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異界の旅人  作者: ろーりんぐ
《第三章》
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おまけ(ドキドキ!お風呂タイム)

 蒼と亮太、一時帰宅より二日前の話。

「さーや♪ お風呂入ろー!」

「え!? まだお昼前だよ?」


 それは、蒼たちが日本に帰宅する二日前……。


「昼前でもいーじゃない。すっごく広くて、夜だけじゃ勿体無いって!」


 こう見えて、蒼はかなりのお風呂好き。そして、この城の大きくて広い、豪華なバスルームに魅了されていた。


「それにね、さっき王妃様にはお許し貰ったしぃ♪」


 うふふ、と嬉しそうな蒼。


「え? 何で、王妃様が?」


 昨日も王妃様にはお茶に呼ばれたばかりだ。王様も同席して、楽しく話をした。


「さっき廊下でばったりあってね。此処のお風呂いーですねー、朝風呂でもしたい気分ですって言ったら、じゃあどうぞって、早夜も誘って入ったらって言ってくれたの!」


 頬を紅潮させて、本当に嬉しそうであった。






 そうして、早速やって来た大浴場。


 大理石をふんだんに使い、湯船には色とりどりの花びらが散りばめられていたりする。

 そして早夜達はというと、薄い布で出来たお風呂用の肌着を着ている。肩と脇部分が紐で結ばれており、体を洗う時等は外せるようになっていた。


「やっぱりひろーい! プールみたーい!!」


 興奮して大声を出す蒼。


「ねぇ早夜! 見て見て! やっぱり、こっちの世界にもこういうのがあるんだねー! これ何かなっ? 私達の世界では、ライオンが定番だけど……何か耳の長い虎?」


 そう言って、蒼がしげしげと見つめているのは、頭に角の生えた耳がでろんと垂れ下がった虎のような生き物の像。因みに金ぴかである。

 その口から、ザバーとお湯が吹き出している。


「うーん、でもそれの名前は、私もわからないなー……」


 時々リュウキの夢の中でも見掛ける事もあったが、別段それは何々だと言う事を聞いた訳ではないので、早夜にも何なのか分らなかった。


「それは、(いにしえ)の聖獣、一角虎よ」

「っ!?」


 その声に振り返れば、そこには王妃シルフィーヌの姿があった。

 彼女もまた、風呂用の肌着を着けており、長い銀髪をアップにまとめている。

 四十半ばとは思えぬ、抜群のプロポーションであった。


「一角虎!? けっこー安易なネーミングですね……」

「あら、これでもこの国の守り神的存在よ?」

「い、いや待って、何で王妃様が此処に……」


 普通に会話を続ける2人に、戸惑いの色を隠せない早夜。


「まぁ、お母様ったら、サヤさんに約束してたんじゃなかったんですの?」

「セ、セレンさんっ!?」


 困った顔で王妃を見ていたのは、王女セレンティーナであった。

 彼女もこれまた、素晴らしいプロポーションである。

 思わず自分と比べてしまい、落ち込む早夜。


「ごめんなさい、サヤさん。わたくしてっきりお母様が約束しているものと思っていましたのよ? でなければ、いきなり会ったばかりで裸を見せ合うなんて……普通、恥ずかしいですわよねぇ……」


 セレンはそう言うと、恥ずかしそうに身をよじった。そうすると、余計に身体の線が強調されるのだが、本人は気付いてないようだ。


 ボーと見ていた早夜は、ハッと思い出した。

(そー言えば、リュウキさんとセレンさん、夢の中で……)

 あのラブシーンを思い出し、赤面する早夜。


 そんな、互いに恥ずかしそうにしている早夜とセレンを見て、(おぉー、Wで萌えだわ)と蒼はムフフと笑うのだった。




(う、ういてる……)


 湯につかり、口元まで身体を沈める早夜は、ムムーと眉を寄せ、目の前の光景を見ていた。

 そして、自分の胸を見て、深く溜息をつく。

(……うかない……)

 目の前の3人のバストを見て、空しさに心の中で涙するのだった。


「さーや! 何ため息ついてんの?」


 そう言って、蒼が背後から抱きついた。

 早夜は背中に当たる柔らかな感触を感じていた。


「うう〜〜、何でもない……」


 そう言うと、早夜はぶくぶくと湯の中に沈んでゆく。

 早夜の目線を目で追い、何を見ているのか気付いた蒼は、ニヤッと笑った。


「やだもー、早夜ってばカワイー! 胸の事気にしてんのー? そんな物揉めば大きくなるって! 何だったら手伝ったげるわよ!」


 蒼はそう言うと、肌着の隙間から手を差し込んで、早夜の胸に直に触れた。


「ひゃぁあああっ!!」

「あーんもう、お肌すべすべ、ぷにぷにしててカワイー! 病み付きになりそー!!」

「ひゃんっ、ちょ、ちょっと蒼ちゃん! プッ、くっ、くすぐったいっ、あはは、くすぐったいよ!」


 蒼に胸を揉まれ、くすぐったさに身をよじる早夜。

 


