無題6
(ある男の日記)
『 全く、無駄な力を使ってしまった。
少年の死を知った者達が、私を倒そうと、次々に私に襲い掛かってきたのだ。
だが、更なる力を得た私の前には、どんな者も敵ではない。
しかし、少しだけ油断をしてしまった。
顔に傷を負ってしまったのである。
全く、あの少年以外は、全てゴミ以下だ。
少年の心臓を喰ったら、直ぐにでもこの世界を滅ぼしておくんだった。
私に歯向かうと言うのなら、望みどおりに滅ぼしてやろう 』
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『 あの少年の居た世界は、キレイさっぱり滅ぼしてやった。
少しは気分が晴れた。
顔の傷が少し痛むが
これ位は魔法を使わずとも、自然に治るだろう。
さて、次は何処に行こうか。
“万物の力”を持つ者を探さねば 』
〜次ページ〜
『 何という事だ!
顔の傷が治らない。
どんな治癒魔法を行っても、一向に治らないのだ。
もしやあの時、呪を掛けられた?
だとしたら、どんな呪だというのだ!
私の知識をもってしても
その原因も、その解呪の方法も分からない。
そうだ、万物の力を持った者だ。
そいつの心臓を喰らえば、知識と魔力が得られる。
それで方法を見つけよう。
だが、如何すればいい?
こんな顔で、誰が私を信用すると言うのだ 』
(苛立ちからか、字が乱暴に書きなぐられている。かなり読みづらく、汚い言葉も書かれている)
『 私は仮面を被る事にした。
怪しいが仕方が無い。
なるべく見目が良い物にしたつもりだが、
これで、どれ程の人が信用してくれるのだろうか。
いや、この傷を利用して、人を信用させる手もあるかもしれない。
憐れみ、同情させるのだ。
そうだ、そうしよう。
ああ、早く喰いたい。
万物の力を持った者の心臓を 』
(その後、異界を次々に渡った事が記されている)
『 見つけた。
万物の力を持った人間だ。
まだ赤子だった。
もう少しだけ成長させれば
今よりももっと、力が安定するだろう。
成長させる為には、親は必要だ。
まずは親を懐柔させよう。
私と主を信用させた、あの旅人のように。
まずは怪しまれぬよう、事は慎重に運ばねば。
あの少年の時のようになっては、目も当てられないだろう。
そうだ、私の術で、少しづつ精神を壊してやろう。
そうすれば、子供が成長する頃には、
親は喜んで、子供を私に差し出す事だろう 』