22.気弱なブライア
「ぶ、ブライアです。よっ、よろしくお願いいたします」
ブライアと名乗るその女の子は、小柄なフリッターより更に小柄で、いかにも気が弱そうな冒険者だった。
「うん、今回のクエストは君の能力が役立ちそうだから、頼りにしてるよ」
僕は『居眠りドラゴン』のギルドマスターとして彼女をゲストに、一つ目巨人の討伐クエストを開始するにあたっての挨拶をしていた。
勿論、ギルメンのみんなも次々に挨拶する。
「私はリーピア。よろしくね」
「アタシはフリッター、レンジャーっス! よろしくっス!」
「ガルデだ。大剣使いの戦士をしている。よろしく頼む」
ブライアは冒険者ギルドから斡旋されたゲストメンバーの一人で、僕らの書類選考に真っ先に合格した人物だ。
詳しい能力を全部明かす冒険者はいないが、固有能力などの中で、他人に対して強くアピールできるものを書類に書くのは自然な流れ。
彼女が『暗闇で敵の視界を完全に封じる』という固有能力を強めにアピールして書面に載せていた事、人品骨柄などを判断した結果、最適であると判断できたのだ。
「ま、まさか私なんかが『居眠りドラゴン』の皆さんのゲストに加われるなんて、光栄です。A級クエストに出るのだって、まだ早い!って感じなのに」
ブライアはB級中位くらいの冒険者で、基本ソロで活動しては、他人のゲストとして動くタイプの冒険者だった。あまり積極的に戦闘系のクエストに参加するタイプには見えないが、やはり暗闇を操る能力はパワー系のモンスターには有効に働くためか、そこそこ重宝されているのだという。
「緊張しないで大丈夫だよ。安心してついてきて」
「はっ、はい!スレイドさん」
僕が優しくそう言うと、ブライアはやや瞳にかかる眺めの前髪から、僕を上目遣いに見てくる。
なんだか、小動物みたいで可愛い娘だな、と思った。
それを見て、リーピアはジトーッとこちらに視線を向けていたが、僕はスルーした。
リーピア、ヤキモチ妬くくらいならちゃんと僕とそういう関係になろうって言って欲しいんだけどな。
いや、まぁ、僕から言えというアピールなのかも知れないが……。
僕はリーピアとの距離感をやや測りかねるところがある。
彼女は多分、若干僕に好意を寄せていると思う。
けど、じゃあ恋人同士に?ってなると、その一線を越えようとはしてこない。
僕も、それが分かってるので、敢えて踏み込まない。
これでも25歳だから、8歳も年下の彼女に自分から言い寄るのって、何だかちょっと恥ずかしいんだよね。もう少し年齢が近ければいいんだけど……み、見た目はともかくとして(僕が童顔で彼女より背が低い件については、あまり触れたくない)。
それはともかく。僕はいつまでも僕を睨み続けるリーピアを無視し続けるわけにもいかず、こっそりと耳打ちする。
「リーピア、ヤキモチ妬くのは程々にして、彼女の能力をちゃんと観察しててね。ないとは思うけど、視界を永遠に暗闇にする能力じゃ味方に損害を与えかねないし、それに自由意思で解除できるのか、補う能力があるのかとか……リーピア?」
「やっ、やっ、ヤキモチなんか妬いてないわよ!!」
話を聞いているのかな?
僕はリーピアのそういう感じには慣れたけど、余計な事を言ってしまったな、と反省した。
「ごめん、それは一旦、忘れて。能力の事ちゃんと見ててね?」
「分かってるわよ! バカ!」
リーピアは真っ赤になって僕に怒鳴る。
その様子を見てフリッターはニヤニヤしているし、ガルデはまたか……と苦笑して呆れていた。
ブライアはというと、えっ、えっ?と困惑するしかないようだった。
◆◆◆
「えいっ! 『視界封印』!」
固有スキルを発動させ、次々と一つ目巨人の視界を封じていくブライア。
僕もリーピアも注意深く観察しているが、制限時間はそこそこ長そうに見えた。
10分以上経過しても解けない感じかな……と僕がワザと何匹かの一つ目巨人の様子を見ているが、継続時間に関する言及はブライアの方から自己申告があった。
「あっ、わ、私の視界封印、大体30分で消えちゃうので、かけた相手は早めに倒して下さいね!」
大声で自分の能力の詳細を叫ぶのはどうかと思ったが、把握した。
30分か。長すぎもせず短すぎもせず、だなと僕は思った。
とはいえ、かけっぱなしで味方の目が見えない状態で30分はやや厳しい……
なるべくなら、解除できればいいんだけど、敵にかける前提の能力の任意解除が可能かどうかなんて流石に訊けない。不審に思われてしまう。
そうしているうちに、僕たちは一つ目巨人を全滅させてしまった。
まぁ、把握できる能力の詳細はこのくらいで上等かな。
僕は思った。
周りのみんなも同じような反応で、ひとまずはこれで……と思っていた時だった。
「グルル……」
1匹だけ、倒し損ねた一つ目巨人がいた。
僕はそれがブライアの背後で起き上がるのを見て、まずい!と思い、叫ぶと同時に駆け出す。
「ブライア! 後ろ! 避けて!!」
「えっ……きゃぁっ!?」
間に合わないか……!?
僕は振り下ろされる一つ目巨人の腕から庇うように、彼女と腕の間に入ろう……とした。
瞬間。
ズドォン!!
凄まじい速さで一つ目巨人の目が射抜かれる。
「油断大敵っスよ」
フリッターが得意の弓を射出し、一つ目巨人を倒した。
さしもの一つ目巨人も手負いの上に弱点の目を射抜かれては、ひとたまりもなかった。
そのまま倒れ、苦悶する。そしてそこへ、
「今、楽にしてやる」
とガルデの大剣が振り下ろされ、その場の一つ目巨人は今度こそ全滅した。
「あ……あ、ありがとうございます……」
ブライアはまだ涙目でカタカタと震えながら僕に礼を言う。僕は首を振る。
「僕は何もしてないよ。フリッター、ガルデ、ありがとう」
「ういっス」
「気を付けろよ、スレイド。仕留めそこなうとはお前らしくないな」
リーピアはその様子を面白くなさそうに見つめていた。
「……なんだか、スレイドってば騎士様気取りじゃない?」
聴こえてるよ。そんなつもりは別にないし、咄嗟に身体が動いただけだ。
「さて、じゃあ帰ろうか」
僕はリーピアのヤキモチを受け流して、帰ろうとした。
しかしブライアはどうやら足がすくんで立てないらしく、僕は手を貸す。
「大丈夫? ブライア」
「あっ……はい……」
ぽぉっと顔を赤らめ、ブライアは僕の手を取る。
リーピアはますます面白くなさそうに見つめていた。
僕は苦笑しながら彼女の手を引いて、そして話す。
「ね、ブライア。君の能力と人柄を見込んで、ちょっと頼みがあるんだけど、聞いてくれるかな?」
僕がそう言うと、ブライアは二つ返事で引き受けてくれた。
「わ、私で良ければ、なんなりと!」
そんな感じで、僕たちはブライアから彼女の能力の詳細について伺う事になったのだった。
(つづく)
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