1.にぎやかな食卓
蒼の家にお呼ばれした早夜、初めて招待された日の事を思い出します。
亮太と別れ、蒼と二人で家路につく最中、早夜はふと思い出した。
「そういえば……初めてお呼ばれした時も、確かすき焼きパーティーだったよね」
「ああ、そーいえばそうね、早夜が転校して来て暫くの事だったわね……」
そんな話をしながら、早夜は当時を思い出していた。
~~~~~~~~~
転校して来たばかりの早夜は、まだ慣れない学校で蒼という存在に出会った。
彼女は真っ先に早夜に話し掛け、その破天荒な行動と気安い言動に引き込まれていった。
そうして直ぐに仲良くなった二人。
それから蒼は、同じクラスの亮太と言う少年を紹介した。彼とは家が隣同士の幼馴染だと言う。
紹介された彼は、背筋を伸ばし緊張した様子で挨拶をしてきた。
「は、初めまして! 杉崎 亮太と言います!」
「あーもうっ! そんなに硬くならなくても……こいつさー、早夜を初めて見た時、ずっとぽーとした顔で早夜の事見てたのよ!」
「ばっ、馬鹿! 言うなよ!」
自分の想いをバラされたと思い、慌てる亮太だったが、当の早夜はきょとんとした顔をしている。
「ん? ぽー? 眠かったの?」
不思議そうに首を傾げる早夜は、本気で分からないらしい。そして、その事にぽかんとする蒼と顔を赤くする亮太。
「んもー、早夜ってば!! ずっとそのままでいてね!」
すぐに我に返り、わなわなと身体を震わせたと思えば、次の瞬間にはその腕に早夜を閉じこめる。
思えば、この時が初めて蒼に抱きしめられた瞬間だった。
そして、暫くの日数が経った時の事、蒼は早夜を家に招待した。初めての蒼の家に、少々緊張気味の早夜。
蒼が「ただいまー」と言って、玄関のドアを開ける。
そして最初に出迎えてくれたのは、優しく可愛らしい感じの女性だった。ふわふわの髪にフリルのエプロン。その下は白いシャツにジーパンという出で立ち。
彼女は早夜達二人を見ると、ふわりと笑った。笑顔も可愛らしい人だった。
「おかえり蒼。いらっしゃい、あなたが早夜さん?」
しかし、その口から溢れる声は、予想に反してとても低くて――。
「ええっ!?」
思わず声を上げずにはいられなかった。その声はどう聞いても男性の物で――。
「早夜、この人は私の父親の蓮実ちゃん。見ての通り専業主夫してまーす」
蒼は早夜のその反応を予期していたのか、ニヤニヤと笑っている。
その時、玄関が開いて振り返ると、とても背の高い男性が入ってきた。その男性は「ただいま」と言って扉を閉めると、早夜と目が合った。
彼は“ドサッ”と音を立てて肩に掛けていたバックを落として呟いた。
「……て、天使……」
そして身体をわなわなと震わせた。
それは蒼のあの行動にとても似通っていて、我知らす身構える。
「僕の妹になって下さいっっ!!」
そして、予想通り早夜に抱きつこうとした。
「やめんかー!!」
「ぐはぁっ!!」
見計らったように見事に決まる蒼のアッパー。
男性は顎を押さえて、崩れるように膝を折った。
「もうっ! 恥ずかしいったらない! やめてよねっ、早夜に対して変態行為働くのっ!!」
そんな男性を見下すように、蒼は仁王立ちで早夜の前に立つ。その眼差しは絶対零度の如く冷えきっていた。
「そっかー……早夜チャンって言うのかー……」
しかしながら、そんな凍るような眼差しを受けても尚、殴られた顎をさすりながら、でれっとした顔をしている。
彼の顔立ちは蒼に良く似ており、眼鏡を掛けていた。
黙っていれば、知的な美青年であったが、だらしなく緩みきった今の表情が全てを台無しにしていた。
