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おやすみヒプノシス  作者: 0024
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04.おやすみヒプノシス

「ねぇねぇ、名前つけない? 名前」


「急に何さ?」


 僕らが中級冒険者になって祝杯をあげた翌日。

 唐突に、リーピアがそんな事を言い出した。


「だから、無敵催眠能力に、名前つけようよ。必殺技みたいに!」

「必殺技って」


 僕は別に無敵催眠で良いじゃない、と言うが、リーピアは拘りたいようだった。


「カッコよくない~~~! もっとこう、横文字で!」

「ううん……じゃあ、まぁ……催眠だから……『Hipnosis(ヒプノシス)』かなあ」


 僕は何となく思いついた単語を口にする。


「おっ、いい響き。でもそれだけだと寂しいね。なんか枕詞つけない?枕詞」

「ん~……じゃあ、『おやすみ』とか……」


 僕が提案するとリーピアは顔を顰める。


「えっ、なんか急にダサくなってない?」

「そ、そうかな。可愛くて良くない?」


 僕は口の中で何度か転がしてみる。


「おやすみヒプノシス、おやすみヒプノシス……。うん、僕はこれで良いと思う」


「……私の提案ではもっと『カッコいい』のを想定してたんだけど。スレイドの基準は『可愛い』なのね。まぁ、いっか。スレイドがそれで良いなら」


 そんな訳で、今日から僕たちの能力を組み合わせて生まれた『無敵催眠』の呼び方は『おやすみヒプノシス』に決定したのだった。


 ◆◆◆


「じゃ、早速次のダンジョン行こうよ。Bランクの上位ってまだまだあったよね」


 無敵催眠(おやすみヒプノシス)を得た僕らは調子づいて、別のBランクダンジョンを探索してみよう、という話を昨日もしていた。なので、幾つか候補はあって、目星をつけていたのだ。


