43.思い出話
普段前書き書かないんですけどちょっと宣伝です。
今回は『まちがいだらけのプリンセス』や『妄想★マテリアライゼーション』とのクロスオーバーネタが多めです。そちらも気になった方は是非読んでみて下さいね。
https://ncode.syosetu.com/n6777gl/ 『まちがいだらけのプリンセス』
https://ncode.syosetu.com/n8271gl/ 『妄想★マテリアライゼーション』
「噂によると魔王が倒されたらしいぜ」
「嘘だろ? だって未だに魔物は暴れたりしてんじゃん」
「バカだなあ、魔王だって野生の魔物とか全部統治してる訳ねえじゃん」
近頃僕達はそんな噂を耳にするようになった。
「そういえば……僕らが『ドラゴンの道』の魔族を倒して、勇者と聖女の通り道をアシストしたクエストから随分経つね」
「あー、そんな事もあったわね。直接的に勇者にも聖女にも会ってないし、忘れてたわ」
「アレは大変だったな」
「そっスねえ、中級魔族には隠蔽能力も殆ど効かなかったし」
と、噂を聞いて僕らも僅かながら勇者達の手助けをした例のクエストの思い出話に花を咲かせていると。
「そ、そんな事してたんですかスレイドさん達……」
当時はまだ仲間になっていなかったブライアがこの人達、一体どれだけのことをしてるんだ……みたいな顔で見ていた。
「そういえばあの頃はブライアがまだ加入していなかったな。あの頃はブライアは何をしてたんだ?」
ガルデはそう言って、ブライアに話題を移す。
「王都の収穫祭の頃ですか。そうですね、リクラスタの町にはずうっと滞在していたんですけど、基本は他のギルドさんに入れてもらってお手伝いですね……そうそう、王都の方でマゴリアさんっていう魔道士の方の魔法研究のお手伝いをした事もありましたね」
「へえ、どんな人だったの?」
僕は尋ねてみる。ブライアは少し思い出すようにしながら答える。
「ええと、一言で言えば、幻術・幻惑系魔法のエキスパートですかね……」
なんだか凄そうな人だなと僕は思った。
「幻惑系って事は、やっぱ視界や脳神経になんらかの異常を起こさせるタイプ?」
リーピアが興味深そうに尋ねる。
僕も同じ幻惑系の能力持ちとしては、ちょっと気になる。
しかしブライアの言葉は意外なものだった。
「あ、いえ。そういう魔法はあんまり得意じゃなかったようですね。そもそも、どちらかというとそこまで直接戦闘向きの魔道士じゃないんです、マゴリアさん。大きな括りでは幻惑系といっても、なんでも、専門は幻想魔法学……固有能力は幻想具現化魔法と言って、幻獣や伝説の武器なんかを、この世に呼び出す魔法を使うらしいんですけど……」
「どっちかっていうと、召喚術士っぽいっスね」
「確かにな」
フリッターとガルデも僕と同じ感想を抱いたらしく、そうまとめる。
「実際、王宮に対してご自身で精製された伝説の武器を収めるべく、奮闘していたらしいですよ。何せ、国に五人といない『幻顕』の二つ名をお持ちですから、相当な実力者ですね」
「へえ~」
魔道士マゴリアさん、か。
どんな人かを想像しつつ、僕はブライアの当時の思い出話を聞き、僕らの思い出話を語り聞かせるという思い出交換に花を咲かせるのだった。
◆◆◆
「そういえば、腰を据えてみんなの過去の話とかした事なかったね」
「そうねー。ミスティの話とか、ガルデとの事とか、断片的にはお互いあれこれ話したけど」
僕達はドラゴンの道での話や、ブライアがその頃何をしていたかの話から、個々人の過去の思い出に踏み込む話に興味を移しつつあった。
「スレイドさん、ずっと色んなパーティやギルドを追い出されてきたって言ってましたけど、いくつくらい渡り歩いて来たんですか……?」
聞き辛そうにしつつも興味があるらしくブライアが尋ねてくる。
僕は答える。
「え、うーん……ガルデのギルド『黒煙の灯』の前は……『極楽鳥の誘惑』……だったかな、その前が……『孤独なサボテン』で……ええと、それからちょっと古いけどこないだのライヒがいた『陽炎の揺らめき』……それと……」
僕の口から出てくるギルド名の多さにみんなは驚く。まぁ、軽く10以上は渡り歩いてるからね……。固有名のあるギルドじゃない、単なるパーティ集団にくっついてた事もあるし。
「スレイド、25歳だもんね。冒険歴も長いし」
リーピアはそう言うが、僕は謙遜する。
