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異界の旅人  作者: ろーりんぐ
《第四章》
40/107

8.夕暮れの丘での懺悔

 帰途に付く早夜とリカルド。

 その前に行きたい所があると、早夜は言います。

 “ゴミための街”から、中央広場へと移動した早夜とリカルド。

 そこで早夜は、行きたい所があるのだとリカルドに告げた。


 そこは、このアルフォレシアが一望できる場所。

 小高い丘となっていて人気は無く、少々風が強い事を除けば、静かで良い場所だった。


「へぇー、こんな場所があったんだなー……」


 リカルドがポツリと呟く。

 この場所は早夜の案内でやってきた。リカルドの知らない場所だった。


「リュウキさんが、夢の中でよく来ていた場所なんです」


 早夜は目の前の景色を静かに眺めている。

 夕日が全てを茜色へと染め上げ、何とも心奪われる光景だった。


「思えばリュウキさんがここに来るのって、決まって私が落ち込んでいたり、寂しい時とかだった気がします」


 リカルドは早夜を見た。

 その顔は微笑んでいるようで、でも泣きそうにも見えた。


「リュウキさんは私を知っていました。それを思えば、ここに来たのは私を慰める為だったのかもしれません……」


 リカルドは手を伸ばし掛けた。少し俯き加減の彼女は、今にも泣くのではないかと思ったのだ。

 しかし、結局は出来なかった。

 早夜が急に顔を上げにっこりと笑った。

 リカルドはその笑顔に一瞬見惚れる。


「実は、夕暮れ時の景色って初めてなんですよ。凄くキレイですね!」

「ああ、そうだな……」


 視線は早夜に向けたまま返事を返した。


「リカルドさん、今日はありがとうございます。あの場所に連れて行ってくれて……マシューさん達に会わせてくれて……。お陰で私は、大切な事を思い出せました」

「大切な事?」

「はい……何故、忘れてしまっていたんでしょうか……それは、私が小さい頃にお世話になった人の言葉です……」


 夕日を眺めながら、早夜は思い出す。

 あの低く暖かな声を、いつも慈しみを持って、早夜に接してくれたその人の温もりを――……。


「幸せになりなさい……それがその人のくれた言葉……」


 そして早夜は、その人の言葉を語り出す。


「幸せになりなさい。そして、自分が幸せになる為にはまず、他人を幸せにしなさい。日々の中にも小さな幸せを見つけ、その日々を、一時一時を慈しみなさい……」


 そこで一区切りすると、リカルドを見る。


「後、こんな事も言っていました……。どんなに気に入らない……自分に合わない人間に会っても、その人の良い所を見つけてあげなさい。

 どんなに辛い目に会っても、決して自分を悲観したりしてはいけません……それは自分を不幸にしてしまう事――……」


 一瞬、リカルドはリジャイとの事を思い出し、自分の事を言われているのかと思ったが、どうやら違うようだ。


「……私は、自分に悲観してしまいました……。自分を不幸にしてしまいました。

 虐めにあっている時、私はその人たちを恨んで――……」


 早夜は手が震えてくるのを感じ、ギュッとその手を組んだ。


「サヤ?」


 心配そうに囁くリカルドに、早夜はポツリと呟いた。


「私は……良い子なんかじゃありません……。マシューさんや他の人たちにそう言われると、私は違うと叫びたくなりました。

 蒼ちゃんは私を綺麗だと言ってくれました。でも、私は綺麗なんかじゃありません……」


 その時、ふと手に温もりを感じ見てみると、リカルドが早夜の前に立ち、その手を握り締めてくれていた。

 早夜はふっと笑う。

 そう言えば、あの時もこうして手を握り締めてくれていた。この世界に来て、リジャイの枷を外した時の事を思い出す。

 とても優しい人だと思った。

(この人なら、受け止めてくれるかな……)


「リカルドさん……懺悔してもいいですか?」


 それは、消え入りそうな小さな声だったが、彼はちゃんと聞き取ってくれた。


「何だ……?」


 低く囁く声は、とても優しく響いた。


「……私、ざまぁみろって思っちゃったんです……あの時……階段から突き落とされた時……」


 どういう事かと聞きたかったが、リカルドはじっと早夜の言葉を待った。


「その子は私と一番仲の良い子で、私が夢の話をしたのはその子です……。

 そして、その子は他の子にもその話をしてしまいました。最初はその子も、私の夢を面白いと言ってくれました。でも、周りがそれは変だと言い始めると、その子も周りに合わせるようになったんです……」