「そうだねぇ。じゃ、これなんかどうかな?」


 無敵催眠(おやすみヒプノシス)の更なる実験も兼ねて、僕は『虹色トカゲの森』を選択した。


「あ、食肉用にメジャーなあの虹色トカゲのクエストかあ! 中級冒険者的にはなんとか勝てるけど、動きが素早いから捕えづらいんだよねぇ」

「そうそう」


 虹色トカゲは名前の通り全身の表皮が虹色に輝く、派手な色合いのトカゲ型モンスターだ。

 その肉はとても美味で、よく取引されている。僕も以前、王都ベルロンドでの収穫祭の屋台で食べた事がある。


「良いんじゃないかな、動きの素早いやつにどのくらいの範囲から通用するか、って実験になりそう」

「よし、じゃあ行ってみよう」


 そして僕らは意気揚々と、虹色トカゲの生息している森へと向かうのだった。


 ◆◆◆


「このくらいの距離からなら通じるかな……」


「どうせ遠距離で通じなくても、至近距離からぶっ放せばいいだけよ。閃光で悟られるかもだけど、遠慮なく撃っちゃいましょう」


 割と大胆な事を言うリーピアと、慎重な僕。

 ま、彼女の言うことも一理ある。

 とはいえ、集団で襲われる可能性も考えると、距離を考慮に入れるのは大事だと思うんだよね。


 僕は発見した虹色トカゲの約15m先から、リーピアとタイミングを合わせて、言い放った。


「いくよ……」「おっけー!」



「「無 敵 催 眠(おやすみ、ヒプノシス)!!」」



 ビカッと強烈な閃光が奔り、15m先の虹色トカゲの横目に僕たちの能力が命中した……はずだ。

 と、息を呑んで遠巻きに僕らが観察していると……トカゲは、そのままドスーン!と仰向けに倒れて昏倒していた。


「や、やった! この距離からでも行けるんだね!」

「安全に倒せたわねー! いよいよコレ、強すぎじゃない? うふふ、Sランクも夢じゃないかも!」


 15mもの距離を保ってこの威力。

 確かに、集団戦においても絶大な威力を発揮しそうだ。


「一番懸念していたのは、味方を巻き込まないかってポイントだったんだよ。それが先日の蝙蝠の洞窟で保証されたのは大きいよね」

「そうねー。バフをかけるあたし自身が催眠に巻き込まれちゃったら、お話になんないもんね」


 僕たちはそんな会話をしつつ、手早く虹色トカゲを捌いていく。

 うん、こんな質のいいお肉を手に入れられたんだから、今日はいくつか自分たち用にご馳走として食べても良いな、と僕は思うのだった。


 ◆◆◆


「ん~っ、美味しい! 捌きたての虹色トカゲなんてそうそう食べられるものじゃないもんね! これも中級以上の冒険者の特権かしら♪」


「そうだねー。市場に出回るの、捌いてから何日も経過するもんね」


 僕とリーピアは野営をしながら、虹色トカゲの肉を頬張る。

 さっき倒したトカゲの肉の一部を、ギルドに納品する分を残してちょっとお先に頂いている訳である。

 うん、焼く前の表皮の極彩色がエグいのを気にしなければ、肉厚で美味しい。


「こんな美味しいのに苦手な人は苦手なのよね。もったいないなあ」

「まぁ、人によってはこの色合い見ただけで、もしくは連想しただけでウェッてなっちゃうだろうしね……」


 ははは、と僕たちは笑いながらトカゲの肉を美味しく頂いたのだった。


 ◆◆◆


 食事を終えて僕らが立ち上がると、ふと気付く。


「ん……なんか、変な声聴こえない?」


 僕はそう言うが、リーピアは首を傾げる。


「んー?私は何も聴こえないけど」

「そっか」


 なんか、悲鳴みたいな……気のせいなのかな。

 僕は少しだけ気がかりになるが、そのまま町へ向かってリーピアと共に帰った。


 ◆◆◆


「おお~、すごいわね! こんな大量の虹色トカゲの肉を持ってくるなんて! 今日の報酬、ちょっと弾んじゃう!」


「やった!」

「いえーい!」


 僕たちは冒険者ギルドのお姉さんに戦利品を引き渡すと、報酬を貰う。

 いつもの1.5倍くらいはあるかな?


「しばらく贅沢できる~! 美味しいお酒、美味しいお酒♪」

「お、お酒は程々にね?」


 結構な酒豪であるリーピアの言葉に僕は困った顔をするが、まぁ良いだろう。

 彼女がいてこそ、これだけの仕事をこなせているんだから。


「こないだガルデさんがくれたお酒、私もボトルキープしたいなぁ」

「因みにあれ、いくらするの」


 僕が何となく気になって尋ねると、ぼそりとリーピアが言う。


「……ここのお宿代金、20泊分」

「ぶっ!」


 そ、そんな高価なお酒だったのアレ!?

 驚愕して、あんなたっかいお酒をカパカパ呑んでいたリーピアの遠慮のなさにも呆れかえる。


「あはは、まーいーじゃん、奢りだったし!」

「いやぁ……も少し味わって呑もうよ、ね……」


 僕は苦笑して肩を落とした。

 そこまで高いお酒だと分かってたらもうちょっと僕も飲みたかったかなぁと思うのは、貧乏性かな?


「ま、これからは私たちの収入でも飲めるよ、大丈夫大丈夫!」


 わはは、と豪快に笑うリーピア。

 時々仕草が、男らしいんだよね……。

 見た目はすごく可憐なんだけど。


「ん?」

「あ、いや何でもないよ」


 ついジッとリーピアの姿を見てしまった。


 薄赤色の髪を短めにカットし、動きやすい軽装にスレンダーで引き締まった身体。

 一応大別すると『魔道士』系に属するみたいだから普段は杖を構えているんだけど、短剣とか軽めの長剣も扱える万能タイプって感じの冒険者。

 実は、固有能力の『限定バフ』以外にも、地味に補助系魔法に長けてたりする。

 あんまり実用性はないから、ってリーピアは謙遜してるんだけどね。僕はそのうち役立つ方法を考えようと思っている。


 ……因みに僕はほんのちょっとだけ魔法は使えるけど、基本的には『戦士』タイプ。まぁ、暴漢に『モヤシ』って言われるくらいなので、筋力は見た目通りそこそこ程度なんだけど……。

 リーピアのお陰で超進化した固有能力の『短時間催眠』、改め『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』を除くと、どこにでもいる駆け出し冒険者って感じなんだよねえ……。


 リーピアはなんだかんだであんな風に声をかけられるくらい可愛いって事も手伝って、ちょっと一緒にいる事に引け目を感じてしまった。地味に、僕のほうが背が低いし。あと、よく童顔って言われんだるけど、一応これでも成人してるんだよ。年齢はナイショ。


「なになに? 随分と熱視線を送ってきますなぁ」


 ニヤーッとリーピアが笑って僕をからかう。


「いやその、何でもないって」


 何でもなくはないが、リーピアをしげしげと眺めていたことに気付かれて僕は慌てて否定してしまう。


「にゃはは、まぁいいや。さーて、今日のご飯は何にしようっかな~♪」


 そうして話を適当に打ち切ると、上機嫌でリーピアは今日のメニューに目を通し始める。僕は参ったな、と頭を掻きつつ、彼女と共に夕食のメニューを選び始めるのだった。


(つづく)

おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!


恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。


皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!


また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。


感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。


何卒よろしくお願いいたします!

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