 そんな2人の様子を、微笑ましげに見ていた王妃。


「あなたたちは本当に仲がいいのね……」


 彼女はうふふと楽しげに笑う。


「私も、そこまで仲の良いお友達って羨ましいですわ」


 心底羨ましそうに、早夜達を見るセレンに蒼は言った。


「じゃあ、セレンさんもお友達になりましょう!」


 その言葉に驚き、嬉しそうに頬を染めるセレン。


「まぁ、嬉しいですわ。王女なんてやってると、同年代のお友達っていないんですのよ」

「そうなんですか? じゃあ、お友達になった印に、セレンさんも一緒に早夜の胸を大きくしてあげましょう!」

「ええ、わかりましたわ!」


 そう言って、セレンは早夜の前にやってくると、真剣な顔で早夜の胸を揉みに入る。

 後ろに蒼、前にセレンという、男性陣が見たらあまりにも羨ましい光景……。


「ふぇええ!!? や、止めて〜! 2人掛りだなんて、おかしくなる〜〜」


 更に体をよじる早夜。笑いすぎて、お腹が痛い。


「まぁ、本当。つるつるスベスベですわっ!」

「でしょー?」

「あらあら、私だけ仲間はずれ? 私も参加しても良いかしら?」


 王妃のその言葉に、蒼は「どうぞ、どうぞ」と言った。


「本当にこれ以上はダメ〜〜」


 あまりのくすぐったさに、これ以上耐えられそうも無い早夜だった。






「大丈夫? 早夜……」

「……う、うん、何とか……」


 あの後、案の定のぼせてしまった早夜。

 王妃も、セレンも謝ってくれた。


『ごめんなさい、サヤさん。あまりにも感触が気持ち良かったから、つい……』

『私も何だか、若い頃に戻ったような気がしてしまったわ……御免なさいね』


 と、このように言っていた。

 2人とも、また一緒にお風呂に入る約束をして別れた。



 そうして、暫し庭に面した廊下を歩いていると、掛け声と共に亮太の姿が見えてきた。

 カートやその部下達も数人いる。どうやら、剣の稽古をしているらしい。


「あ、亮太だ。おーい、亮太ー!!」


 ぶんぶんと手を振り、亮太の名を呼ぶ。その場にいた者達は、みな何事かと此方を振り向いた。


「私、ちょっと亮太()遊んでくるわね! 早夜はまだ、湯あたりが抜けきってないんだから、ゆっくり歩いてくるのよ」


 何か最初の言葉に違和感を感じたが、素直に頷く早夜。


「じゃ、行って来るわね」


 そう言って、駆けていってしまった。

 その時、早夜には見えなかったが、一瞬、蒼の顔は悪魔のような笑みを見せた。




 カートに剣の稽古を見てもらっていた亮太は、満面の笑みで此方に走ってくる蒼を見て、物凄くいやーな顔をした。

(企んでる! あの笑顔は、絶対何か企んでるっ!!)


 息を弾ませ、後ろに手を組み、カート達に挨拶をする蒼。


「皆さんこんにちは! 亮太がお世話になってます!!」


 もともと美人なうえ、可愛らしく笑顔で言われた為、カートの部下達はポーっと頬を染め、見惚れている。

 カートは蒼の本性を知っている為、何か企んでるな、とニヤッとして見ていた。


「……? 蒼、おまえ、髪濡れてるぞ?」

「うん、お風呂入ったから」

「はっ? ……真昼間だぞ……」


 空を見上げ亮太は言う。


「いーじゃない別に、因みに王妃様とセレンさんも一緒だったわよ」


 その言葉に、その場にいた者達はザワッとなった。

 彼らが憧れる、王女セレンと今だその衰えぬ美貌の王妃シルフィーヌの入浴話に、皆が浮き足立つ。


「はー、まったくお前も好きだな……前も温泉行った時、露天風呂ではしゃいでこけて、流血騒ぎ起こしたよなお前……。今回は大丈夫だったのか?」


 以前行った家族ぐるみの旅行を思い出し、少々意地悪そうに言うと、蒼は口を尖らせて言った。


「へーそんな事言うんだー……折角あんたに良いものあげようと思ったのに……」


 いじける様に言う蒼に、亮太は少々身構える。


「は? 何だよ、良いものって……?」


 そういえば、さっきから両手を後ろに回したままだ。


「実はね? お風呂には早夜もいたのよ……」

「うっ!?」


 早夜の名を聞き、頬を染め、うろたえる亮太。


 カートはそれを見て、やっぱりかと思った。

 薄々気付いてはいたが、どうやらこの少年もあの早夜と言う少女を好きらしい。

(あのヘビ野郎といい、リカルドの馬鹿といい。あの小さな嬢ちゃんのどこに、それ程人を惹き付ける物があるんだろうな……。俺はまぁ、こっちの嬢ちゃんの方が好みだけど……)