「ごめんねー、早夜。こいつは、私の兄で楓って言うんだけど、見たとおりロリコンの変態だから近づかない方がいいよ」
シッシッとまるで虫を追い払うように手を振る。
「んなっ!! 兄に向かってその態度! お兄ちゃんはお前をそんな子に育てた覚えはありませんっ!」
「いや、育てられてないし……」
蒼は冷たく言い放つ。
その時、また玄関のドアが開き、丁度その前に立っていた楓は思い切りそのドアにぶつかった。
「おふっ!?」
そんな声をあげて楓は前に突っ伏する。
「何やってるんだい? そんなとこにうずくまれると邪魔だよ?」
そこに立っていたのは、物静かで綺麗な顔立ちの男の人……に見えた。声は高すぎず低すぎず、中性的と言える。
「茜さん! お帰りなさい!」
そして、嬉しそうに顔を赤らめて迎える蓮実。女顔負けに可愛らしかった。
すると、茜と呼ばれた男? 女? の人は、蕩ける様な艶っぽい顔つきで蓮実を見る。
「ただいま、蓮実。私がいない間、寂しくなかった?」
茜と呼ばれた人物は蓮実に近づくと、その腰に手を回し、顎に指を添えると上向かせる。
「も、もう、茜さん。子供たちが見てるよ……」
恥ずかしそうに目を逸らすと、茜は漸く早夜の存在に気付いた様子だった。
「おや? この子は……もしかして君が早夜さん? 蒼から話は聞いてるよ。はじめまして、私は蒼の母で、蓮見の妻の茜です」
そう言ってにっこり笑う茜に、目のやり場に困るように早夜は顔を俯かせる。その色っぽさは早夜には刺激が強すぎた。
「は、はじめまして」
殆ど消え入りそうな声だった。
(ぎゃ、逆転夫婦!?)
そんな感想を蒼の両親に持った早夜であった。
その四人で美名月家の家族全員だった。
しかし、食事の用意されたテーブルには、椅子もスペースも余裕があった。何より、鍋が二つあるのは何故だろう。
その時、奥の方にある扉がガチャッと開き、小学生くらいの子が入ってきた。女の子かと見紛うばかりに可愛いが、服装から男の子と判断する。
「あ、もう準備万端だね! あれ? そこのお姉さんは?」
その男の子は、早夜を不思議そうに見やる。
「早夜、紹介するわね。隣の家の子で、海里って言うの。可愛いでしょ? これでも男の子だからね」
蒼は海里と呼ばれた子の頭を撫でる。早夜は予想が当たり、納得するように頷いた。
「もう、やめてよ! これでも気にしてるんだからね! でも、早夜っていつも話に出てくる人?」
子供特有のキラキラした眼差しで訊ねる。
そして、そうだと確認すると、姿勢を正し頭を下げた。
「いつも兄がお世話になっています」
「ああ! もしかして亮太君の弟さん?」
海里のそんな様子を見て、納得した様子の早夜。この礼儀正しさは、亮太の姿を思い起こされる。
その時、キッチンで野菜を切っていた蓮実が声を掛けてきた。
「早夜さん、家の人にはちゃんと連絡取った?」
それ聞くとハッと顔を上げる。
「あ、そういえばまだでした!」
慌ててケータイを取り出す。
「序でだから、家の両親も写したら? 安心するんじゃない?」
蒼はキッチンからそのまま蓮実を連れてきた。
「私も別に構わないよ?」
茜は早夜の手を取り、自分と蓮実の間に立たせた。
「私が撮ったげる!」
蒼が早夜の手からケータイを受け取ると、そのまま撮影して「送信っ」と言って送ってしまった。止める暇もない早業であったが、早夜はまぁいいかと返されたケータイをしまうと海里に尋ねた。
「そういえば、海里くん。どうして蒼ちゃんの家にいるの? あ、もしかしてご両親が留守とか?」
早夜が尋ねると、何とも微妙な顔をする。
