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【短編】顔で支払う男

作者: 宜野座

 時代はキャッシュレス決済だ。今時、財布からお金を出して店員さんとやり取りなんてナンセンス。

 スマホ? いや、俺はスマホも持たない。俺の決済には何のアイテムも必要ない。

 じゃあどうやって支払うのか、だって? 

 ふっ、この顔さ。俺のきらめくような笑顔を見せれば、大抵の店員さんはイチコロだ。


「お会計570円です」

 今、ちょうどコンビニでお会計をするところだ。見せてあげるよ、俺のお会計を!

 俺はサッと髪をかき上げ、流し目でレジのおばちゃんを見つめながら渾身のキメ顔を放った。

 どうだ。おばちゃんは言葉を失っている。俺のあまりの美貌に胸を撃ち抜かれたのだろう。

 ふふっ、これでお会計は完了。あとは店を出るだけだ。

「じゃあね!」

 おばちゃんにウィンクを飛ばし、俺はレジを離れた。

 もはや決済すらしない、これが本当のキャッシュレス決済なのだ!


 外に出る。ああ、太陽の光が眩しい。今日も俺専用のスポットライトがフル稼働しているようだ。

 さて、家に帰「ねえ」

 む、肩を誰かに掴まれた。

 振り返ると、胸に『店長』という名札を付けた大柄の男性が立っていた。

「それ、お会計してない商品だよね?」

 男性が俺の手にぶら下げられたビニール袋を指差す。

「はっはっは人聞きの悪い! ちゃんと支払いましたよ顔で! キャッシュレスですよキャッシュレス! スマイル1回払いです!」

「あ、うん、話は事務所で聞くからこっち来てくれる?」

 俺の肩を掴む力が倍以上に強くなった。

「はっはっは店長さんそんなに力入れたら痛い痛い痛い! ちょ、痛いシャレならんくらい痛い! ごめんなさいほんの冗談のつもりだったんですマジで痛い痛い痛い!」

 俺はそのまま問答無用で事務所まで引っ張られた。


 そこから警察が来るまでの間、必死で店長さんに俺のキャッシュレス決済の仕組みを説明したがまったく相手にしてもらえず、俺はそのまま窃盗犯のレッテルを貼られることになってしまった。

 時代が俺に追いつくのは、まだまだ先のことになりそうだ。

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