 その時の事を思い出し、また手が震えだす。だが、リカルドが握る手に力を込め、まるで大丈夫だと言うように、軽く揺すった。

 早夜はホッとして話を続ける。


「そしてあの時、階段から突き落とされた私は後ろを振り返りました。

 一瞬見えたあの子の顔は、ひどく傷ついた顔をしていました。その周りには、他の虐めていた子達もいたので、言われてやったのだと分かりました。

 でも、私は思ったんです。ざまぁみろって……ずっと自分のした事に後悔すればいいって……。

 私はその子の謝罪を一切受けつけませんでした……。その子は何度も謝りに来てくれたのに……。

 私はおじぃちゃん先生の言葉を、ちっとも実行できてません。自分を不幸にしてしまっていました……」


 早夜はリカルドの顔を見上げた。彼は静かに自分の話を聞いている。

 本当は怖い……こんな黒い感情を持った自分は嫌われてしまうのではと、凄く怖かった。


「リカルドさん……私は良い子なんかじゃありません……。皆が思うような人間じゃないんです……。そんな私が、幸せになりたいって言ったら、傲慢ですか?

 今では、あの子の謝罪を受けたいです。そして、マシューさん達のようにというのは烏滸がましいかもしれませんが、生きている事に誇りを持ちたいです。

 そんな事を思う私は、傲慢ですか? 浅ましい人間ですか?」


 その時ふと、リカルドの手が離れた。冷水を浴びせられたように胸が冷え、肩が震える。軽蔑されたと、そう思った。

 しかし次の瞬間、視界が暗くなり、早夜は温かなものに包まれていた。

 抱きしめられたと気付いて焦る。


「っ!! ――リカルドさん……?」


 恥ずかしくて顔が暑くなる。放して欲しくて、抜け出そうと身じろぎをしたけれど、背中に回る手は一向に離れる素振りは見せない。早々に抵抗するのは諦め、戸惑い名を呼ぶ早夜にリカルドは言った。


「……俺は、早夜は凄いと思う……」


 その言葉に早夜は目を見開くと、思わず声を上げていた。


「っそんな! 私は凄くなんか――」

「お前は自分の弱さを認めてる。それを直そうとしてるだろ?

 それに、サヤの言ってる事って、人間として当然の感情だ。幸せになりたいって言うのも、虐めてた奴らを恨んだ事も……。

 でも、普通はそこで人を恨んで終わりだろ? それをお前は許そうって言うんだから――」

「それはちょっと違います。あの子のした行為は、許してはいけない事だと思います。虐めも決して、許される行為ではありません。

 だけどあの子は、それを悪い事だとちゃんと分かってました。自分が傷付いてしまう程に。だから許す許さないは別として、謝罪はちゃんと受けなくてはならなかったんです」

「……ほらな、やっぱり凄いよ、サヤは……俺の一歩前を行ってる。

 大丈夫だ、お前ならきっと幸せになれる。幸せになっても良いんだ……」


 リカルドは抱きしめる腕に力を込める。

(俺がこいつを幸せにしたい――)


「サヤは強いよ。お前が思ってる以上に……。そしてそれが、皆を惹き付けるんだ。俺も――……」

「……? リカルドさん?」


 突然言葉を途切らせたリカルドを、早夜が訝しげに問いかける。

(俺もサヤに惹かれてる。そうか、俺は――……)

 リカルドは、身体を離すと早夜の顔を覗き込んだ。


「俺も幸せになりたい……。その為にはまず、他人を幸せにしなくちゃならないんだろ? じゃあまず、俺はお前を幸せにする……。サヤが幸せになる為に、どんな事でもするよ。協力する……」


 やっと気付いた己の感情。

 分かった途端すっきりした。


 ――俺は、こいつが、サヤが好きだ――


「ありがとうな、サヤ。俺に打ち明けてくれて。凄い嬉しい……」


 今はまだ、この気持ちを打ち明ける気は無い。

 混乱させるだけだろうし、何より、もう少し大切にしたいと思ったのだ。

 この気持ちを、もう少し育みたい。


 

 早夜は、目の前のリカルドにドキドキしている自分に気付いた。

 普段の彼とは違って、今は静かで穏やかで優しい表情をしている。

 もしかして、こっちが素の彼なのかもしれない。

 その時、ふと頬が暖かなもので包まれる。それは、リカルドの両手だった。


「……リカルドさん?」


 そう問いかけるが、彼は何も言わず、顔を近づけてくる。

(え? え? な、何? リカルドさん、顔が近いっ!)

