42.能力の秘匿/公開範囲
「ねぇスレイド。どうする、私達の能力の秘匿方針」
「何? もしかして先日のライヒの発言を気にしてるの?」
漆黒スライムの討伐が終わって暫くはのんびりしていた僕達だが、ある日急にリーピアはそんなことを言い出した。
「いや、別にあの性悪白魔道士の発言なんか気にしてないけど、S級を2つもこなせるようになったのに、いつまでも能力制限かけてるみたいな素振りしなくても良いんじゃないかな、っていうのは、確かに思うのよね……」
「うん……まあ、ね」
明らかにライヒの発言からの延長でその発想に至っているだろうが、まぁ追及したところで詮無い事なので、ここは黙っておく。感情最優先のリーピアに対して正論というモノを投げかけてはいけないのだ。
「だから、堂々と、までは言わないけど、もう『無敵催眠』の秘匿方針は、基本ナシにしない? バレても別に良いやー、くらいの気持ちにしたいわ」
僕はその言葉を聞いてリーピアの本音が見えた気がしたので、それだけは言っておこうと思った。
「あぁ、隠すのが面倒になってきたんだね、リーピア」
「そ……れは、ある」
あるんだね。ま、正直でよろしい。
「そうだねえ、僕も正直に言ってしまうと、いつまで隠せばいいかなあって思ってはいたから、いい機会かもね。冒険者ギルドに正直に言っちゃうと、大々的にバレるから、個別に一緒に共闘するギルドの人たちくらいには、ちゃんと明かすようにしようか? どうせ、黙って使ったら喧嘩の元になるだけだし、事前にブライアに『視界封印』と『心眼開花』をかけてもらうのは必須になるしね」
と、僕はまとめた。
そう、そもそも論だが、(5人で戦う時は基本的に)ブライアが本来は『敵にかけて視界を封じる』能力である『視界封印』を味方にかけるだとか、そこに重ねて『心眼開花』をかけるなんていう一見無駄な行動をせざるを得ない。
そんな行動を衆目に晒す時点で、相当に怪しいわけだ。
それに最近思いついた方法だが、『心眼開花』をわざわざ敵にかけて、敵に『視覚』の『概念』を強制付与する事で『視覚』の『概念』がない敵にも強引に『無敵催眠』を通じるようにする……なんて荒業も、普通の人が見たら何をやってるんだか、全く意味が分からないだろう。
その辺を考慮すると、僕らの『無敵催眠』の特性や弱点などは、ある程度解説しておくのが無難だと判断したのだ。
「どこまで明かす? 視界を封じると無効化される、ってところまで?」
「必然的にそうなるわよね。そこを黙ってても、どうせ普通の人は自分の目を潰す行動に走らないでしょ」
「そりゃそうだ」
と、僕とリーピアは2人で『他人と共闘する場合の無敵催眠の能力説明範囲』について、詳細な打ち合わせを始めるのだった。
◆◆◆
「って事で、今後の方針として私達の能力は基本、共闘ギルドには明かす事にしました」
「なので、皆もよろしくね」
僕らは、ガルデ・フリッター・ブライアを前に説明した。
「なるほどな。確かに、いつまでも隠し通せるものでもないしな。そろそろ、潮時だろうなとは思っていた」
「わ、私の能力もそこまで明かしちゃうんですね。……大丈夫かな?」
「大丈夫っスよ。ブライアの能力が暴かれても、最悪2人だけで運用可能な能力ですし、ブライアはアタシとガルデがガードすれば済む話っス」
と、ガルデとフリッターは納得し、ブライアは少しだけ不安そうだった。
「うん、ブライアには申し訳ないけど、必然的にそこの説明もしないと行動の筋が通らなくなるからね」
「ごめんねブライア。あなたが嫌なら、もう少し説明範囲を絞っても良いけど」
すると手を振り否定しつつも、ブライアは慎重に言葉を選んで言った。
「い、いえ。別に私の能力を明かす事自体が嫌、って訳じゃないんです。……ただ、私とお二人の能力が明るみになった時……もし、もしですよ? 悪意のあるギルドさんに私が狙われたら、その時ってガルデさんとフリッターさんを『無敵催眠』から守れなくなっちゃうから……」
「あぁ……」
僕はブライアの言葉を咀嚼し、一瞬でその光景を想像した。
確かに、折悪しく僕らの能力が発動するタイミングでブライアが『視界封印』と『心眼開花』をガルデやフリッターにかけそこねていたら、もしくは意図的にかけそこねる状況を作られてしまったら、それはかなり危険だ。
その場合は、完全に無防備になるのはブライアではなく、当然の事ながら僕らの『無敵催眠』に巻き込まれる、ガルデとフリッターである。
だが、ブライアと僕の不安をかき消すように3人が口々に言った。
「何、針の穴を通すような状況の心配してるのよ。そんなの、ブライアが悪意のある連中から狙われなければ済む話でしょ?」
「今回は慎重派の俺もリーピアの言う事に賛成だな。俺たちの実力が、ブライアを守れない程だと思うのか? スレイド」
「そうっス! アタシらだって『無敵催眠』の力にタダ乗りしてる訳じゃないんスよ?」
そう力強く言われては、僕も頷かざるを得ない。
というより、僕は皆を信頼していなかったのかな、という罪悪感に襲われる。
「そ、そうですよね。すみません。皆さんを信頼していない訳じゃないんです、ただ私が心配性なだけで……ごめんなさい、スレイドさん、皆さん。私、また余計な事言っちゃいましたね……」
と、ブライアは縮こまる。
「良いんだよ、誰かが慎重に考える必要もあるんだから。でもごめんね。僕は確かに、不安になりすぎてたかも。ガルデやフリッターの実力を、それにブライアだって自分の身を守れないお姫様って訳じゃないんだ。そこはちゃんと信頼してるから、これからも頼むよ」
僕はブライアをフォローしつつ、皆に対する信頼はちゃんとしている、と強く言い切った。
「うん、スレイドにしては上出来の啖呵ね。ま、私達がヘマしないよう頑張れば良いって事よ」
「ああ、だな」
「そうっス! 任せるっスよ!」
「は、はい。ありがとうございます、スレイドさん。皆さん」
こうして僕らは、新たに能力の秘匿方針についてギルド内で認識をきっちりと擦り合わせ、今後のクエスト受諾方針についてどうしようか、などと語り合うのだった。
(つづく)
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