表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の旅人  作者: ろーりんぐ
《第五章》
69/107

おまけ(花ちゃん隊長)

 ピー、ピッ! ピッピッピッ!


「アイ! ソコ! 動キガズレテマツヨ!」

「花チャン隊長、ツミマテンデツ!」


「ウァイ! ソコ! ソコハモット、動キニ切レヲ! コウデツ、コウ!」

「アイ! ワカリマツタ! オ見事デツ、花チャン隊長!」


「な、何してんの? あれ……」


 その光景を見た蒼は、呆気にとられた顔をする。


「さぁ……ってゆーか、すげー……」


 その隣に立つ亮太もまた、同じ顔をして、それらの光景を眺めている。


「フム、何でも、お前さん達の世界で会得したロボットの舞を、皆に伝授しておるようじゃの。

 あの子もすっかり、リーダー格ジャ」


 確かに、今や花ちゃんは、魔道生物達の先頭に立つ存在となっていた。

 そして、彼らの憧れの的となっている。

 花ちゃんから教わる、ロボットの舞や、ロボットアニメの話は、彼らの中で一種のステータスとなっていた。


「うーん……リーダー格ねぇ……」


 蒼は思い出していた。

 この前、花ちゃんは魔道生物を集め、日本で見たロボットアニメの話を、楓から贈られたロボットのおもちゃを使って説明していた。

 花ちゃんがそのおもちゃを動かす度に、彼らは感嘆の声を上げる。

 最初はそれ程でもなかった彼らの数も、日を追う毎に増え、今ではここに居る魔道生物全てにまで広がっていた。


 そして今、彼らにロボットの舞を教えている花ちゃん。

 皆、その踊りを見て、かつての花ちゃんのように衝撃を受け、その踊りを真似し出したのである。

 そしてやはり、その時も花ちゃんは、あの奇妙で微妙な顔と掛け声もそのままだったので、彼らもまた、そっくりそのままその部分を真似するのである。


「これだけ大勢でやると、圧巻よね……」


 ザッ、ザッと音を立てながら、数百という数の魔道生物達で、一様に同じ動きをしている。


「あの子等にとって、踊りは特別なものの様ジャからのぅ。妥協とかは一切しないのぅ」


 ピトが微笑ましげに見ている。

(こ、これの何処が微笑ましいのかしら……?)

 ピトを信じられない思いで見る蒼。

 すると、踊りを教えていた花ちゃんが、此方に気付く。そして、彼らの踊りを続けるよう、厳しい顔で言うと、パッと顔を輝かせて、蒼の元にやってきた。


「如何デツカ? 如何デツカ? 僕ラノ踊リ、大分、様ニナッテキマツタカ?」


 頬を紅潮させ、そう言ってくる花ちゃんに、蒼は苦笑しながら頷いた。


「ええ、凄いわね、これは……」

「今のままで、十分凄いって、花」


 蒼と亮太の言葉に、花ちゃんはフルフルと首を振った。


「ソンナ! マダマダナノデツ!」


 グッと拳を握る花ちゃん。更に高みを目指しているようである。


「おお、そうジャ! あれを見せてやっては如何ジャ? そっちも練習したんジャろ?」


 ピトに言われ、花ちゃんはハッと顔を上げ、


「ソウデツタ!」


 と大きな声を上げた。

 そして、「ピーー!」と笛を吹き、魔道生物達を集合させ、彼らに言う。


「我々ハコレヨリ、ロボット合体ノ成果ヲ見セマツ! 皆、練習通リニ頑張ルデツ!」


『オオーー!!』


 彼らの雄叫びが響き渡った。

 それから皆、円盤に乗り込み、花ちゃんの合図の下、列を組み、何らかの陣を取ってゆく。


「デハ! ポチットナ」


 花ちゃんが、円盤の中のとあるスイッチを押す。

 すると一斉に、


『ポチットナ!』


 と、皆が声を出し、スイッチを押していた。

 途端に、ミョミョンと円盤から、細いアームの様な物が出現したかと思うと、ガシッ、ガシッと隣同士でそのアームを繋げてゆく。

 それはやがて、一体の大きな人形ひとがたとなった。


「も、もしかしてこれって……」

「うおー、すげー……」


 蒼達は呆気に取られ、それを見上げていた。


「フム、ワシもロボットの話を聞いての、面白そうジャから、円盤をちょっと弄った」


 ピトが楽しそうに笑っている。


 ピーーピッ! ズシーーン!


 ピーーピッ! ズシーーン!


 笛の合図と共に、その巨大ロボットは、一歩一歩歩き出す。

 そしてその笛を吹いているのは、勿論、我らがアイドル花ちゃんである。しかも、ロボットの頂上に居たりする。

 花ちゃんは、物凄く真剣な顔で、彼らに指示を出している。


「それで、これって何が出来るんだ?」


 亮太がふと、疑問をピトに投げかける。

 ロボットならではの機能はあるのだろうかと思ったのだ。

 だがピトは、キョトンと彼を見る。


「何がって、何がジャ?」

「え? いや、ミサイルとか、腕とか飛ばしたりとか、出来るのかなって……」


 するとピトは、眉を顰めて言った。


「そんな事をしたら、あの子等が傷付いてしまうジャろーが……」

「え? じゃあ、ただ合体するだけ?」

「ウーム、そうじゃな……。重い物を持ち上げたり、運んだりする時は、便利かのぅ……」


 それを聞いた亮太は、頭を抱えた。ちょっと期待してしまった事に後悔する。

 そんな彼に蒼はポンと手を置いて言った。


「まぁ、平和でいいじゃない。花ちゃん達も楽しそうだし……」


 蒼は、巨大ロボットを見上げる。

 彼らは皆、真剣な顔をしていたが、その目はキラキラと輝いていた。





「ウオッ!? 何だ。これは!?」


 その時、丁度やって来たロイは、その巨大な人形を見て、度肝を抜かれた。

 そして、ズシーン、ズシーンと動く様を見て、顔を青くさせ、慌てて研究所を飛び出した。



「何言ってるの、ロイ? あんた、夢でも見てたんじゃないの?」

「そうミョ。巨大な人形が、研究所の中を闊歩していたなんて、夢以外ありえないミョ」

「そんな、夢じゃないのだ! この目でしっかりと見たのだ!」

「なら、目を開けたまま寝ていたんだミョ。器用な奴ミョ」


 ロイは泣きそうになった。


「ははは、それってつえーのか?」

「おお、信じてくれるか、カムイ! でも、強いかどうかは分からん。ただ物凄くデカかった」

「ピトがまた、何か研究でも始めたんじゃないか?」


 ムエイことリュウキが言った。

 すると、ミリアがパッと手を上げる。


「はい! 私もそう思います、ムエイ様!」

「ミリアがそう言うなら、イーシェもそう思うミョ!」


 そんな二人にロイはシュンとなる。


「我の言う事は信じなくて、ムエイの言う事は信じる……。何だか、物凄く悲しいのだ……」

「ははは! 元気出せ、ロイロイ!」


 バシーンとカムイに叩かれ、ロイは哀れ、地面に倒れ付すのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