 そう蒼を見ながら、ニヤッとするカート。


 蒼はにっこりと笑い、両手を出すように亮太に言った。

 早夜の名を聞き、興味を持った亮太は、警戒しながらも蒼に両手を差し出す。

 蒼はその手のひらの上に、自分の手を置いた。


「……?」


 見た所何も無い、内心こいつの手こんなに小さかったか? とか、柔かいなとか思った事は内緒である。

 だが、次の蒼の言葉で、亮太は素直に従ってしまった自分に後悔する事になる。



「間接おっぱい」


 

『はっ!?』

 

 ここにいる者達の声が、見事にはもった。


「さっきお風呂で早夜のおっぱい揉んじゃった♪ てへっ」


 茶目っ気たっぷりに舌を出す蒼。


 一瞬動きが止まった亮太は、次の瞬間、ゆでダコの様に真っ赤になり、


「うわぁ!!」


 と言って、両手を挙げ、後退さろうとした。

 だがしかし、蒼は亮太の足を力いっぱい踏んで、逃げる事を阻止する。思いっきり尻餅をつく亮太の肩に蒼は手を置くと、それまでの爽やかな笑みを一転、悪魔の笑みへと変貌した。


「それからね、早夜のおっぱい揉んだの私だけじゃないの……なんと、王妃様とセレンさんも一緒に揉んだのよ……」


 その言葉に、他の者も思わず身を乗り出し、聞き入ってしまう。


「……最初、くすぐったがってた早夜も、三人がかりで撫で回される事によって、その声はやがて艶めいたものへと……」

「止めろっ!! 俺の中の桜花さんを汚すなぁ!!」


 そう言って、耳を塞ごうとするが、蒼に左手をとられてしまい、蒼はその開いた耳にぼそぼそと喋り続ける。

 カートはというと、必死に笑いを堪えていた。

 亮太は、あーと声を出して聞かないようにするが、無駄な抵抗である。


「何してるの? 蒼ちゃん」


 その時、蒼に言われた通り、ゆっくりと歩いてやってきた早夜が、漸く辿り着いた。


「え? 何って、亮太で遊んでるのよ」


 その時後ろで、カートが吹いた。

(『で』って何だよ『で』って!)


 そんな事には気付かず、蒼はパッと亮太の手を離した。

 漸く解放された亮太は、目の前の早夜に気付いた。


「お、桜花さんっ!?」


 早夜は、そんな亮太を見て、ふわりと微笑む。


「相変わらず、仲が良いね」


 違うと言いたかったが、亮太の視線は自然とその胸へと――……。


「ブハッ!!」


 その時、亮太は勢いよく鼻血を吹いて倒れた。


「キャー!! 亮太君!? 蒼ちゃんっ、亮太くんがっ!!」


 焦ったように叫ぶ早夜の肩に、ポンと手を置き、ゆっくりと首を振る蒼。


「早夜、これはね、彼が若いっていう証明なの。それとね、想像力も豊かな証拠なのよ」

「へっ!?」


 早夜は首を傾げた。

 だがとにかく、とハンカチを取り出し、亮太の元に駆け寄ると、その血を拭う。


「うーん……」


 そんな呻き声と共に目を覚ます亮太。


「大丈夫? 亮太君……」


 心配そうな早夜の顔を見たとたん、亮太はまた鼻血を吹いた。


「うわっ! たいへんっ!!」


 声を上げ、またその血を拭おうとする早夜を、カートが止めた。


「それは逆効果だから、後は俺達に任せな……」


 逆効果という言葉に首を傾げるが、亮太も必死になって頷いているので、言われた通りカート達に任せる事にした。


「フフン、まだまだ修行が足りないわよ? 亮太!」


 そう言うと、早夜を連れ立って、その場を後にした。




 嵐のように去っていった蒼たちを見送ると、亮太は溜息をついた。

 その時、ポンと肩に手を置かれる。

 見ればカートだった。彼は、無言で微笑み頷いた。その目は酷く同情的で、彼の部下達もまた、同じような顔で、亮太を見ている。

 亮太は、何か居た堪れない思いがするのだった……。




 以前、作品の中で、蒼が言ったおっぱい発言の時に思いついた話……。

 蒼の亮太とのからみを書きたいが為の前半シーンです。


 本作の中で、書く予定は全然無いのですが、カートは結婚経験者という裏設定があります。

 大恋愛の末、十代で結婚したんですが、奥さんは結婚して直ぐ病で亡くなっています。



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