34.朝帰り
「た、ただいまぁ。皆、起きてるかな……?」
「……ただいま……」
僕らは翌朝早く、ギルドハウスに帰ってきた。
その様子を見て、真っ先に反応したのはフリッターだった。
「ああーっ!! ホントに!! ホントに朝帰りキメやがりましたよこのギルドマスターとギルメン!! 不純異性交遊!! 不純異性交遊!!」
朝からクッソうざいテンションで絡まれたが、まぁ、否定できない。とはいえ事前に言ってたでしょうに、と僕は苦笑いする。
「朝っぱらから騒がしいぞフリッター……おう、お帰りスレイド、リーピア」
「お、お帰りなさい……あ、あぅ……お二人とも、そういう……というかリーピアさん、顔、真っ赤ですよ……?」
次にガルデ、ブライアがそれぞれ僕たちの間にあったことを『察し』て、普通を装って口をつぐんだり、余計な一言を添えたり。
あまりに『いつもの』ギルドメンバーの感じに、僕は綻んでしまう。
「やっぱ、ここが僕たちの家って感じだね」
「う、うう~~~……スレイドの顔も、皆の顔も、見れない……」
リーピアが今更ながらに顔を真っ赤にして、覆っていた。
僕はそこで、呆れたように言った。
「何を今更照れてるのさ……言い出したのも、誘ってきたのもリーピアのくせに」
それを聴いて、ザワッとギルドハウス内の空気が張り詰める。
「ちょっと! なんでそこ、赤裸々に言っちゃうの!?」
リーピアが耐え切れずに怒り出すが、僕は何を言っているのだろうと思った。
「いや、デートに行こうって言いだしたのも誘ったのもリーピアじゃないか……」
するとリーピアは顔をまた覆い、
「うぁ~~~~ん! 絶対ウソだぁ! 今の分かってて言ってるもん!!」
昨夜の僕たちの『儀式』について言及するような言い方になっていたのは、まぁ、ワザとだけど。
散々からかわれたお返しだよ。
「マジでそこまで行ったんスね……」
何故かガチで引いてる感じでフリッターが言う。
「お、おおう……何というか、えっと、おめでとう? なのか?」
「……行くときはすごい速度ですね、リーピアさん。本当に余計な気を回さなくて良かったのでは、って思いますよ……」
ガルデも流石にそこまでは予想外だった、とばかりに言う。
そして僕たちの間柄を後押ししてくれたブライアはというと、やや呆れたような白眼視を向けていた。
まぁ、彼女からすれば良い面の皮である。
「ブライアのおかげだよ。今度ちゃんとお詫びするから」
僕はこっそり彼女に耳打ちする。
「良いですよもう。あーあ、お熱いこと」
ブライアは揶揄するように肩を竦めた。
まぁ、そんな感じで概ねギルメンの反応は予想通りであった。
それから半日くらい、フリッターが僕たちをイジり倒してはたまーに
「いやマジで教えて下さいよ、なんでそんなスピードで攻略できたんですか」
と、いつもの『っス』口調がどこかへ消し飛んでいた。
ガルデは兄のように温かい目線と、なんだか息子と娘が結婚した、みたいな変な親みたいな心情が混ざり合っている複雑な表情を浮かべていた。
ブライアはもう『芝居』を打つ必要がなくなり安心しました、と言いつつ、僕らの仲をフリッターほどではないが、適度に茶化したり嫌味を言って笑っていた。
「スレイドぉ~~~……私もう、恥ずかしくて死にそう……」
「ま、暫くの間は我慢だよ。幸せの対価だと思ってね」
そう言って僕は、涙目になっているリーピアの頭を優しく撫で、言い聞かせるのだった。
(つづく)
おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!
恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。
皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!
また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。
感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。
何卒よろしくお願いいたします!




