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異界の旅人  作者: ろーりんぐ
第二部《序章》
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おまけ(癒し手花ちゃん)

「蒼ー、大丈夫ー?」

「ええ、大丈夫よ、花ちゃん。ありがとう」


 包帯と呪符の巻かれた腕を、花ちゃんは献身的に擦る。

 蒼にとって、触れる事さえ痛い筈のその場所は、不思議な事に花ちゃんが触ると痛みが和らいだ。

 だがそれは、治る訳でもなく、その傷はゆっくりとだが着実に進行してしていっている。

 いまや、肘を超えつつある赤黒いしみは、蒼に言いようのない不安と恐怖を与えた。

 そして、その不安と恐怖はまるで、痛みへと変換されるようであった。


 と、そこに、扉をノックする音がして、部屋の中に亮太が入ってくる。


「よっ、蒼。メシ持ってきたぜ」

「あ。ありがとう、亮太」

「何だ、また痛むのか?」


 花ちゃんに腕を摩ってもらっている蒼の姿を見て、眉を顰める亮太。

 そんな彼を見て、蒼は苦笑すると首を振った。


「花ちゃんは暇さえあれば、こうやって擦ってくれるのよ。私が痛がってても、そうでなくてもね」


 蒼は亮太の前では、なるべく痛がったり不安な顔はしないようにしている。

 亮太はここの所、蒼に優しい。

 蒼に分かる程度の優しさではあったが、彼なりに責任を感じての事だと蒼には分かった。

 守れなかったという思いがあるのだ。

 だから蒼は、これ以上心配させる事の無い様に、笑顔を見せる。


「メシ、食えそうか?」


 心配そうに訊ねてくる亮太に、蒼はニッと笑ってこう言った。


「何? 食べさせてくれるの?」

「うっ……」


 一瞬たじろぐ亮太であったが、直ぐに蒼に向き合うと、


「ム、ムリそうならそうする……」


 そう言って、硬い表情でスプーンを手に構える。

 そんな彼に、蒼は噴き出すと、


「気持ちはありがたいけど、止めておくわ。あんたは早夜の事でも考えてなさいよ」


 早夜の名前を聞いた途端、顔を赤くする亮太に、蒼は苦笑した。

 そして、


(お願いよ。早夜の事だけ考えて。私なんかに構わないで。私が足手まといになってるのは分かってる。亮太だけであれば、早夜の所に行けたのに……本当に馬鹿よね……。お願いだから、優しくなんかしないでよ……)


 笑顔の裏でそんな事を考えている蒼。何だかまた、腕が痛くなってきた気がする。

 すると、花ちゃんがピトッと、蒼の腕を抱き締めてきた。


「花ちゃん……?」

「蒼ノ痛ミガ、無クナリマツヨウニ。僕ノ元気ガ、少シデモ伝ワリマツヨウニ……」


 その願いは、あまりにも純粋で健気で、蒼は花ちゃんを手の上に乗せると、自分の頬っぺたに押し付ける。

 花ちゃんは「キャー」と嬉しそうに叫び声をあげた。


「ありがとう、花ちゃん。ちゃんと花ちゃんの元気は伝わってるから。痛みも、花ちゃんのお陰で、大分楽よ。

 花ちゃんは、最高の癒し手ね」

「アウッ、本当デツカ!?  蒼ガ笑ッテ、喜ンデクレル事ガ、僕ハ一番嬉シイノデツ!」


 幸せそうに頬を染める花ちゃん。

 蒼は堪らなくなって、花ちゃんを両手で掴むと、そのもちもちとした体を、モギュモギュとし始める。


「お、おい、蒼!?」

「んもー! なんて可愛いのかしら! もう、うちの子、健気すぎるわ! そう思うでしょ? 亮太!」

「え? あ、ああ……そうだな……」


 正直、亮太も花ちゃんの言葉に感動を覚えたのだが、蒼のその興奮した様子に、少々尻ごみをする。

 何より、蒼の手の中で、モギュモギュと握られている花ちゃんを見て、大丈夫だろうかと心配になった。

 しかし、花ちゃんは、


「アウー、キャハハ。クスグッタイデツー!」


 と、身もだえをしている。

 そして、花ちゃんをモギュモギュとしている蒼の顔は、至福そのもので、そんな蒼を見て、

(そんなに気持ちいのか!?)

 と、思わず自分も触ってみたくなる亮太であった。





 らぶりぃ花ちゃん、私もモギュモギュしたいです……。(ああ。癒されたい)

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