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おやすみヒプノシス  作者: 0024
18/76

18.神官シース

普段前書き書かないんですけどちょっと宣伝です。

今回は『まちがいだらけのプリンセス』や『妄想★マテリアライゼーション』とのクロスオーバーネタが多めです。そちらも気になった方は是非読んでみて下さいね。

https://ncode.syosetu.com/n6777gl/ 『まちがいだらけのプリンセス』

https://ncode.syosetu.com/n8271gl/ 『妄想★マテリアライゼーション』

「温泉も堪能してすっかり回復したわね。そろそろ帰りましょうか」

「そうっスね。もう1日くらい休んでも良かったっスかね?」


「もういいよ……」

「俺も、こういう空気は少し……」


 温泉・混浴というシチュエーションを利用して初心で奥手な男性陣をからかう女性陣にすっかり精神を摩耗させられ、僕とガルデは早く帰りたい気持ちでいっぱいだった。


「ったく、いい大人なんだからあのくらいで恥ずかしがらないでよ」

「リーピアはオープン過ぎるって。もう少し恥じらい持ってよ」


「ガルデも結構純情っスよね~。いやはや、からかい甲斐があるっス♪」

「フリッター。いい加減にしないと本気で怒るぞ」


 と、僕たちが各々言い合っていると、一人の女性がクスクスと笑っているのを見かけた。

 恰好からすると、いわゆる神官……だろうか?


「……? あの、何か?」


 僕は気になって声をかけてみた。すると、彼女はとんでもない事実を口にした。


「あらごめんなさい。貴方たちの様子を見ていたら、つい先日会った勇者様と聖女様を思い出してしまって」


「えっ!?」

「ゆ、勇者、先に到着してたの!? 入れ違いなのかしら?」

「まぁ、別に良いんじゃないっスかね。無事グレイマウンテンに向かったんでしょ」

「俺たちが魔族を討伐してからドラゴンの道を通っていったのなら、ありがたいというかクエストを受けた甲斐はあったが……先に倒して進んだのなら徒労感があるな」


 僕らは口々にそれぞれの感想を述べた。


「あら、貴方たちもしかして『ドラゴンの道』を通ってきたんですか? あの魔族だらけの道を?」


 神官らしき女性は僕たちに尋ねる。


「はい、実はかくかくしかじかで」


 と、僕はこれまでの道程と、そこへ来るまでの経緯を話した。

 ただし、『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』については例によってナイショ。


「まぁ……神様のお導きとは続くものですわね。丁度、勇者トルス様と聖女リエル様は昨日、ここグリモル村からグレイマウンテンへ登り、そして魔界への道を突き進んだところなのですわ」


 彼女……旅の神官であるシースさんは、勇者と聖女に出会った事、自分が魔界経由で北大陸から中央大陸まで移動してしまった事などを話してくれた。


「あ、そうなんですね! 良かった……」


 僕たちがグリモル村に着いて休憩し始めたのは3日前。

 つまり僕たちが魔族をいくらか減らしてから、勇者である彼らが通って行ったことになる。


「それは良かったっスね~」

「あぁ、タイミング的に入れ違いになるかギリギリだったな」

「ま、どっちでも契約的には関係ないけどね」


 リーピアの言う通りではあるが、依頼人の魔道士さんが言うには『勇者達の行く末を手助けしてあげて欲しい』というのがクエストの出願理由だったそうなので、それを果たせるに越したことはない。


「ええと、じゃあ貴女……シースさんはこれから北大陸へ戻られるんですか?」


 と、僕は尋ねるが、シースさんは言い淀んだ。


「本来ならそうしても良いのですが、元々流浪の身ですし……それに、中央大陸は北側へ渡ろうとするとグレイマウンテンを始めとした巨大な山脈に遮られますから……船か、もしくは西・東・南大陸経由で南下したほうが良いかもしれませんわね」


