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おやすみヒプノシス  作者: 0024
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02.パーティ結成、初冒険

「はっ」


 目覚めるとそこは宿屋のベッドだった。


「ううん……昨日は飲みすぎたな」


 僕が頭をグルグルさせていると、ベッドに誰か別の人がいる事に気付く。


「え……」


「ううん……むにゃむにゃ」


 お、女の子!?

 あ、いや、そうだ。昨日仲間になったリーピアだ。

 な、なんで同じベッドに……?


「ちょっと、起きてよリーピア。どうして僕のベッドにいるのさ……」


 そもそも宿屋にいる経緯も覚えてない。

 昨日飲んでた冒険者ギルドに併設されていた宿っぽいけど……。


「……はっ!」


 僕が何度か揺り起こすと、リーピアはやっと目を覚ました。

 服がめちゃくちゃに乱れていて、目に毒なので僕は目を逸らす。


「おはよう……あ、あれ? 私どうしてスレイドと同じベッドに……」


 と、リーピアはそこで思いついたように言った。

 わざとらしく身体を庇うようにして。


「ま、まさか、催眠能力で私を……」


「あのねえ! 君のバフがないと僅かしか保たないって知ってるでしょ!?」


 僕が呆れつつも律儀にツッコミを入れると、あはは、とリーピアは笑う。


「冗談だよぉ」


 そしてリーピアはベッドから起き上がり、ぼさぼさになった彼女の薄赤色のボブショートを手櫛で梳き始める。


「ふぁあ、昨日は酔っぱらっちゃって同室取っちゃったんだね、私達」

「そうみたいだね……こ、今後は気を付けようね?」


 僕はドギマギしてリーピアから目を逸らす。


「私は別に構わないけど、そうだね」


 リーピアはそう言うと着衣の乱れを直し、顔を洗いに行ってくるね、と言って部屋を出て行った。


「はぁ、まったく……女の子と一緒の部屋で寝ちゃうなんて、初めてだよ……」


 僕はドキドキが収まらず、自分も顔を洗ってシャッキリしよう、と部屋を出ていくのだった。


 ◆◆◆


「じゃ、行こうか」

「うんっ!」


 僕たちはパーティ結成後初めての冒険へ向かう事になった。


 厳密に言えば昨日もすでにモンスターを何匹か、無敵催眠の実験台に倒したんだけど。

 そのおかげで、懐は結構あったかい。


「今日はどこまで行けるか楽しみだね! ランクSの洞窟とかも行ってみたいよね」

「あんまり無茶はしないようにしなきゃ。確かに使用回数はお互い能力制約が厳しいだけあってかなり多いけど、過信は禁物だよ!」


 リーピアが調子に乗っているので僕は釘を刺しておいた。


「じゃ、出発しんこーう」


 リーピアは何というか、気さくでノリの良い女の子だった。

 昨日は出会いが出会いだから気弱な感じに見えたけど、こうして話していると全然そんな風に見えない。


「ねぇねぇ、スレイドのこれまでの旅の話も聞きたいな!」


 僕は彼女と世間話などしつつ、ランクBのダンジョンへ向かう。

 コレでも結構僕にしては背伸び感のあるクエストだ。


「基本的に昨日言った通りで、あちこちのギルドを歩き回ってたんだ。どこも長続きしなかったけど……」


 僕は敵が現れないか警戒しつつ歩く。

 いくら無敵催眠能力があるって言っても、剣を構えもせずボーッと歩く訳にはいかない。

 これは冒険者としての最低限の心構えだった。

 リーピアも喋りつつ、ちゃんと周りは警戒していた。


「そっか、私とおんなじだ。私もこんな限定的能力じゃ、誰も相手してくれなくて……ミスティだけかな、私と仲良く組んでくれたの」

「ミスティ?」

「あ、昨日言ってた、霧使いのウィッチなの」

「ああ、別の能力を発展させて別れたとかいう」

「そそ」


 短期間であっても、そうやって互いを助け合えた仲間がいるのは羨ましい。


「ホントに短い間だったけどねー。ミスティは私と違って、より汎用的な霧の魔法を編み出せたから……」


 寂しそうに呟くリーピアを見て、思う。

 どういう別れになったのかは、訊かない方が無難かな。

 僕はその辺りで話を打ち切った。


