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おやすみヒプノシス  作者: 0024
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06.ギルド『居眠りドラゴン』結成

「さっすがドラゴン討伐の報酬! B級クエストとは桁が一つ違うわね、桁が!!」


「そ、そうだね……僕もびっくりだよ……」


 ギルドから頂けた報酬額は、それこそこの報酬だけで半年は働かなくていいな、というくらいのものだった。本来ならドラゴン退治なんて中級冒険者が二人でこなすものじゃない。

 上級冒険者ならいざ知らず、僕らはまだまだ中級冒険者になりたての身だ。

 無敵催眠(おやすみヒプノシス)がなければ、その中級冒険者になるのもまだ少し早い、というぐらいの実力なんだから。


「うふふ、どうするどうする? 折角だし、このまま二人だけのギルド申請しちゃおうか?」

「ああ、ギルド作ると特典色々あるしね……」


 僕たちは今はまだ『野良冒険者二人』という扱いである。パーティこそ結成したが、冒険者ギルドにギルドの登録申請はしていないし、活動はあくまで個々人が協力し合っている、という体である。

 でも、いい機会だし、申請しようか。

 僕はそう思って、各種手続きに取り掛かった。


 ◆◆◆


「―――はい、じゃあここにギルド名を記入して下さい」


 僕らは受付さんから申請用紙を受け取り、ギルド名の記入にあたってどうしようか、と相談していた名前を書く。


『居眠りドラゴン』


 記念すべきドラゴン討伐に引っ掛けてリーピアが提案した『ドラゴン』の名を入れようという案に、僕が自分のセンスを組み合わせて考えた結果。

 これが僕たちのギルド名だった。


「居眠りドラゴン、ね。確かに、私たちにピッタリかも」


「ドラゴンがあんなスヤスヤ寝ている姿、初めて見たよ。ドラゴン自体、ギルドの流浪時代にメンバーのお供でちょっと遠目に見た事ある程度だったけど……」


 僕たちは笑いつつ、ギルド結成記念に『例の高いお酒』を頼んで、祝杯をあげた。


「じゃ、ギルド結成を祝して! かんぱーい!!」

「それと、ドラゴン討伐もね! かんぱーい!!」


 かちんっ、といい音を立てるグラスに並々と注がれたお酒を、僕らはグイッと飲み干した。


「ぷはぁ~~~!! やっぱ美味しいわねコレ!!」

「だねぇ……でも僕は、あんまりガバガバ呑めないよ。度が強いし」


 酒豪のリーピアと違って、僕はあまり沢山お酒を飲めるタチじゃないので、半分以上はリーピアが呑むと良いよ、とボトルの主導権は彼女に譲っている。


「じゃあ遠慮なく~♪」

「はいはい、あんまり酔い過ぎない程度にね」


 リーピアは大喜びで次々とボトルからグラスへお酒を注ぐと、そろそろ宿に戻ろうか、という頃にはすっかり残り僅かとなっているのだった。


 ◆◆◆


「うう……頭痛い」


「呑み過ぎだよ、もう」


 リーピアは二日酔いでフラフラしていた。


「ごめんなさ~い……だってあのお酒美味しすぎるんだもの……!」

「気持ちは分かるけどね」


 アルコールに弱い僕でさえ、あのお酒は確かに美味しいと感じる。

 伊達に宿泊代20日分のお金は取らないね。


「さて、ギルド結成した以上、宿暮らしもオサラバかしらね」


 と、気を取り直してリーピアは言う。


「え、ギルドハウスも持っちゃう?」


 ギルドハウスとは、ギルドを結成した人達に用意される、いわゆる『拠点』としての仮宿みたいなものだ。これを持っているのと持っていないのでは、やはり段違いにギルドとしての格が異なる。


「そりゃそうよ。なんだかんだ、ハウス持ってるほうが宿代より安く済むし、家があるって安心するじゃない?」

「そうだねぇ」


 僕は同意する。

 確かに、メンバーとの折り合いの関係で居心地の悪さがあるのは横に置くとしても、僕が所属していたギルドの中でギルドハウスがあるタイプのギルドにいると、ああ、何となく安心するな、って思うことは多かった。


「し・か・も! 今なら二人っきり、だもんね!」


「あ、え、そ、そうだけど! 何でわざわざ意識させる事を言うのさ!」


 ニヤニヤと僕をからかうように言ってくるリーピアに、僕は赤面する。

 そういう意識はなるべく持たないようにしていたのに!