 そうしている内に、息がかかる程にリカルドの顔が近づく。直ぐ目の前に、金色の睫毛のかかる、優しくて深い緑色の瞳があった。

(こ、これって、もしかしてキス―――!?)

 そう思った時、早夜は思わずギュッと目を瞑った。

 暫しの間があり、感じる柔らかな感触。

 だが、それは唇ではなく、額にであった。

 早夜が驚いて目を開けると、リカルドは照れ臭そうに、そしてイタズラっぽく笑って言った。


「お返し……」

「〜〜〜っ!!」


 それは、先程の早夜がした頬のキスの事。

 しかしそれ以上に、心臓がバクバクと騒がしく鼓動する。

 額を押さえ、夕日の中でも尚、顔を真っ赤にして俯く。

 リカルドはそんな早夜を愛しげに見つめているのだが、当の本人は気付いていなかった。




 夕日も沈み辺りが薄暗くなってゆく中、早夜はハッと顔を上げた。


「そうでしたっ! ミヒャエルさんに、夕食を一緒にどうかと誘われていましたっ!」


 突然声を上げる早夜に、リカルドは目を瞬かせるが、その内容に訝しげに早夜を見た。


「兄貴が? いつそんな約束したんだ?」

「今朝です。私にアイーシャさんを紹介しようとして、その時私、動けなかったんで、じゃあ改めて、という事でお食事に誘われたんです」

「ああ、腰抜かして動けなかったんだな?」

「そ、それは言わないで下さい……」


 腰が抜けた事とシェルの一件は、セットになっている様なものなので、当然思い出し、恥ずかしくなって俯く。


「んじゃ、急いで戻んねーと」


 そう言って、リカルドは駆け出そうとするが、一旦立ち止まり、早夜を振り返った。


「………?」


 早夜が不思議に思う中、リカルドが手を差し出す。


「さぁ、行こう。サヤ」


 そう言って笑う彼は、当たり前の事なのだが、とても王子様に見えた。



 △▼△▼△▼



「――と、言うわけなんだよねー。王様、僕から行った事なんだけど、ごめんねー」

「いや、伝えてくれて感謝する」


 リジャイは今、アルファード王の前にいた。

 自分の知った事を彼に伝える為だ。

 そして、王の隣にはミヒャエルとシェルもいた。


 リジャイが来た時、彼らは何やら重要な話をしていたようなのだが、リジャイが来た事で話が中断してしまっていた。

 シェルに至っては、不機嫌そうにリジャイを睨んでいる。


「後もう一つ。この国にカンナ以外で、別の国からの侵入者がいるみたい」

「何っ!?」


 その言葉には、シェルも驚きの声を上げる。


「やっぱり早夜の事だと思うよ? もう早夜ってばもってもて!」

「おいっ!」


 シェルが怒りを露わにリジャイを睨む。

 早夜の事で、そんなふざけた事を言ったのに我慢がならなかった。


「サヤはその事を知っているのか?」

「うん、知ってる。僕が真っ先に伝えたのって、早夜だもん」


 その言葉に、シェルが反応する。


「……確か今、リカルドと一緒の筈だが……?」

「そうそう、一緒だったよ! 何か、面白い事になってた」

「ん? 一緒、とはどう言う事なのだ?」


 今度はアルファードが反応し、首を傾げる。そしてその質問にシェルが答えた。


「リカルドが気分転換にと、サヤを外に連れ出したようです」

「何!? まことか!!」


 シェルの言葉を聞き、アルファードは喜色満面の笑みを浮かべた。

 ミヒャエルが何を思ったのか、気遣わしげにシェルを見つめる。


「……シェル、その、いいのか?」

「? 何がですか? 兄上」

「い、いやっ、お前が気にして無いならいいんだ」


 少し残念そうに、ミヒャエルは呟いたのだった。


「それでさー、早夜ってば、男の子のカッコしてたよ!」

『なっ!?』


 アルファードとミヒャエルの驚きの声が重なる。

 シェルは驚きはしなかったが、ピクンと反応した。


「そ、それは、どう言う事なんだね?」


 アルファードが動揺を露わに質問すると、リジャイが肩を竦める。


「さあ、僕もよく知らないけど……まぁ、場所が場所だからねぇ。あの格好の方がいいのかも。

 でも、あれはあれで中々可愛かったよ。逆に女の子が強調されてて……」


 思い出しながら、リジャイはクスクスと笑った。それから、アルファード達を見回し訊ねる。


「そー言えば、君達何話してたの? 何か、深刻そうな顔をしてたけど」

「何故、お前に言わねばならない」


