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おやすみヒプノシス  作者: 0024
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37.旧友と元ギルメン

「共闘の」


「申し込み?」


 僕とリーピアは冒険者ギルドのお姉さんからそんな話を聞いて目を丸くした。


「はい、ゲストとして参加して欲しい……とかではなく、共闘ですね。S級クエストを受けるに当たって、『居眠りドラゴン』の皆さんの力量を見込んで……との事です」


 珍しい申し出もあったものだ。

 僕はそんな風に思った。


 というのも、僕らのギルドはS級を久々にクリアしたという事もあって、正直かなり高嶺の花みたいに思われている節はある。実は5人なんていう小規模ギルドでS級をクリアした事は、この町では過去に前例が殆どない。大抵は10人以上の中規模から、20人以上の大規模ギルド、ないし複数ギルドで手を組んでこなすのが通例である。


 ところが僕たちはそんな通例を破り、上級魔族(アークデーモン)を打ち倒した。

 当然、その評判もあちこちに触れ回り、『居眠りドラゴン』の雷鳴は轟き渡る事となった訳である。


 そんな状態なもんだから、共闘自体を申し込まれる事も殆どなかった。

 あっても、相手の実力や人柄で適正審査をクリアできずに弾いてきたし。

 迂闊に共闘して『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』の能力についてバレても困るしね……。


「まあS級受けるなら人数いた方が良いっちゃいいわね。で、どんなギルドなんですか? 何で私達と共闘したいって話に?」


 リーピアがお姉さんに尋ねると、お姉さんは少しだけ眉を潜めて言う。


「それがですね。相手のギルドの女性が、リーピアさんを直々にご指名なんですよ」

「私を?」


 リーピアは過去に僕と同じように色んなギルドやパーティを渡り歩いてきたという経験がある。話を聞く感じだと僕以上かも知れない。もしかすると、その頃の誰かなのかな、と僕は何となく思った。


「会ってみるか。リーピアの知り合いなら、必然的にリーピアの能力についても知っていそうだしな」

「そっスね。下手したらそこから『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』の事、バレてんのかも知んないっスよ?」

「あわわ……それは困っちゃいます……かね? ど、どうなんでしょうリーピアさん」


 ひっそりとそんな相談をするガルデたち。


「どうかしら……でも私の限定バフの効果って、ごくごく限られた相手しか実態も有効性も知らない筈だけどね……」


 リーピアがそう言った時に、僕はふと思い出す。

 あれ、そういえば出会ったばっかりの頃、リーピアが昔、誰かと組んでた事もあるとか……。


 僕が何かを思い出そうと考え込んでいると、冒険者ギルドのお姉さんは、とあるテーブルを指差して言った。


「あ、あのお二人です。あれが、今回皆さんと共闘したいと申し出たギルド……

霧縛(きりしば)りの魔術師』です」


 霧。


 その言葉で僕とリーピアがピンと来るのと、指差されたテーブルにいた女性魔道士がこちらに気付いて近付いてくるのは、ほぼ同時だった。


「リーピアじゃないか! ひっさしぶり! 元気してたかい?」


「み……ミスティ!?」


 それはどうやらかつてリーピアと相棒(バディ)を組んでいたという、霧使いの魔道士……ミスティさんらしかった。


 ◆◆◆


「いやぁ、リーピアと会うの、何年振りだろうね? 3年くらい?」

「もうそんなになるかしら。会えて嬉しいわ、ミスティ」


 リーピアはミスティさんと同じ卓に座り、酒を酌み交わしていた。


「リーピアの旧友か。なるほどな」

「えらく仲良さそうっスね」

「ホント、打ち解けてますね……」


「ミスティさんとは僕は初対面だけど、名前だけは聞いていたよ」


 確か彼女は、僕以外で唯一、リーピアの限定バフが有効に働いた相手だったらしい。もっとも、彼女はすぐに自分で固有能力(ユニークスキル)を発展させてしまい、リーピアとの相棒関係も解消されたらしいが……。


 ミスティさんの容貌を僕は観察する。薄紫色の長い髪を腰ほどまで伸ばし、前髪はきっちり切り揃えている。身体つきの豊満さと相俟ってパッと見は妖艶な雰囲気を醸し出す女性だが、リーピア同様かなり快活な性格の様子。いや、リーピア以上に、かな?


「……あんまりジロジロ観てたら、またリーピアさんにヤキモチ妬かれますよ」


 おっと。ブライアのそんな小声の警告にハッとして、僕はミスティさんから視線を逸らす。

 まあ、リーピアとはもう完全に恋人関係と言える状態だけど、誤解を招かないに越した事はない。それに、女性の身体をしげしげ見つめるなんて普通に失礼だしね。


 ただ、リーピアはどうやら旧友のミスティさんとの会話に夢中で、僕の方には気付いていないようだった。


「へぇ~、じゃあ私と別れてからリーピアも新しい相棒見つけたんだね。それはおめでとう!」

「ありがと。ミスティも……今は二人でギルドを? そちらの男性の方がそうなのかしら」


 と、リーピアが水を向けるまで誰も気付かなかったが、卓から僅かに離れて椅子に座り、静かに酒を飲む男性の魔道士がいた。白い服を着て、いかにも白魔道士でござい、といった風貌……だ……。