「うーん……留守は留守なんだけど……。何とゆーか……そんなのは関係なく、いつもご飯食べる時は一緒だよ?」
「え? 何で?」
「それはね……私たちの親が両方共、凄まじく料理が下手だからよ……」
「ひゃあっ!?」
その時、後ろから突然話しかけられ思わず声を上げていた。
そこに立っていたのは、何とも色っぽい大人の女性。
大きく胸の開いたドレスを着たその女性は、早夜を見て艶っぽく笑う。
まるでパーティーにでも行くかのような格好に、早夜は目を白黒させる。
「私は亮太の姉の百合香って言うの、よろしくね?」
そう言うと、早夜をふわっと優しく抱きしめた。百合香の柔らかい胸と、とてもよい香りに包まれ、早夜は真っ赤になってしまう。
「あわわっ、は、はじめましてっ。私、亮太君と同じクラスの桜花 早夜っていいます」
「うふふ、かわいい子。私の妹になる?」
百合香は更に強く抱きしめ、甘い香りが強まった。
何やら先程も同じ事を言われたような……と、思わずにはいられない。
「ずるいぞ百合香!! 早夜チャンは僕の妹の友達! と言う事は僕の妹も同然! さあ、早夜チャン! お兄ちゃんの胸に飛び込んでおいで!!」
先程同様、楓が両手を広げ此方に向かってくる。
思わず身構えるが、それより早く、百合香がそっと離れて、ゆらりと揺れたかと思うと、それはもう見事な正拳突きを向かってくる楓に繰り出していた。
楓は「ぐはぁっ!!」と言う呻き声と共に翻筋斗打ってソファーの上に倒れる。
「ユリ姉は、ああ見えて、武術の達人なの」
あまりの光景に、いまだ呆然としている早夜に蒼は教えてくれた。
その時、家のチャイムがけたたましく鳴った。
「はーい」
玄関に向かう蓮実。
「今頃誰だろう?」
と、不思議そうな蒼。
すると、玄関の方から声がして、その声は此方に向かっているようだった。
そして“ばんっ!!”と大きな音と共に扉が開き、出てきたのは――。
「早夜!! 大丈夫!!?」
「お、お母さん!?」
早夜の母、アヤだった。
一瞬静まり返る室内。
「お母さん、何で此処に……」
呆然としたまま呟く早夜。
肩で息をして、スーツ姿もアップにまとめた髪も、今や見る陰もなくボロボロだ。余程急いできたのだろう。
アヤは早夜を確認すると、ひしっと掻き抱き、そして叫んだ。
「家には身代金を出せる程、お金持ちじゃありません!!」
『はっ!?』
見事に声の重なる一同。そんな一同に逆にポカンとして、アヤは一言言った。
「え? 誘拐じゃないの?」
またもや静まり返る室内。
「な、何でそう思ったの?」
呆れた様子で訊く早夜に、アヤは自身の携帯を見せる。
「だ、だって、包丁持ってたからてっきり……」
見れば確かに包丁を持っている蓮実の姿が……。
確かに、先ほど調理をしている彼をそのまま連れてきて撮影したのだ。
「……えーと……お料理の途中だったんですよ……」
非常に困った顔で蓮実は言う。
「お母さん……エプロン着てるでしょう?」
疲れた声で呟く早夜。
(穴があったら入りたい、かも……)
物凄く恥ずかしく、居た堪れなくなった。
周りを見回し、そこで漸くアヤは顔を真っ赤にする。
己の失態に気づいたようだ。
「ご、ごごごごめんなさい!! 私ったら早とちりしちゃって! 本当にすみません!!」
アヤは深々と頭を下げ謝罪をする。そんなアヤに蓮実は微苦笑を見せると、安心させるように言った。
「いえ、子供を心配するのは親として当然の事ですよ。僕は気にしませんから、どうか顔を上げて下さい」
漸く落ち着きを取り戻すアヤだったが、蓮実を見て「んっ?」と違和感を覚えた。
顔と声が一致しない……。しかも“僕”……?