 シェルが敵意をむき出しにそう言ったが、アルファードはそれを制する。


「実はバスターシュが今回、和平を申し出てきたのだ」

「っ!! 父上、このような奴に、言う事などありません!」

「まぁ、落ち着けシェルよ。この男は、わざわざ伝えに着てくれたのだ。これ位ならば、話しても支障は無いだろう」


 リカルドの事を聞き、上機嫌でアルファードは言った。


「バスターシュって、この前君らに負けた国でしょ? それに、リュウキがクラジバールに飛ばされる切っ掛けになった国じゃないか」

「まぁ、そうなんだが、リュウキの事は伏せてあるのだよ。もしかしたら、探りを入れに来たのかも知れぬ……」


 アルファードが考えを巡らしながらそう呟くと、ミヒャエルも話しに加わってきた。


「今度、“星見祭”という行事が行われるのだが、それにバスターシュも遣いを送って来ると言うんだ。

 その行事には毎年、他国から要人も何人か招待している。それで今回、その時にサヤを“幸福の遣い”として、紹介しようかと。正直な所、どうしようか迷っている……」


 ミヒャエルの話を聞いて、リジャイは考えるように腕を組む。


「確かに、バスターシュはちょっと怪しいよね。この前まで、敵意剥き出しだった国が、しかもこの前戦で辛酸嘗めさせられたってのに、そんなにコロッと変わるのはわざとらし過ぎる……。敢えて怪しませてるのか、別に目的があるのか……もしかして早夜を?

 だとしたら早夜を紹介するのは止めた方がいいかもね。みすみす、この前の魔力の持ち主はこの人ですってばらすようなものでしょ?

 彼女を狙っているのは、クラジバールだけじゃないって分った以上、それはやっぱり危険過ぎるよ」


 以外にまともに返され、戸惑いながらもシェルは頷く。


「それは私も思っていた。サヤの事はやはり、内密にするべきだと私は思う」


 しかし、アルファード王は首を振った。


「しかし、我が国の中には、サヤを出して他国への牽制としようと意見している者もいる。それに、既に気付いている国もあるしな。その国からは会わせろと言う催促の便りも届いた。下手に隠すと、彼の国からは圧力が掛かりかねん……」

「まぁ、君達の国の事だから、僕なんかが口を出す事じゃないけどね。

 国を大事ととるのか、早夜を大事ととるのか……君達はどうするのかな?」


 リジャイは笑顔ながらも、その目は笑ってはおらず、彼らを静かに見据えていた。

 アルファード王はそんなリジャイを真っ直ぐに捉えて言った。


「国を大事にしつつ、サヤも大事にする。細心の注意を払い、サヤを守ると約束する」


 リジャイは暫し、アルファードを見つめていたが、ふっと張りつめた空気を和らげた。


「ま、及第点にしてあげるよ。くれぐれも早夜を利用しようなんて思わないこと。僕もそうだけど、それを知ったリュウキが何をするか分からないよ。下手をすると失うことになりかねない。君等がその気はなくても、他の人間が何をするかちゃんと把握しておくことだね」

「ああ、大丈夫だ。その点はしっかり把握している」

「わかった、僕もその時は陰ながらサポートするよ。可笑しな事をする国がないかどうか、見張っててあげる。

 でもその前に、この国に侵入している者が何処の国の者か判断しないとね」

「わかった。我らも、それに関して、内部から探ってみよう」


 アルファード王が頷くと、リジャイも満足気に頷き返したのだった。




 身内だけの話し合いはまだ続きそうで、ミヒャエルは今夜の食事会は無理そうだなと考えた。

 そこで、隣にいるシェルに言った。


「シェル、頼みがあるのだが……」

「何ですか? 兄上」

「サヤに、今夜の夕食会は明日に延期だと伝えてくれないか?」


 にっこりと笑うミヒャエルに、シェルは目を見開く。

 その笑顔にはどこか期待が見え隠れしていた。


「私が、ですか? しかし、話はまだ終わってはいないでしょう?」

「それはこちらで引き受けるから、早く知らせてあげると良い。もう日が暮れるし、サヤもそろそろ帰って来る頃だろうから」

「しかし兄上……」

「それに、リカルドに先を越されたままじゃ、シェルも嫌だろう?」

「は?」


 シェルは意図がわからず、ぽかんとしてしまう。

 ミヒャエルは更にこう言い加える。


「今度の食事会には、お前の席も用意しておくからな」

「はっ? 何故?

