て殺され、蜷尻・尾脇達の勝利に終わった。
後日、黒羽黒組全員の首をかき集めて商人に手渡した。
商人「ましゃか黒羽黒組が族滅しゃるーとは・・・」
尾脇「刺客ば送って借金回収に向かうとは、なんと不逞な輩や!本来やったら幕府によって一族族滅だぞ!今回は借金帳消しで見逃すばってん、次何かあったらあんたたちがこげんお姿になるばい?」
商人「そ・・そりゃありがたか。もし我々が襲われたときは頼るかもしれんけん、そん時は是非ともお願いしますぞ。」
蜷尻「おう、考えてやるばい」
商人「ああ、これで我々は大損や・・・よよよ・・・(泣)」
――屋敷に戻る道中で
蜷尻「いやー何とかなった!これも雀右衛門んおかげだ!」
尾脇「いえいえ、蜷尻様んお陰でうちん借金も無うなったけん感謝でごじゃいます。」
蜷尻「ほんとか?それは良かったばい!ではこれから屋敷で一緒に飲もうじゃらせんか!」
尾脇「そうばいな!今日は朝日が昇るまでお供しよう!」
なんとか借金を返済?した蜷尻達。
季節は冬を迎え、来る新年を迎えようとしていた。
――
完
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