「それより、どうして此処が分かったの?」
「……えーと……ケータイのGPSよ」
「GPS? そんな物付いてたんだ……」
そんな会話を早夜と続けていたアヤであったが、更なる違和感を感じて蓮実と茜を交互に見て首を傾げる。
恐らく慣れた反応なのだろう。そんな様子を見て、別段機嫌を悪くするでもなく、茜はフッと笑うと立ち上がり蓮実の隣に立つ。
「どうも、葵の母で茜と言います。そして、こっちは夫の蓮実です」
それでやっと納得するアヤ。胸のもやもやが取れた。
「それより、お母さんも一緒にどうですか? お夕飯これからなんですよ」
しかしアヤは慌てて首を振った。
「い、いえ、実は会社をそのまま出てきちゃって……これから急いで戻らないと……」
そして時計を見ると、目の色を変える。
「ああっ! 本当に急いで戻らないとっ!
それじゃあ失礼します。本当に御免なさい。後でちゃんとお詫びはしますから!
早夜、それじゃあお母さん行くから、何かあったらすぐ連絡するのよ!」
アヤは慌しくその場を後にする。
「……えっと、そそっかしいお母さんだね……」
「……うう、ごめんなさい……」
居た堪れない思いをする早夜であった。
そんなこんなで、色々あったが、無事夕食へとあり付く一同。
『いただきます』の挨拶のもと食事が始まった。
「ほら早夜、お肉お肉」
蒼がどんどん早夜の器に肉を入れてゆく。
「うわ、そんなにいっぱい」
軽く肉のチョモランマとなる器を見て、早夜は目をむく。
その時“バンッ!!”と、奥の扉が勢いよく開いた。
一同そちらを見るが……。
「っっっ!!!」
そちらを見た瞬間、早夜は金縛りにあったように動かなくなった。
何故なら、そこに立っていたのはどぎついメイクと奇抜なファッションに身を包んだ男性。髪もつんつんと立っており、ジャラジャラとアクセサリーもつけている。
いわゆるパンクファッションと呼ばれるものだが、早夜にとっては未知との遭遇。
その後ろからは、金髪の可愛らしい青い目をした女性が出てきた。
「ただいまー!! ツアー終わってそのまま帰ってきちゃった!!」
女性は、見た目どうりの可愛らしい声で言うと、テーブルを見て顔を輝かせた。
「あー!! すき焼きだ!! 翔さん帰ってきてよかったね! 翔さん大好きだもんねっ、すき焼き!」
そんな言葉を最後まで聞かず、その派手な姿をした男性は席に着く。
金髪の女性もその隣にいそいそと着席すると、蓮実が慣れた様子で彼らの前に食器を並べていった。
「お疲れ様です、先輩。今日のライブはどうでした?」
「んっ!」(大きく頷く)
「そうですか、良かったですね」
ご飯が山盛りの茶碗を渡された男性がふと此方を見た。
「っぴ!!?」
その目力に思わず肩をビクッと震わせてしまう。
男性は無言で、そんな早夜を見続けている。
こんこん、ぱかっ(卵を割る音)。
ジーーー(早夜を見ている)。
カッ、カッ(卵をかき混ぜる音)。
ジーーーー(早夜を見ている)。
ちゃぷっ(肉を器に入れる音)。
ジーーーーー(早夜を見ている)。
もぐもぐ(肉を食べている音)。
「あれ!? そういえば、この子誰?」
そろそろ、この無言の圧力に耐えられなくなってきた頃、金髪の女性が早夜に気付いた。
「ああ、早夜さん。この人達は亮太君のご両親だよ」
「ええーっ!!」
思わず叫んでしまい、慌てて口を塞ぐ。改めて、この二人に向き直ると、ぺこりとお辞儀をした。
「は、はじめまして。わたし、桜花早夜と申します!
亮太君にはお世話になっています!」
「はじめましてー、亮太のママのマリアでっす!
そしてこっちにいるのが、亮太のパパで、マリアの愛するだんな様! 翔太郎さんだよ!!