 ……はぁ、わかりました……」


 一度、驚くシェルだったが、ニコニコと笑い続ける兄の目を見て漸くその意図に気付いた。

 シェルは内心溜息を吐きながら、彼の願いを聞き入れたのだった。


「では、さっそく頼むよ」


 急かす様に言われ、シェルは彼に軽く一礼をすると、父にも礼をし出て行った。


「ん? シェルはどうしたんだ?」


 彼らの会話を聞いていなかったアルファードには、シェルがいきなり出て行ったように見えたのだろう。不思議そうにしている。

 ミヒャエルはそんな父王ににっこりと笑うとこう答えた。


「いえ、急用を思い出しまして、シェルに頼みました」

「急用?」

「大した事ではありません。話は私達だけで行いましょう。シェルには、後で私から伝えておきます」


 まだ不思議そうにするアルファードだったが、ニコニコと笑うミヒャエルの様子にそうかと頷く。

 その後ろでリジャイは、考えるように頬に手を添えると、シェルの出て行った扉を見つめ呟いた。


「なーんか怪しいかなぁ……こっちも探るべき?」




 ▼△▼△▼△




 〜日本・一時帰宅その後 其の八〜



 花ちゃんは翔太郎の膝の上に座り、大好きなアニメを見ていた。


「ヒャ〜、凄イノデツ! ロボットハ無敵ナノデツ!」


 花ちゃんの好きなアニメ、それはロボットのアニメであった。

 魔法の世界で育った花ちゃんにとって、科学の集大成であるロボットが、とてつもなく魅力的に映ったのだ。

 ばっちりと最後まで見て、エンディング曲まで歌い上げ、満足そうな花ちゃん。

 翔太郎が何気なく、チャンネルを変えた時だった。


「ハァッ!! 翔タン、待ッテ下タイ!」


 翔太郎が驚いて手を止める。

 花ちゃんは、テレビの映像に釘付けとなった。

 テレビの画面の中には、数人のダンサーが踊っている。どうやら花ちゃんは、それに見入っているようだった。


「ス、凄イノデツ! 素晴シイノデツ! 踊リノ革命ナノデツ!!」


 花ちゃんは感動して叫んだ。

 その時、ボソッと翔太郎が呟いた。


「……ロボットダンス……」


 花ちゃんがぐりんと振り返る。


「何デツッテ!? アレハ“ロボットダンス”ト言ウデツカ?」


 こっくりと頷く翔太郎を見て、花ちゃんは何とも形容し難い奇声を発した。

 花ちゃん等魔導生物は、自分達の感情を躍りで表現したりする。

 “喜びの舞”やら“悲しみの舞”等。

 だからテレビに映る、見た事も聞いた事もない初めて見る未知なるダンスに興奮を隠せない。


「ヤッパリ、ロボットハ偉大ナノデツ!!」


 そう叫ぶと、花ちゃんはまた、ダンサー達の踊りに見入っていたのだった。





 さて今回、リカルドが自分の気持ちに気付いた訳ですが、何か彼のセリフが、プロポーズに聞こえて仕方がない作者なのでありました。


 =おじぃちゃん先生の言葉について=

 彼については、正直ここまでピックアップしようとは思ってませんでしたね。

 ある日、おじぃちゃん先生ってどんな人なんだろうなぁ、と思い浮かべていた所、突然ふってわいて出てきた言葉が「幸せになりなさい」でした。

 何か重い言葉だなぁ、と思いつつ、何かもうちょっと掘り下げてもいいんじゃないかと、こうして書かせていただきました。

 おかげで、早夜のキャラがぐんと生きてきました。 ありがとう、おじぃちゃん先生!

 後、彼の言葉は、おまけでも書くつもりなので、そちらも宜しく!(結構ジーンとくるものになる予定です)


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