「リーピアには及ばないよ。僕は、言っても16歳くらいからだから、9年だけど。リーピアはもう、12年じゃなかったっけ?」
「前にチラッと言っただけなのによく覚えてるわね。うん、そう。家族に連れられてだけど、5歳くらいから冒険者はやってるから、その歴史だけで言えばスレイドより長いわね」
それを聞いてフリッターは驚く。
「へぇ~、スレイドより冒険慣れしてるな~とは思ったっスけど、そんなに! アタシとは年季が違うっスね」
「そう言うフリッターはどうなんだ?」
とガルデ。
「へ? アタシはまだ5年も経ってないっス。15歳過ぎて結構してからっスかねえ」
フリッターはもっと経験豊富そうに見えたが、意外だった。
「ガルデさんも長そうですよね。傭兵もやってらしたそうですし」
ブライアが言う。
「ああ、15歳から20歳までは傭兵稼業で食ってたな。7年前に冒険者に転向して今に至る、だ」
「だいぶ端折ったっスね」
苦笑するフリッター。
まあ、ガルデはギルマスだった頃も言っていたが、傭兵時代の話はあんまり積極的にはしたくないらしい。肩書きとして通りは良いから、ハッタリ的によく使ってるけど。
「ブライアは?」
僕が訊くと、彼女はモジモジしながら言う。
「わ、私は、その……冒険者としてはかなり遅咲きなんです……20歳まではお恥ずかしながら、箱入りというやつでして」
「あー、そんな感じはするわ」
リーピアが納得する。みんなも頷く。
「そんなに納得しなくても……」
少し不服そうに膨れるブライア。
別に侮辱しているわけじゃないよ、と僕達は謝る。ただ、ランク的にも会った時は唯一B級だったし、経験が浅そうな雰囲気はあった。
ええとつまり、まとめると……
僕:16歳から9年間冒険者
リーピア:5歳から12年間冒険者
ガルデ:15歳から20歳まで5年間傭兵で、その後7年間冒険者
フリッター:15歳から5年間冒険者
ブライア:20歳から3年間冒険者
って事か。
「こうして聞くとやっぱり15、6歳から始めるのが一般的なんスかね、冒険者っつーか戦闘メインの稼業って。むぐむぐ」
テーブルの上のお菓子をつまみつつフリッターは言う。
「肉体的に丁度良い具合に仕上がってくる年齢だからな。14歳はやや未熟な部分が多かろう。それを考えると、リーピアとブライアは早熟と晩成で対照的だな」
ガルデはそんな風に言う。
「早熟って。言葉選んでよ」
リーピアは苦笑するが、ガルデはいや、そんな意味じゃないと慌てて否定する。
ブライアは恥ずかしそうに言う。
「うう、やっぱり20歳からって遅いですよね……そういうのもあって、私ちょっとギルドでは軽く見られがちな所があったので……ギルドクラッシャーなんて呼ばわれ方も、不本意だけど引け目から反論出来なかった所はありますね……」
放っておくと落ち込みそうなので僕は早々にフォローを入れる。
「でも、ブライアが居てくれるから僕らは5人でまとまって活動できる訳だし、居眠りドラゴンでそういう事は一切気にしなくて良いからね?」
「そうそう。ブライアは私達のギルドのクラッシャーどころか、要なんだから」
「リーピアってば、丸い事言ってるっスねえ、こないだは散々喧嘩してたくせに」
「茶化すなフリッター、今良い事言ってる雰囲気だろうが」
僕らはそんな様子を見て笑い合う。
ホント、経歴も性格もバラバラなのに、能力の組み合わせが上手くハマったり、性格的に馬があったり、僕らって奇跡的なバランスでこうして一緒に居られるんだなあ。
まるで、家族みたいに。
「家族……そういえば家族の話とかもみんな特にしてないね。リーピア以外」
「家族の話は人によってはデリケートだからね。話したい人は自分から話すでしょ」
リーピアはそんな風にそれとなく釘を刺す。
確かにそうだ。
そこは無理に踏み込んだりこじ開けると、色々な問題が起きかねないパンドラの箱だったりする。
「そだね……ま、じゃあ話したい人だけで、然るべきタイミングでいっか」
僕はそうまとめて、じゃあ問題なさそうなリーピアの家族はどうだったのかな、と興味を覚える。
……とは言えあんな言い方をするからには、リーピアの家族にも何らかの問題があったのかも知れない。一般論を語っただけの可能性もあるけど、僕は恋人のデリケートな過去にこの場でズカズカ踏み込むのはちょっとどうかな、と思って話を打ち切るのだった。
(つづく)
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