「っと、見えてきたね。アレが今日の目標……」


 リーピアがその名を口にする。


「ランクBのダンジョン。通称『人喰い蝙蝠』の棲む洞窟ね」


 ◆◆◆


「薄暗いわね」


 僕たちはランタンを掲げて周りを警戒する。


 人喰い蝙蝠は、中級以上の冒険者なら難なく倒せるモンスターではあるが、僕たちは正直まだ中級には届いていない、駆け出しとまでは言わないが、まだまだ修業中の身である。


「気を付けて行こう。最優先にするのは生き残る事だからね」


「もちろん」


 僕の短時間催眠能力がリーピアの限定バフで無敵催眠に進化したとはいえ、お互いが健在でなければ使えないし、警戒を怠っていい理由にはならない。

 調子に乗り過ぎれば即、死に繋がる。

 それが冒険者ってものだ。


「このダンジョンをクリアしたらギルドからの評価も上がって中級には届くんじゃないかな?」


 ワクワクしながらリーピアは探索を続ける。

 僕もそう思う。Bランクダンジョンの中でも、比較的強い方を選んでいるからだ。

 実の所、中級冒険者も割とここに来るという。


「あ、もしかしたらスレイドの仲間も来てたりして」

「ああ、あり得るかもね」


 奥の方で鉢合わせになる可能性もあるけど、まぁ別にこのダンジョンは早い者勝ちみたいな所じゃない。住み着いた蝙蝠を一定数討伐して、その証を持ち帰れば良いだけだ。


 と、言っている端から殺気を感じた。


「……!」


 僕は剣を抜き、警戒する。

 リーピアも手にしていた杖を構える。


「キィッ!!」


 突然、上から人喰い蝙蝠が襲い掛かってくる。

 僕とリーピアは咄嗟に両脇に避ける。


「うわっ! 危ない!」

「ひゃっ!」


 あと一歩で脳天を切り裂かれるかと思った。

 しかし思ったほどの至近距離ではなかったようで、蝙蝠は剣の間合いの外にいた。


「リーピア!」

「分かってますって」


 僕らは早速、無敵催眠を使う事にした。


 指向性の光線を、視覚に放つ事で僕の催眠能力は発動する。

 だから通常状態だと目の殆ど見えないタイプのモンスターには通用しない。

 こいつら人喰い蝙蝠もそのタイプの筈だ。

 それがリーピアのバフ能力を受けてどこまで通用するようになったのか、それを確かめる意味でもこのダンジョンは最適だと僕たちは結論付けたのである。


「喰らえっ!」


「えいっ!」


 僕らは協力して、敵に向けて無敵催眠の光線を放った。

 瞬間、眩い閃光が洞窟を明るく照らす。


「おわっ!」


「きゃっ!?」


 僕らは予想外の効果にビックリした。

 屋外で使った時は太陽光に紛れて気付かなかったけど、どうも僕の指向性光線は拡散型の強烈な閃光に進化しているらしかった。

 こ、これ、影響範囲ちょっと広くない……?


「私は大丈夫だけど……」


 仲間を巻き込まないか不安に駆られたが、どうやらバフを掛けているリーピアには影響ないらしい。

 そして肝心の蝙蝠はというと、地に伏してグッスリと眠りこけていた。


「やった! 視覚に働きかける能力だから、目が見えないタイプに通じるか不安だったんだ」

「これならどんな敵にも通用しそうね」


 僕らは嬉々として眠りこける蝙蝠の羽を切り取り、戦利品として持ち帰る袋に放り込む。

 そして僕らはどんどんとダンジョンの奥の方まで進んでいき、山盛りの蝙蝠の羽を持ち帰る事に成功した。


(つづく)

おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!


恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。


皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!


また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。


感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。


何卒よろしくお願いいたします!

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