「いやぁ、スレイド君は奥手ですなぁ……お姉さん、そりゃあからかいたくなっちゃうってもんですよ」

「お姉さんって。いくつなの、リーピアは?」


 僕は苦笑して尋ねる。するとリーピアは片眉を吊り上げて、ちっちっちっ、と指を立てて横に振る。


「おや女性に年齢を訊きますかね? そいつぁマナー違反ってやつですぜ、スレイドさん」

「僕も教えるから言ってよ」


 僕がギルドメンバーにそんな隠し事されてもね、と言うと観念して答えるリーピア。


「うう。しょうがないなあ、じゃ、いっせーの!でね。ズルはなしだよ」

「はいはい」


 僕「24歳!」

 リーピア「16歳!」


 と、声が重なって、え?となった。


「え、何? リーピアのほうが年下じゃない」

「え、え、に、24歳? その顔で?」


 僕はぷくっと頬を膨らませる。


「まぁ、そういう反応されると思ったよ。だからあんまり言いたくなかったし黙ってたんだけどね。リーピアが明かすなら、別に良いかなーって」

「ど、童顔なのね……16歳くらいかと思ってた」


 言われ慣れてるから気にはしない。拗ねてみせたのは、ただの冗談だ。それより気になった事を僕は言った。


「リーピアは16歳にしては……いや、そんなもんかな? ……っていうか、めちゃくちゃお酒呑みまくってたけど良いの……?」

「私の出身国では16歳でも呑めるのー。むしろ、お酒呑むのに年齢制限があるほうが珍しくない? スレイドの出身国って、そういうおカタい法でもあるの?」


 確かに旅をしてると、そういう国のほうが多いようにも思えた。僕の出身は東大陸なのだが、ここ南大陸のほうは結構そういった規制が緩いようだ。


「うん、まぁ20歳以上でないと駄目なんだけどね、僕の生まれた国だと」

「へー。変なの」


 お互いの『お国柄』みたいな話をしているうちに、ふと思いついた事があった。


「そういえば、お互いにどこの国の出身かって言ってなかった気がする」

「そうね。私は西大陸のセスタって小さな国なんだけど、知ってる?」

「セスタ……ごめん、知らないなぁ」

「魔王軍に滅ぼされた聖都アストリアと交流のあった国でね。敬虔な聖職者が多かったの」

「へぇ~」


 それだけ聞く感じでは、お酒に戒律とかうるさそうな国に聞こえるけど……


「ワインは神の血なのよ。お酒にそこまでうるさくはないわ」

「ふぅん」


 なんだか都合のいい話だなと僕は思ったが黙っておく。


「スレイドは?」

「僕は東大陸のジルキスって国」

「へー、聞いたことはあるわ。大陸っていうか、島国じゃなかった?」

「よく知ってるね」

「まぁ、旅行好きの家族がいてね」


 そんな風にお互いの身の上話を今更ながらに僕たちはした。

 なんだか、こういうのって家族っぽくていいなー、なんて思いつつ。


 ◆◆◆


「んじゃ、ハウスの申請と場所の希望も提出しといたから」


「ありがとう、リーピア」


 そうして僕たちはギルドハウスをこの町のどこかにある空き家に構えることにした。

 いよいよギルド『居眠りドラゴン』としての本格活動開始って感じがして、僕はワクワクしていた。


「当面、メンバーは増やせないけどね……信頼できる人にしか、明かしたくないし。この能力のこと」

「それは……そうだね」


 そうだ。

 迂闊に僕たちの能力を明かしでもしたら、利用しようとする悪意に晒される可能性が高い。

 だから、僕たちはメンバー募集については公募という形を取らず、一人一人付き合いを見極めて行こうと決めた。

 それまでは、当分二人だ。


「ふ・た・り・っきり、ね」

「あの、リーピアさん、ホントそのからかう感じやめてくれませんか」


 僕はマジで恥ずかしくなって目を逸らす。


「やぁだもー、年上のくせに照れちゃって、可愛いなぁ」

「怒るよ!」


 僕はぷんぷんとリーピアに殴るジェスチャーをするが、リーピアは意に介さない。


「あはは、まぁそれはともかく、メンバーどうしようかなぁ」

「中々、ギルメン募集以前に一緒に冒険に行く人すら募りにくいよね」

「そうねー。必然的に私たちの能力を目にしたら、眠らせちゃう訳だし」


 そうなのだ。

 この能力に耐性があるのは、今のところ僕とリーピアだけである。


「ま、そのうち私たちの能力に耐性のある人間も現れるかも知れないし、気長に待ちましょ」

「そうだね」


 そんなに急ぐこともないか。

 そう思って、僕はのんびりと構えることにした。


(つづく)

おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!


恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。


皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!


また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。


感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。


何卒よろしくお願いいたします!

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