マリアたちは皆「翔さん」って呼んでるから、早夜ちゃんもそう呼んであげてね!!」
そう言ったのは、どう見ても十代にしか見えない金髪に青い瞳の外国人。
紹介された翔太郎は箸を置くと、胸ポケットから一枚の紙を取り出し、早夜に手渡した。
「……こちらこそよろしく……」
そう呟く翔太郎に、ざわっと皆がざわつく。
「しゃ、しゃべった!」
「あしたは雨、いや雪か?」
「本当久しぶりだねー」
「いつぶりだっけ?」
「確か、お正月に、新年の挨拶を言ったっきりよ……」
そんな感じに、各好き勝手にしゃべる一同。
ただ一人、マリアは平然としており、早夜を嬉しそうに見ている。
「早夜チャン良かったねー! 翔さん気に入った人にしか、そのチケット渡さないんだよ!」
この紙はどうやら、ライブか何かのチケットのようだった。
「ありがとうございます……」
とりあえず、お辞儀をして礼をすると「ん」と言って、翔太郎は早夜の頭を撫でた。
「あー! 翔さんに頭撫でてもらってるー! いーなー……」
羨ましそうに指をくわえるマリアに、百合香が提案した。
「じゃあ、私がママを撫でてあげるわ」
そんな事を言ってマリアの頭を撫でてやる。
「ん? えへへー、ユリちゃんに撫でてもらっちゃったー」
嬉しそうに頬を染め大人しく撫でられている様は、まるでマリアの方が娘の様である。
(こ、今度は逆転親子?)
改めて、この二組の家族は変わってるなと思う。しかし、自分が知らないだけで、世間の一般家庭では皆こんな感じなんだろうか。
少々ずれた認識に陥ってしまう早夜であった。
丁度その時である。ドサッと音がして、今度は何だろうと其方の方を見ると、そこには亮太が立っていた。
「な、何で桜花さんがここに!? ってか、何で親父に頭撫でられてるんだ!!?」
「何でって、私が呼んだに決まってるでしょ?」
何を当たり前な事を、と蒼は亮太を見やる。そこで思い出したように早夜を振り返ると言った。
「あ、そういえばまだ言ってなかったけど……美名月家と杉崎家、あそこの扉で繋がってるから」
先程から杉崎家の面々が出てきた奥の方にある扉を指差す。
「お庭もつながってて広いんだよー! お休みの日には、バーベキュー大会とかやるんだよ!」
そう言ったのはマリアである。
「ほら、早夜早く食べよう。お肉硬くなっちゃうよ」
そうしてまた食事は再開される。
亮太は今だ、呆然とそこに突っ立っていたのだった。
~~~~~~~~~
「あの時は、色々ありすぎて、忘れられない一日になったなあ……」
しみじみと呟き、遠い目をする早夜。
「あはは! 早夜驚きっぱなしだったよね!
でも、早夜のお母さんには私も驚いたわ。早夜のお母さんって、そそっかしいのね」
「うん……。あ、そういえば……この前、お母さん歯ブラシを持ったまま、朝家を出ようとしてたよ」
「はっ!? 何それ? どゆこと?」
「何か、携帯と間違えたらしいよ……」
その時の事を思い出し、困ったように笑う。
「ええっ!? 歯ブラシと携帯って……全然違うじゃん!」
爆笑する蒼。そして、ふと気付いたように言った。
「そー言えば、早夜のお母さんって、キレイだけど何か似てないね」
「うん、よく言われる」
「お父さん似?」
「うーん、どうだろう……そういう話すると、お母さん泣いちゃうんだよね。だから、聞けなくて……」
早夜は俯いた。
そんな早夜に感じる何かがあったのか、「そっか……」とそれ以上訊く様な事はせず、話を終わりにするのだった。
ようやく出したかった蒼たちの家族です。
早夜達も入れて、総勢11人。
わかりやすくすると、
美名月家
父、蓮実 母、茜
兄、楓 妹、蒼
杉崎家
父、翔太郎 母、マリア
姉、百合香 兄、亮太 弟、海里
となります。