17.踏破しろ!ドラゴンの道
普段前書き書かないんですけどちょっと宣伝です。
今回は『まちがいだらけのプリンセス』や『妄想★マテリアライゼーション』とのクロスオーバーネタが多めです。そちらも気になった方は是非読んでみて下さいね。
https://ncode.syosetu.com/n6777gl/ 『まちがいだらけのプリンセス』
https://ncode.syosetu.com/n8271gl/ 『妄想★マテリアライゼーション』
「うひゃっ! 下級魔族じゃないっスか! あ、あれ、中級魔族では!? や、やっぱコレ、結構キツめのクエストっスね!?」
レンジャーであるフリッターが率先して『ドラゴンの道』の偵察を買って出たのだが、その様子から判断するに、僕たちの『実力』だけでこなすには、やや厳しいクエストである、という印象を受けた。
「報酬高いだけの事はあるわよね。ぶっちゃけ、S級に近いんじゃない?」
「かもな。本来なら軍を動員する案件に近いと思えてくるぜ」
「ウチのギルドの評判、大分上がっちゃったんだねぇ……」
僕らは口々に感想を言い合う。
「ぷはーっ! いやーヤバいっス。アタシの隠蔽の能力も殆ど通じないっスよ、あいつら。ガチで魔王の配下の連中なんじゃないっスか?」
「だろうね」
僕は言う。
そりゃ、魔王のいる中央大陸へ続く、南大陸とを繋ぐ唯一の陸路だけはある。
ここを突っ切って、一旦中央大陸まで進むのが僕らの目的。
その際、どれだけ多くの魔族を蹴散らせるかもポイントだ。
「戻ってくるまでにも、だがな」
「報酬に見合った難易度ね。さて、どうする?スレイド」
「うーん、これはとても『無敵催眠』を出し惜しみしていられる状況じゃないね」
僕は少しだけ思案して、そう結論付けた。
このクエストで手抜きは即、死に繋がる恐れがある。
故に僕とリーピアが先導して、魔族の連中を眠らせて行こうという作戦を考えた。
「んじゃ、アタシとガルデが半径50m範囲外から様子見て、万一ガチの戦闘になったら駆けつける、って感じっスかね」
「そうだね。これだけ長い陸路だから、途中で僕とリーピアの能力回数制限を超える恐れもある」
「そうね~……長丁場になるわね」
「よし。大まかにはその作戦で行こう。万一のことが起きたら……」
そうして僕たちは、細かな作戦を立てて『ドラゴンの道』踏破に向けての準備を整えていくのだった。
◆◆◆
「……とはいえ、普通に進む分にはただ眠らせていくだけよね。何なら刺激せず放置してても良いかも」
「そうは行かないよ。魔族相手に使うのは初めてでしょ?」
リーピアが眠らせるだけ眠らせて放っておく手もあるわ、みたいな事を言い出すが、僕は警戒していた。
「そうだな。通じているのは確かだが、どこまで継続するかは不明だし、眠っている間に確実に葬り去るべきだ」
「賛成っス。手抜きしたら後で痛い目に遭うかもっスよ」
「そうね。じゃ、慎重に行きましょうか」
リーピアもガルデとフリッターの意見に納得し、とにかく手当たり次第に襲ってくる魔族を眠らせては、半径50m外で待機してくれているフリッターの弓矢攻撃と、眠ったことが確実になってから近づいて止めを刺してくれるガルデ、というコンビネーションで地道に敵勢力を削っていくのだった。
◆◆◆
「よ、ようやく着いた」
何せ大陸と大陸を繋ぐ道の距離である。
それから僕たちが中央大陸まで到達したのは、約7日後であった。
「はーっ、参ったわね。数が多いのなんのって」
「これで勇者と聖女が先に着いてたら笑うっスね」
「まぁ、それはそれで安心出来る事だから良いんだがな」
リーピアとフリッターとガルデが口々に感想を述べた。
「どうしよう? すぐさま引き返す? それとも、少しあの山のほうまで進んでみる?」
「契約的には『ドラゴンの道』の踏破と道中の魔族の討伐だけでしょ? あの山、魔王の住処のグレイマウンテンよ。あまり近づかないほうが良いわ」
僕の提案に、リーピアはドライな意見を述べた。ガルデとフリッターにも意見をうかがう。
「アタシも今回はリーピアさんに賛成っス。キツいっスよコレ。マジで」
「俺も今回はリーピアに賛成だな。確かにお前らの能力はギリギリ回数の範囲内に収まったようだが、もう少しでガス欠になる所だったろ?」
「……そうだね。これ以上の危険を冒すのは、やめておこうか」
そう、僕とリーピアの能力使用制限回数は、ものすごく多いのだけれど、今回の冒険はその回数を超えそうになるくらいに魔族の襲来が多かった。
ゆえに、引き返す前に休憩が必要なのは明白である。
「少し歩いて、町か村があったらそこで休憩してから戻らない? ここで野営でも良いけど」
僕は提案してみる。ガルデは乗っかってきた。
「そうだな。山の奥まで近づくのは少し危険だと思うが、麓なら……」
すると、リーピアとフリッターが口を挟んできた。
「グレイマウンテンには近づかないほうがいいって言ったけど、麓の村は安全よ。私の家族が前に行った事あるらしいの、西大陸からね」
「あ、アタシも知ってるっスよ。グリモル村ってのがあるんス。温泉宿あるんスよ、あそこ」
「よく知ってるな、二人とも」
女性陣の知見にガルデは感心する。
……そういえば、以前にリーピアは『旅行好きの家族がいる』とか言っていたな。
フリッターは、レンジャーという職業柄なのだろうか、地理にも詳しいらしい。
「アタシ、案内するっスよ」
「じゃ、お願い、詳しい場所までは知らないのよね、私も」
そんな訳で、フリッターの先導で僕たちはグレイマウンテンの麓、グリモル村へ一時逗留するべく向かうことになった。
◆◆◆
「うはーっ! 温泉宿サイコーっスね!!」
「きゃっ、もう、バシャバシャしないで!!」
かぽーん。
「……」
「……」
女性陣二人がワイワイ騒ぐ傍らで、僕たちは硬直していた。
「なんで、混浴だってことは黙ってたの……? フリッター」
僕はフリッターにそれだけ言うのがやっとだった。
「え? 面白いからっス」
「やめてよそういう感じ! リーピアと同じだよ!!」
するとまたリーピアがニヤニヤと嘴を挟んでくる。
「えー? 何恥ずかしがってんのよ、年上のくせに」
「そのノリも久しぶりだね! やめてって言ってるのにー!!」
フリッターは意外そうな顔をした。
「え、年上なんスか? スレイド、16歳くらいにしか見えないんスけど」
「そういえば、スレイドは20歳超えてたな。えーと」
「24歳だよ! もうすぐ25歳だけどね!」
「あはは、こう見えて私より8つも上なんだよねえ」
僕たちはそんな風にワチャワチャと騒ぎつつ、温泉宿の一晩を過ごすのだった。
(つづく)
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