 なるほど。シースさんはどうやら、道を決めかねている様子だった。


「じゃあ、僕たちと同行しませんか? これでも腕に覚えはありますから」

「道中の魔族を蹴散らしてきたのも私たちなんですよ」

「旅は道連れ世は情け~っていいまスからね」

「女性一人旅は中々堪えるでしょう」


 僕らが口々に言い募ると、シースさんは感極まって十字を切った。


「ああ、これも神様のお導きでしょうか。良ければ同行させて下さいまし」


 そんな訳で、僕らは新たな仲間として一時的に旅の神官・シースさんを加えることになったのだった。


 ◆◆◆


 ドラゴンの道を引き返す頃には、どうやら勇者トルスと聖女リエルの活躍もあって、ほぼ魔族は出なかった。狩り尽くされたと言っていいだろう。おかげで、僕とリーピアが『無敵催眠(おやすみヒプノシス)』でシースさんを巻き込まずに済んだ。


「シースさんって、回復魔法を使えるんですね」

「神官の端くれですから。もっとも、グレイマウンテンの山中で怪我をしていた時は魔力が尽きていたので、リエル様の魔法で回復して頂きましたけれど」


 シースさんはちょくちょくダメージを受けてしまった僕たちの傷を回復魔法で癒してくれた。

 優しい光に包み込まれて傷が癒えていく様子は、まさしく神の奇跡といった感じである。

 普段は僕たちは自然治癒か、傷の深く残りそうなものについては町の神父様や神官様に回復の祈祷をお願いしている(当然、そちらは有料である)。

 シースさんのような物腰柔らかで綺麗な女性に回復してもらえるというのは、結構レアな体験だった。


「あ、スレイドちょっと鼻伸ばしてる。やーらし」

「何を言い出すの!!」


 僕はリーピアのからかい口調に参ってしまう。

 確かにシースさんは美人だし、ふんわりした体形がいかにもこう、大人の女性って感じで素敵だけど……。


「そういやシースさんって、北大陸出身なんですか?」


 僕は話題を逸らすためそんな話を聞いてみた。


「はい、生まれも育ちも北ですね。とはいえ、諸国流浪の旅をするうちに、中央大陸以外はあらかた主要な町に宣教・祈り・巡礼などの目的で参りましたが……」


 どうやら結構な年数を過ごしているらしい。幾つなんだろう……雰囲気的に30歳前後かな?


「アタシも北っスよ。仲間っスね」

「へえ、そうなんだ」


 フリッターが今更ながらに出身地の話などをする。僕は初耳だったので興味深く聴いていた。


「北は寒い町が多いっスけど、良い所も多いっスよ。食べるものも美味しいし」

「漁港が凍り付く冬は困りものですけれどね」


 北大陸でも位置によっては全然話が合わない事があるらしいが、二人は近いところが出身なのか、あるあるトークみたいなもので盛り上がっていた。


「ガルデは南大陸のリクラスタ出身だったよね」

「そうだな」


 リクラスタというのは、ガルデと知り合った町であり、また僕が以前にギルドを追放された時に逗留していた、あの町の事だ。王都ベルロンドにほど近いあの町は、ガルデのホームでもあるのだ。


「私が西大陸のセスタ出身でスレイドが東大陸のジルキス出身だから、中央以外は全員揃ってるのねえ」

「あら、セスタ!? まぁまぁ、あの敬虔な聖職者が多いという」


 その話題に食いついたのはシースさんだった。流石神官である。


「ええ、まぁ。聖都アストリアが滅亡してからは、すっかり意気消沈した様子ですけど」

「そうですわね。でも、リエル様が勇者トルス様と手を組んで魔王をきっと討伐して、復興を遂げて下さると思いますわ」


「そう願いますけどね。故郷セスタのためにも、勇者様と聖女様のお二人には頑張って欲しいですね」


 期待はしてないけどね、みたいなドライな物言いはリーピアらしいといえばらしかった。


 果たして勇者様と聖女様が魔王を倒せるのかは、今の僕たちには全く知る由もない事だった。


(つづく)

おやすみヒプノシスをお読みいただきありがとうございます!


恐れ入りますが、以下をご一読いただければ幸いです。


皆様からのブックマーク、評価が連載を継続する力になります!


【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると幸いです!


また、つまらなくても★ひとつ頂ければと思います。


感想・レビューなどを頂けると、展開もそちらを吟味した上でシフトしていくかもしれません。


何卒よろしくお願いいたします!

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