 そこで僕が気付く。

 そして、にわかに緊張した。


「……ライヒ?」


 僕がその名を呼ぶと、ライヒは眼鏡越しに僕をジッと見て、言った。


「……ああ、なんだ。誰かと思えば、『小眠り』のスレイドじゃないか」


 小眠り、なんて不名誉な二つ名で呼ばれるのは実に3年振りである。

 そう。

 彼はかつて僕が所属していたギルドの一つ……

『陽炎の揺らめき』

 の一員だった白魔道士である。


「随分久しぶりじゃないか、スレイド。相変わらず、お前はシケたツラだな。チンケな短時間催眠も、変わらずか?」


 酒を卓に置き、僕に対してそんな風に言ってくるライヒ。

 僕は黙り込む。

 代わりにリーピアが、ダンっ!と卓を叩いて怒り出す。グラスの中の酒が揺れる。


「ちょっと。これから一緒に共闘しようってギルドのマスターに、えらい好き勝手言うじゃない。口振りからしてスレイドの旧知らしいけど、そんな態度で臨まれちゃ、こっちだって願い下げなんだけどね?」


 相変わらずリーピアは僕の気持ちを僕以上に代弁してくれる。

 波風を立てすぎるのは、困ったものだけれど……。

 しかしライヒは全く怯む事もなく、ただ驚いたようだった。


「ギルドマスター? スレイド、お前がか?」

「う、うん。一応ね」


 それを聞いていよいよ可笑しいと言わんばかりにライヒは肩を竦めて笑い出した。


「はっはっは……面白い冗談だな。まさか、お前が上級魔族(アークデーモン)を討伐した、かの高名な『居眠りドラゴン』のマスターだって? おいおい、茶番で俺を担ごうってのか?」


「ちょっとライヒ! いくら旧知だからって、失礼すぎだよ! 謝りなさい」


 ライヒのあまりの言葉にミスティさんは窘め……いや、叱りつけるように言う。なんだか、保護者みたいな言い方だ。


「ふん。まあ、悪かったな、スレイド。以前のお前からは信じられない有様だったもんで、つい嫌味を言っちまった。悪気はなかったんだ」


 ライヒはミスティさんには弱いのか、不承不承と言った感じでおざなりな謝罪をする。リーピアは不満そうだったが、これ以上ことを荒立てても得策ではない、と僕が耳打ちしたので黙る。


「まあ、あの頃は本当に弱かったからね……気にしていないから、別に良いよ」


 僕はそう言って場を収める。


「ごめんねー、スレイド君。ウチのライヒが失礼を」


 ライヒの頭を無理矢理下げさせながら、ミスティさんはペコリと自らも謝罪する。彼女にまで謝られると恐縮してしまうが、まあ、気持ちは受け取っておこう。


「で、こいつとはどういう関係なの」


 そこでリーピアは僕に小声で、単刀直入に尋ねてきた。

 僕もその調子に合わせて、端的に答える。


「元ギルメンだよ。3年前のね」


 僕が『陽炎の揺らめき』を追い出されたのは、奇しくもミスティさんとリーピアが別れた頃と同時期らしい。


「じゃあこいつもスレイドを追い出した奴なのね?」


 と、リーピアの声音と目付きが剣呑な色を帯びるが、僕は否定する。


「ライヒは口は悪いけど僕の立場を殊更悪くしようとしたタチの悪いギルメンとは違うよ。普通に僕と共闘して、ギルドではそれなりに長い間一緒に戦ってくれてたんだ。彼の治癒魔法で命を繋いだ事もある」


 僕はリーピアを宥める意味を込め、穏やかに答えた。

 実際、ライヒ個人に僕はそこまでの悪印象はない。口は確かに悪いが。


「ふ~ん……あっそ」


 うん?どうやらこれは、男相手にもヤキモチモードなのかな?

 僕は前例のないタイプのリーピアの嫉妬に頭を抱えた。


 あ、いや。

 ガルデの時もそういえば、あったかな。

 リーピアが僕を庇ってくれた後に、僕がその相手を擁護するような事を口にするのが気に入らないんだろう。


「しかし奇縁だね。リーピアもそっちの彼……スレイド君も、お互いに旧知が所属しているなんてね」


 確かにすごい偶然だ。


「ミスティはどうしてその……ライヒさんと組んでいるの?」


 奥歯に物が詰まったような言い方で、リーピアは尋ねる。

 こんな奴と友人が組んでいるのは気に食わない、と言わんばかりだ。

 しかし、その質問を受けてミスティさんは、待ってましたその質問!とばかりに得意げになって、答える。


「実はねえ……彼との能力(スキル)相性っていうか、相乗(シナジー)効果が凄く上手くハマってね。これがもう、すんごいんだよ!」


 それは、まるでどこかで聞いたような話だった。

 そしてミスティさんは続けた。


「結構、私達『霧縛りの魔術師』も有名になりつつあるんだよ。何せ、私達の合体能力(クロススキル)……『麻痺霧霞(スタン・ミスト)』ってば、超広範囲の敵を一気に麻痺させちゃう優れものなんだから!」


 ……どうやら、僕達は彼女達の能力を聞いてしまった事で、なし崩し的に僕達も『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』について説明せざるを得ない状況に追い込まれてしまったらしいのだった。


(つづく)

おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!


恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。


皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!


また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。


感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。


何卒よろしくお願いいたします!

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